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Business 公開日: 2019.02.25

世界に拡大!払わずに「買う」顧客体験を総ざらい

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店舗に入り、商品棚から欲しい品物を選び、バッグに入れて店を出る。レジでお金を払わずに買える体験は、店舗の在り方をどう変えるのだろう。

 Amzon.comが本社のある米国シアトルに、レジ無し店舗「Amazon Go」を開店したのが2018年1月。その様子を紹介した映像で、来店客が商品の陳列棚から次々に商品を選び、自分のバッグに入れて「会計もせずに」出て行ってしまうシーンに驚いた人も多かっただろう。それから、約1年が経過し、米国、中国、そして日本国内でも、コンビニエンスストアなど小売業とスタートアップを中心に、レジ無し店舗を開店する動きが活発化している。

 これらの店舗で共通していることは、AI(人工知能)、カメラ、スキャナーなどを活用し、買い物客がどの商品を手にとったか、その商品を棚に戻したのか、あるいはポケットやバッグに入れたなのかまでを認識していること。会計時に、セルフレジのように商品をスキャンする必要のない「Just Walk Out」のシステムで、決済を意識することのない「フリクションレス(手間がかからない)体験」を提供できる。

Amazon Go以降、続々登場のレジ無し店舗

 Amazon Goの第1号店開店以降、米国では、スタートアップを中心に無人店舗の開店が続いた。一例を紹介すると、AI(人工知能)を活用した小売店の無人化システムを手がけるStandard Cognitionが、2018年9月に直営店「Standard Market」をサンフランシスコ市内にオープン。同社のレジ無人化システムの「Standard Checkout」を導入し、Amazon Goと同様に、来店客が欲しい商品を手に取って店舗から出て行くだけで買い物ができるJust Walk Outを実現している。

 無人店舗のシステムを開発するスタートアップの取り組みも活発だ。サンフランシスコを拠点とするZippinも、Just Walk Outのシステムを開発し、2018年8月にはサンフランシスコに無人コンビニ1号店を開店した。
 また、サンフランシスコ郊外のマウンテン・ビューにあるInokyoは、Just Walk Outのシステムでありながら、「何もせずに店を出るのは気が引ける」という人のために、あえてスマートフォンのアプリによるスキャンを組み合わせたシステムを開発している。

中国はレジ無し店舗の先進国

 一方、中国は無人店舗の実用化において、米国よりも先行しているといえるだろう。Amazonは、2016年終わりにAmazon Goのコンセプトを発表してから1号店を開店するまでに約1年かかったが、中国での動きはずっと速かった。中国のネットショッピング最大手のアリババが、すぐさまレジ無し店舗の実用に取り組み、約半年後の2017年7月には、試験的とはいえレジ無しカフェ「TAOCAFE」を一般公開した。アリババは、その他にも無人レジのスーパー「盒馬鮮生(フーマ)」を開店し、上海や北京など中国の各都市に約65店舗を展開しているという。

 アリババに続き、同じくネットショッピング事業で中国第2位のJD.com(京東集団)は2018年1月、山東省にレジ無しスーパー1号店を開店。中国国内で約20店舗を展開しているほか、2018年8月には、インドネシアのジャカルタに「JD.ID X-Mart」をオープンしている。

 それ以外にもZhongshan BingoBox technologyも、アリペイやWeChat Payのアプリと連携したセルフレジを備えた無人コンビニの「Bingo Box」を開店。中国国内の30都市でレジ無しコンビニを300店以上を運営しているという。こうした各国の状況を以下にまとめてみた。

ドラッグストア、アパレルなど「レジ無し」文化は業種を超えて

 一方、国内でも、AmazonGoに追随するように、AIを活用したレジ無し店舗を開発する動きが活発化してきている。

 例えばファミリーマートは、LINEのAIプラットフォームを活用した次世代コンビニを推進するとして、そのコンセプトムービーを公開。コンビニエンスストアでは、ローソンが2018年9月から、利用客がスマートフォンアプリで商品のバーコードを読み取ることで、店内のどこでもセルフ決済できるサービス「ローソンスマホペイ」を開始した。

 セブン-イレブン・ジャパも2018年12月にNECと共同で、顔認証システムで利用客を認識するコンビニの試験運用を始めた。さらに、こうした動きに先駆けて、NewDaysを運営するJR東日本は、来店客が選んだ商品をAIが把握して、自動で購入額を算出する無人決済のシステムを導入した店舗の実証実験を実施している。

 また、九州・福岡でスーパーマーケットを展開するトライアルカンパニーは2018年12月に、夜間だけ無人営業になる「トライアル Quick大野城店」(福岡県大野城市)をオープンした。

 国内では、コンビニエンスストアやスーパーだけではなく、アパレルショップ、ドラグストアなどの小売店も海外のシステムベンダーや、国内ではレジ無し店舗を可能とする「VAAK Pay」を開発するVAAKなど、スタートアップと協力してレジ無し店舗に取り組んでいるのも特徴的だ。
 こうしたレジ無し店舗のメリットとして真っ先に思い浮かぶのは、レジに並ばずに会計できること。利用者は、買い物時間の大幅な短縮を見込める。また、財布やカバンを持ち歩く必要がなく、スマートフォン一つで買い物できるのもメリットだ。

 店側は人件費の削減ができるほか、客層や来店時間、客の行動、購入商品などをデータ化して需給予測や販売戦略に活用することができる。客の行動に基づき棚のディスプレイ表示を変化させるスマートディスプレイなど、購買意欲を高める店舗展開も可能になる。また、客の行動をすべて把握できるので、万引き対策としても効果は大きいといえるだろう。

 慢性的な働き手不足に悩んでいる小売業界にとって、店内オペレーションの省人化ができるセルフレジ・セミセルフレジの重要性はますます高まっていくと予想される。

 一方で、さらに省人化や効率化を進めたレジ無し店舗については、まだ実験的に展開されている段階。店内の行動を常に監視されているようで息苦しいと感じる利用者もいるかもしれない。また、いまだ現金決済の習慣が根強い日本で、スマホ決済や電子マネー決済がどの程度浸透するかもポイントになるだろう。第2回目では、各社の取り組みを掘り下げてみる。


林 渉和子=タンクフル


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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