sansansansan
  • DIGITALIST
  • Articles
  • 顧客の声に耳を傾ける、ロールス・ロイスのデジタル活用
Pocket HatenaBlog facebook Twitter Close
Articles 公開日: 2022.11.14

顧客の声に耳を傾ける、ロールス・ロイスのデジタル活用

お気に入り

 英の高級車ブランド、ロールス・ロイスは、顧客サービスのデジタライゼーションに熱心だ。「Whispers(ウィスパーズ)」と呼ばれるアプリケーションで、顧客とのつながりを深めている。「それこそ重要なこと」とCEOみずからが言うほどだ。

 2022年10月に、同社初のピュア電気自動車「Spectre(スペクター)」を発表して話題を呼んでいるロールス・ロイス・モーター・カーズ(以下ロールス・ロイス)。

 ロンドンから100キロほどのグッドウッドなる地にある同社のヘッドクォーターで行われたジャーナリスト向けのお披露目の場で、トルステン・ミュラー=エトヴェシュCEOは、「私たちは(業界を)リードする、なぜなら私は耳を傾けているからです」と語っていた。
ロールスロイス・モーターカーズのトルステン・ミュラー=エトヴェシュCEO
 どういうことか。ロールス・ロイスは2020年2月に「Whispers」と名づけたデジタルプラットフォームを正式にローンチした。それはロールス・ロイス車オーナー向けのアプリで、同社によると「世界でもっとも稀少な体験の入口になるもの」という。
Whispersの画面(写真は英語版)
 「Whispers」は、スマートメディアを使った顧客サービスで、センターからの情報提供や顧客同士のコミュニケーションが図れるツール。同時にクルマのインフォテイメントシステムと連携していて、自宅にいながらナビゲーションシステムの設定ができたりする。

 「実際、コンシェルジェサービスでは、ロールス・ロイスの顧客は満足していないはずです。求められているのは、世界中にいるトップクラスの顧客が有機的につながること。ロールス・ロイスがいわば認証した顧客同士が、価値観の共有や情報の交換などができる。それがWhispersの醍醐味です」(プレスリリースの要約)
Whispersはビジネスやホビーなどでさまざまな提案をしてくれる
 ロールス・ロイスでは、正式ローンチに先立ち、2020年からWhispersの試験運用を始めてきた。そして晴れて正式運用の運びに。

 日本でもアップストアやグーグルプレイからアプリケーションがダウンロードできる。そこで自分のロールス・ロイスの車両識別番号を打ち込むことで、オーナーと認識されれば、サービスが受けられるようになるのだ。

 先にミュラー=エトヴェシュCEOが「耳を傾けた」と言ったのは、スペクター開発の過程で、顧客からのコメントを集めたということなのだ。「このデジタルツールを使い、私たちは顧客の声を聞くのが好きなのです」と語る。

 「特に私たちが重視しているのは、顧客がしばしば指摘するとおり、真のラグジュアリー製品とはなにか、という視点です。それは、言ってみれば”個の表現”であるべきで、オーナー個人のパーソナライゼーションをいかに製品に採り入れるかを、より深く考えるべきだという結論に至っています」

ロールス・ロイスでは「SPIRIT(スピリット)」と名づけたカスタマイズプログラムも展開。Whispersを通じて寄せられた希望や意見を、クルマづくりの参考にしているそうだ。

「スペクターを発表する前に、顧客から、内装(の一部)を車体色とカラーキー(同色化)するなら、もっと努力して同じ色にすべきだ、と指摘をもらいました。それをおおいに参考にしています」

ロールス・ロイスは、世界最高峰を標榜する自動車ブランドなので、製品づくりの姿勢は独善的なのかと、私は思っていた。しかし実態はむしろ逆。少量生産ゆえに、限られた顧客の世界を大切にし、プロダクトを中心とした小さなサークルを育んでいるのだ。そこにおいて、デジタルアプリケーションがおおいに役立っている。
ロールス・ロイスはデジタライゼーションに熱心に取り組んでいる
 顧客の好みの把握にも役立つ。顧客の若返りが進行している中で、テイストを把握し、それをプロダクトに反映することで満足度を高めるために、Whispersは必要なアプリケーションといえる。

 「ロールス・ロイスの製品は単なるクルマではありません。世界屈指の最高級品なのです」。ミュラー=エトヴェシュCEOの言葉にあるとおり、同社では2020年にロゴを現代的に変えた際、「自動車会社ではなく、ハウス・オブ・ラグジュアリー」と自社のありかたを定義しなおしている。

 デジタル・アプリケーションも、新しい時代におけるありかたを真摯に見つめ直した結果であり、企業の思想に結びつくものなのだ。小手先の現代化ではない、と主張される。
ロールス・ロイスのシンボルマークもアプリに合わせて、従来は左向きだったのが右向きに変更された
 スペクターは、2022年10月17日に世界に向けて公開された。電気モーターを前後に1基ずつ備えた全輪駆動システムを、全長5453ミリのクーペボディに搭載。

 満充電での走行距離は520キロといい、いっぽう、2.9トンの重量級ボディを、静止から時速96マイル(100キロ弱)まで4.4秒で加速させるというパワーを誇る。
スペクターでは、空力低減を主眼に徹底的にデザインが見直され、パンテオングリルも傾斜が強くつけられている
液晶パネルの面積が大きく拡大している
 「現段階では95パーセントぐらい完成していて、2023年の第4四半期の発売をめざして、このあとも最終テストを繰り返していきます」。

 グッドウッドで話を聞いたエンジニアリングディレクターのミヒヤ・アヨウビ氏は、スペクターについてそう説明してくれた。価格は「カリナン(4258万円)とファントム(6050万円)のあいだ」と広報担当者は言う。

Text/小川フミオ

関連記事

DIGITALIST会員が
できること

  • 会員限定記事が全て読める
  • 厳選情報をメルマガで確認
  • 同業他社のニュースを閲覧
    ※本機能は、一部ご利用いただけない会員様がいます。