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Business 公開日: 2023.10.19

栄養士の給食献立制作業務を効率化。業界の課題に挑む

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 慢性的な人手不足や労働力の高齢化など、多くの課題を抱える飲食業界。コロナ禍や円安、物価の高騰が追い打ちをかける中で、特に価格転嫁が難しい学校給食を手掛ける企業の破産ニュースは記憶に新しい。そんな状況を打破するためにテクノロジーの導入で業務の効率化を図り、業界を変えていこうとする試みについて話を伺った。

【画像】カイテクノロジー 勝屋亨介氏(左)と松本愛氏(右)
 ソフトウエアやシステム開発をソリューションとして手掛ける株式会社カイテクノロジーは、全国の管理栄養士に選ばれる栄養・給食管理ソフト「Mr.献ダテマン(以下、献ダテマン)」を展開。同サービスは、病院・福祉施設・保育園・学校給食などの現場で、累計1万5000件以上の導入実績を誇っている。

 今回は同社でTAS/パッケージ販売事業部 事業部長 勝屋亨介氏と、同・販売チーム マネージャー 松本愛氏を迎え、管理栄養士が働く給食業界の現場に特有の問題や、DXが進まない障壁となっている課題、それらに対する解決策などを聞いた。

給食業界のデジタル化が進まない理由とは

 カイテクノロジーで販売、サポート、品質管理のチーム全体を取りまとめる事業部長の勝屋氏は、「病院・福祉施設・学校給食の現場へのソフトウエア導入は進んでいる一方で、他の業界に比べるとまだまだDXには課題がある」と言う。
 勝屋氏「当社の販売している献ダテマンのような栄養計算の専用ソフトを入れている施設は多く、導入は進みつつあるものの、主な利用者である管理栄養士さんの中には、まだまだ表計算ソフトで管理している方もいらっしゃいます。食材の発注や在庫管理などにおいては、いまだにFAXと電話のやり取りも残っているのです。栄養士の業務のうち、まだ40%程度はデジタル化できる余地が残っていると考えています」

 販売から開発、プロダクトの導入時における仕様のすり合わせなどを担当する松本氏は、管理栄養士の資格を持ち、給食委託企業の現場で働いた経験を持つ。

 松本氏「栄養士の発注業務には細かい申し送り事項があり、どうしても手書き作業が発生してしまいます。こうした業務をなくし、すべてをクラウド上で計算し、発注できるようになるのが理想です」

 いったいなぜ、アナログ的なやり方がデジタルに置き換わらないのだろうか。

 勝屋氏「理由はさまざまです。例えば、栄養士が日々の業務に忙殺されて、経営層からデジタルツールの導入を指示されても進行に充てる時間的余裕がなく、なかなか進まないというケースがあります。また、調理師さんを含め業界全体が高齢化しており、今までの手法を変えることに抵抗を感じ反発するケースも多く見受けられます。

 他にも、現場業務が標準化されていないことがあります。当社のソフトウエアを導入いただく際も、現場ごとに運用方法がまったく異なり、カスタマイズが必要になります。言い方を変えれば、個別対応のオーダーメイド要素が多くならざるを得ず、デジタル化が容易に進まなくなっているのです。

 ソフトウエアを導入することで発注・集計の手間や栄養計算などを効率化でき、費用対効果の面で十分にペイできる場合は多いです。しかしなかなかご決断いただけないこともあります」

小規模の介護施設などでは、経営判断として現場のDXに予算をあまりかけられないケースがあるようだ。

栄養士が作る栄養士のための「給食献立クラウドサービス」

 カイテクノロジーの献ダテマンは、開発やサポート業務に関わる社員の多くが管理栄養士の経験を持っているという特徴を持つ。新卒採用であれば資格取得者を、中途採用であれば栄養士として現場を経験していた人材を採用し、販売促進、サポート、品質管理の各チームに栄養士が必ず入って、現場に精通した目線でサービスの体験価値を向上させているという。

 栄養士の業務において、献立作成時のアレルギー対応や栄養計算のほか、材料の受発注業務、帳票管理など管理すべき数値やタスクは多岐にわたる。さらに、各現場特有の事情に合わせた機能が搭載されていて計算を自動化できるのが、献ダテマンの強みだ。現在では保育園用や施設用、給食会社用、病院用、食品販売会社用の5つの区分でサービスが分かれていて、2017年にインストール版からWeb版へ移行し、クラウド型サブスクサービスの展開を開始した。クラウド化したことで、提供できるサービスの幅はさらに広がったそうだ。

 勝屋氏「クラウド化で、栄養士さんはいつでもどこでも当サービスを使えるようになりました。特にコロナ禍時の給食の現場はセンシティブな状況にあり、在宅勤務の方が増えました。献立を立てる業務自体はご自宅でも可能なため、昼間にお子様の面倒を見る必要のある方からは、会社への移動時間を圧縮できる効果を含め、自宅作業ができる点を高く評価いただいています。

 現在はパソコンでしか使えないのですが、スマートフォン版を開発中です。在庫の棚卸や納入食品の検品、料理の検食時などは、どうしてもパソコンのある机から離れて、バックヤードなどで行います。そうしたときにもデータ入力を行う必要はありますので、スマートフォンで作業ができるようにしてほしい、とのご要望が多いのです」

 他にも、細かいニーズに応えられる強みが会社にはあるという。保育園用なら保育園用、病院用なら病院用と、一点突破主義的にサービスを展開している競合企業が存在している一方で、全方位に展開しているカイテクノロジー。それによって、病院や保育園、介護施設など複数の業態に給食を提供している大手の給食会社に対しても運用を提案できる強みを持っているのだ。

8時間作業が1時間に圧縮。よりきめ細かい個別対応を可能にするDX

 献ダテマンの導入企業には、実際どのような効果が表れているのだろうか。
 松本氏「例えば、全ての業務を手作業で行っていた企業のケースでは、1週間分の献立を作り、栄養計算を行うだけでも丸1日分、約8時間の業務時間をかけて電卓を駆使して計算していました。当社サービスを導入後は、それらが1時間でできるようになったそうです。

 食材の発注業務では、1食あたりのグラム数や、野菜くずなど廃棄の分も含めた計算が必要なのですが、導入後は、それまで手計算で2時間はかかっていた業務が1クリック10秒で終わります。献立の食材の重複チェックも自動化。また、複数人で担当している情報をクラウドで一元管理して共有できるようになることで、重複作業のムダを大幅に減らせるメリットがあります。その結果、病院では患者さんの献立の個別対応が可能になるなど、よりきめ細かいタスクに時間を使えるようになるわけです」

 加えて、顧客が困っているポイントがあれば、サポートを行うメンバーがクラウド上のデータを参照して解決に動くこともできる。課題が挙がってから解決するまでのスピードが格段に早くなったという。

業界の課題を解決しながら長期スパンで業界標準サービスを目指す

 大手コンビニやファミリーレストラン企業ではすでに、在庫量を自動管理し、減少スピードや天候、過去の販売データなどから需要を予測するAIによって、発注業務の自動化が行われ始めている。今後の展望についてカイテクノロジーではどのように考えているのだろうか。

 勝屋氏「直近では食材費の高騰が問題となっており、コスト削減のために、セントラルキッチンで調理をして冷凍後に各現場へ配送し、現場では解凍するだけで済むようにすることが検討されています。この手法であれば、現場に栄養士も調理師も配置する必要がなく、全体のコストを削減できます。この運用方法は今後広がりを見せるでしょう。セントラルキッチンでのタスク管理業務は劇的に変わりますから、その動きに合わせて機能の拡張アップデート版を現在開発している最中です。

 フードロスの問題も解決しなくてはなりません。例えば1企業で複数の給食施設がある場合、それぞれの現場ごとに仕入れが行われている場合があります。しかし無駄な食材廃棄を出さないようにするには、仕入れ業務を一元管理し、全体最適の発注量で無駄なく仕入れたほうがいいのです。このような構造的な課題を解決することで、調理現場でのフードロスは削減できます。

 給食現場ではAIの導入どころか、まだまだデジタル化すらされていないところも多く、栄養士さんはかなりの時間をロスしています。そこで当社は、各関係企業をつないで受発注システムのDXを推進することで、フードロスの問題だけでなく、原価管理などの効率化につなげたいと考えていますし、もっと皆様のお役に立てればと思います  」

 松本氏「私たちが目指しているのは、どのお客様にでも使っていただけるような標準的なサービスです。100%を理想としつつ、せめて90%の方が使えるサービスを目指して、もっと多くのお客様に喜んでいただけたらと思っています。お客様から『助かりました。ありがとう』と言ってもらえるのはとても嬉しいです。私たちの仕事のやりがいにもつながります」

 給食業界でトップランナーを自負しているカイテクノロジー。栄養管理に多くの人が介する給食現場のDX推進において、今後ますます高まる企業としての重要性に期待したい。

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