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Business 公開日: 2022.09.21

シリーズ:どうしてうちの会社のDXは進まないのですか? | 第1回:DXの二極化時代の到来 ~「DXが加速する企業」と「動かない企業」の二極化の動き~

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 2022年現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)というキーワードは急速に社会に認知されつつあり、多くの企業が経営改革のテーマとして取り組み始めています。
 一方で、実際には“DX”というキーワードに振り回されて混乱するビジネスパーソンや変革に苦戦する企業も散見されます。

 本記事では、DXに経営レベルで取り組むCDO(最高デジタル・データ責任者)のコミュニティ事務局を運営する筆者が、DXに苦戦する企業の課題にフォーカスして「DXを前に進めるヒント」をご紹介いたします。

【画像】shutterstock

目次

はじめに 〜DXが注目される社会環境とDXブーム~

 コロナ禍以降、非接触やペーパーレスなど社会的なデジタル化整備の必要性が高まる環境変化も相まって、DXというキーワードは、今やIT業界やメディアで見ない日がないといったレベルで、数多くのセミナーやDM・記事等で見受けられます。
 一方で、DXというキーワードで紹介される技術やノウハウが乱立するようになり、世の中としては情報過多であったり混乱が生じたりしている段階なのではないでしょうか?
 
 DXに対する定義や解釈は様々なものが存在している状態ですが、「DX=デジタル技術を活用した(もしくはデジタル時代に適合するための)“経営改革”」といった位置づけで取り組んでいる企業は多くなってきています。
 ではなぜ、急速にDXは社会的に注目され経営改革のバズワードに進化しているのでしょうか。

日本企業がDXに注目する理由とは? 〜成長の頭打ちとデジタル後進国の危機感〜

日本(企業)は時代遅れ?になっている

 企業経営の課題意識と“デジタル”が相まって“DX≒経営改革”と進化した大きな要素は、日本全体の成長性の鈍化にあります。社会全体の成長を見ると、先進国は軒並み年間2%成長しているにもかかわらず、日本は「失われた20年」と呼ばれる通り、1997年を転換期にゼロ成長となったままです。

 また、企業の時価総額も従来は日本企業が多く上位に名を連ねていましたが、現在はトヨタが40位にランクインしているだけといった状態で、世界からみて日本の企業は魅力的に見えない状態になっています。個々の企業の課題にフォーカスしても、多くの企業が以下のような危機感や課題感を抱える状態です。

・既存事業の競争力低下
・組織の労働生産性の低さ
・将来的な労働人口減少を考えた場合の事業継続性

デジタル後進国となってしまった日本

 かつて日本はハイテク先進国として様々な分野で世界を席巻していましたが、産業の主役がソフトウェアやデジタル・ICT分野に移ってから一気に表舞台から姿を消してしまっており、今や日本はデジタル分野では後進国となっています。

 スイスに本拠をおくビジネススクール、IMDが2020年10月に発表した「世界デジタル競争力ランキング2020」によれば、日本は前年の23位から4ランク下がった27位になっています。このランキングで日本は既に韓国・台湾・中国・マレーシアより下にランキングされており、アジアの中でも、世界的にも、デジタルの領域では後進国家となっているのです。
参考:IMD「世界デジタル競争力ランキング2020」
https://www.imd.org/centers/world-competitiveness-center/rankings/

人口の減少とともに衰退する国家にならないためにデジタルは無視できない

 今後一層の人口減少が予想される日本では、人材不足が深刻化すると考えられます。つまり、企業ならびに国全体のデジタル化の遅れは、「将来にわたって国や企業が維持できない」ことにもつながりかねないのです。この危機感が、企業ならびに政府がデジタル化・DXに注目・推進している背景と言えます。

DXブームの光と影 ~「DXが加速する企業」と「動かない企業」の二極化へ~

先進企業が積極的にDXに取り組む一方で6割の企業がDXに取り組めていない状況に

 先進企業では、目先の生産性向上だけでなく、中期的視点で自社を進化させるためにDXを推進しています。
DXを経営レベルの取り組みに進化させていくためには、明確なビジョンとリーダーシップが重要になります。そのような企業では、DXの指揮をとるエグゼクティブとしてCDO(最高デジタル・データ責任者)を設置し、経営会議のアジェンダとしてDXを設定して取り組んでいます。

 筆者が運営しているCDOのグローバルコミュニティであるCDO Club Japanには国内の主要企業のCDOが参加し、それぞれの企業のDXの取り組みを共有するだけでなく、企業・業界を超えた価値創造の取り組みを推進しています。

 しかし、世間的には注目されているDXではありますが、実際に上記のようにCDOを設置して戦略的にDXに取り組めている企業は未だ少ない状況です。令和3年の総務省の調査によると、日本企業全体の約6割がDXに取り組めていないという結果になっており、中小企業においては、約7割が何も実施していない状態です。

 実際にコロナ禍においても上場企業はテレワークの普及が進んだ一方で、中小企業では未だ環境が整備されていないなどの違いが生じています。またDXに取り組んでいる企業でも、検討の初期段階で留まっている場合が多く、本格的にDXに取り組めている企業は少ないのです。

 このように今後の日本のDXは、「DXが加速する企業」と「動かない企業」の二極構造になっていくことが予想されます。
参考:総務省「令和3年版情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01honpen.pdf

DXに乗り遅れる企業の末路は? 〜顛末は衰退か弱体か?〜

【画像】shutterstock
 ではこのままDXをしない企業は最終的にどのような結果になっていくでしょうか?
経済産業省が発表した「DXレポート〜ITシステム 2025年の崖」では以下にDXしない企業のリスクを記載しています。

・ビジネスモデルを柔軟・迅速に変更できず、デジタル競争の敗者になる可能性がある
・システム維持費が高額化する可能性がある
・サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失などの可能性がある

 上記以外にもDXによって生じる働く環境の差は、人材の確保にも影響を及ぼすことが予想されます。昨今、転職市場は活性化し、働き手はより良い環境の企業を選択する傾向にあります。そのような中では、旧態依然としたアナログな手法をとり無駄な作業も多い企業は、人材の流出につながり、そのまま放置するとオペレーションが維持できなくなり、さらには事業継続が困難になることが予想されます。

 また、若いデジタル世代の消費者や取引先は、デジタルを使って商取引をするのが当たり前になってきます。そのような中、従来どおりのアナログな顧客対応では、既存顧客を維持することはできても、将来的に新規顧客を開拓してビジネス拡大していくことは難しくなっていくことも予想されます。

 世の中全体がデジタル化していく中で、現状維持は「徐々に衰退していく」ことと同義です。企業は「DXをしないと生き残っていけない」時代なのです。

 しかし実際には、企業には「DXをしたくても進まない」理由や障壁が数多く存在します。次回以降では「DXが上手くいかない企業の特徴とは?」と題して、DXのボトルネックについて紹介していきます。
参考:経済産業省「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf
【筆者プロフィール】
一般社団法人CDO Club Japan 理事 事務総長 水上晃 氏
大手コンサルティング会社でデジタルチーム(先端技術)責任者として活動してきた経験を活かし、次世代テクノロジーを活用した活動を実施。
主な活動は、次世代テクノロジーを活用した新規事業の企画、デジタル技術を活用した業務プロセスの改善、データ分析技術を活用した企画など。主な技術分野はIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボティクス、ブロックチェーン、ドローンなど。

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