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Business 公開日: 2019.03.22

自家用車でモビリティの格差をなくす!モビリティプラットホーム「CREW」とは?

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秘密は「特殊な時間帯や場所」と「任意の謝礼」。日本で認められたオンデマンド配車サービス拡大中。

 人口が過密している都市部では満員電車が続出。地方では交通手段が足りず、“移動弱者”が生まれている。これらの移動がスムーズになれば、人々が効率的に時間を使えることになり、経済にもいい影響が出てくるはずだ。

 そのモビリティの問題点を解決する一つの手段として考えられた、日本のサービスがある。車に乗りたい人と乗せたい人をつなぐモビリティプラットホーム「CREW」がそれ。UberやLyft、Grabといったオンデマンド配車サービスと、イメージはよく似ているものの、サービスのコンセプトは違う。CREWを展開しているAzitの共同創業者で、取締役CCOの須藤信一朗氏に話を聞いた。

「CREW」はどんなサービスなのでしょうか?

須藤 車に乗りたい人と、乗せたい人をつなぐモビリティプラットフォームです。クルマに乗りたい人が、迎えに来てほしい場所と行きたい場所を入力すると、CREWパートナー(ドライバー)がマイカーで迎えに来るというサービスです。乗車した人は、ガソリン代などの実費を払う他に、任意で謝礼を支払うこともできます。我々は、こういったスキームをすべて国土交通省に伝えた上でサービスを提供しています。

謝礼は0円でもいいんですか?

須藤 0円に設定することは可能です。運転した人と料金の交渉をするということではなく、運転した人のホスピタリティや思いやりに感謝して決めていただきます。この“任意の謝礼”が「CREW」のサービスのポイントです。「“おもてなし”と“ありがとう”の循環」と我々は呼んでいます。

オンデマンドの配車サービスでは、米国のUberや中国のDiDiといったものがあります。いわゆる「白タク」として扱われ、日本国内では本来のサービスは展開できていません。それに比べて、CREWについてはビジネスを展開できているのはなぜなのでしょうか。

須藤  理由は先ほどお話した、“任意の謝礼”にあります。CREWでは実費と謝礼のやり取りはありますが、いわゆる「運賃」の支払いがなく、国土交通省が定める平成30年3月30日付通達(国自338号)に沿った運営内容となっております(道路運送法第78条で規定される登録又は許可を要さない)。また、CREWの利用者(CREWライダー)には、CREWのドライバー(CREWパートナー)の運送行為への対価支払い義務はありません。だから、CREWのサービスは道路運送法の区分における旅客自動車運送事業には該当しません。

なるほど。ただそうなると、実費以外のお金のやり取りがなく、全くビジネスにならない可能性も考えられます。CREWのビジネスモデルはどのように考えたらよいでしょう?

 決済の内訳は、ガソリン代などの実費、任意の謝礼、そしてプラットフォーム手数料の3種類です。このプラットフォーム手数料が私たちにとっての収入で、プラットフォームの利用頻度が高まるほどビジネスが成長していきます。

サービスは、どこで提供されているのですか?

須藤 東京都内一部エリアと、地方で展開中です。都内は夜の8時~午前3時の間になります。「Local Mobility Project」として地方での展開に注力していて、2019年4月以降に鹿児島県の与論島でサービスをスタートします。また、長崎県の久賀島でも実証実験を行う予定です。

CREWパートナー(ドライバー)の審査はどのような内容なのでしょうか。

須藤 大きく分けて書類審査、面接、安心安全に関する講習会の3つのステップがあります。車好きや運転好きの方たちがすごく多いですね。

車社会の地方こそ、自家用車でモビリティの格差をなくそう

そもそも、なぜモビリティのサービスを展開されたのでしょうか?

須藤 モビリティ業界が大きな変革を迎えているなかで、モビリティプラットフォームの領域では圧倒的に海外が先行していますよね。この状況でいいのかと考えたときに、我々が日本でコンシューマー向けのプラットフォームサービスをやることに意義があると思いました。特に地方では、公共交通機関の不足が課題となっている一方で、多くの家庭で自家用車は1人1台の割合で所有しています。その後部座席や助手席をうまく利用すれば、もっと人々が快適に移動することができるのではと考えました。

これからは、地方を強化していくと?

須藤 はい。いろいろな自治体から、公共交通機関の不足による課題についてお話をいただいております。既存の交通機関では賄いきれない部分は、どうしてもあります。そこを我々の「互助の精神」のもとでサポートするべく、今年サービス提供予定の与論島、久賀島をはじめとし、様々な地域でCREWを提供していきたいと考えています。

 もともと地方では「隣の家の車に乗せてもらう文化」があるので、「CREW」とは非常に相性がいいです。ただ、一方で知らない人に声を掛けられるのが怖いという人もいます。そこで、我々が「安心で安全なプラットホーム」をサービスとして提供することで、少しでも地方の交通の課題解決につながればと考えています。

「CREW」は既存の交通機関を補完する存在でありたい

2017年の夏に与論島で実証実験を行っていましたね。2019年4月からは本格導入だそうですが、実証実験の評判はいかがでしたか?

須藤 与論島の実証実験では、観光客の利用が多かったですね。「島の人と話ができてよかった」「島の人だけが知っているスポットを教えてもらった」「自分の地元でもあったらいいな」という利用者のお声を頂きました。CREWパートナーも島の良さと町の良さを知ってもらう、ひとつの良いきっかけになったと喜んでくれました。おもてなしの心で運転してくれる人と、それを理解したうえで利用してくれる人がいて、地域の観光協会、タクシー会社とも協力し、あたたかい雰囲気でサービスを展開できました。

与論島では自家用車だけでなく、タクシーの配車も始めるそうですね。

須藤 はい。自家用車とタクシーを一緒に呼べたほうが、利用する方も便利ですよね。ひとつのプラットホームで移動が完結したほうがいい。「CREW」を、移動するときにまず開くアプリだと思ってもらいたいです。

2019年は長崎県の久賀島でも実証実験を始めるそうですが、与論島とのサービスの違いはありますか?

須藤 場所によって交通の課題は異なるので、サービスの提供内容は地域によって変えています。久賀島の場合、タクシーが足りない場合に利用してもらうようなオペレーションを組んでいます。久賀島は昨年世界遺産に登録され、観光客が増加しています。そういったなかで、どのようにサービスが利用されているのかを実証実験で確かめながら臨機応変に進めていきたいです。

最近、JR東日本と東急電鉄が「観光MaaS」を実証実験する予定ですが、そういったところとの協力は予定されていますか?

須藤 さまざまな事業会社と話をしておりますが、決定次第お伝えしていければと思います。利用者のみなさまにとって最適な移動のかたちを、既存の事業会社と協力して提供していければと考えています。

CREWの今後のビジョンを教えてください。

須藤 自動運転の普及など、モビリティ業界が大きく変革していくなかで、「CREW」に求められるモノも変わっていくのだろうと考えています。そんな中でも我々が大事にしている、「ありがとう」と「おもてなし」の循環を大切にし、日本らしいモビリティを作っていきたいです。


佐々木治
(撮影:湯浅亨)


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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