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公開日: 2019.02.12
レシート情報から栄養摂取の傾向がわかる、新サービスが春に登場
レシート情報から栄養摂取の傾向がわかる、新サービスが春に登場
シルタスの小原一樹代表取締役CEO・ファウンダー
買い物情報から栄養情報に変換して、家庭における買い物傾向をつかめるようにする――。そんな新アプリ「SIRU+(シルタス)」がこの春に本格スタートする計画で動いている。手がけるのはベンチャー企業のシルタス。小原一樹代表取締役CEO・ファウンダーに、サービスの全体像と、サービスを通じて描く食生活の将来像を聞いた。
スーパーマーケットなどでの買い物履歴から、栄養摂取の傾向が分かるという新アプリを開発中だと聞いています。
小原:はい、ポイントカード、あるいはクレジットカードでも良いのですが、いわゆるレシート情報から食材の情報を抽出し、それを栄養素の情報に変換、集計して可視化するというサービスです。
この春にも、大手小売チェーンと自治体の協力を得て大規模な実証実験を開始する予定です。小売チェーンのポイントカードから買い物履歴を得て、それをSIRU+のアプリで栄養素の情報として確認できるようにします。
この春にも、大手小売チェーンと自治体の協力を得て大規模な実証実験を開始する予定です。小売チェーンのポイントカードから買い物履歴を得て、それをSIRU+のアプリで栄養素の情報として確認できるようにします。
実際の使い方としては、どのようになるのでしょうか。
小原:アプリを使い始める時に、ユーザーには人数・性別・年齢といった家族構成のデータ、それから連携するポイントカードの情報を入力してもらいます。併せて「ダイエット」などの健康課題やテーマも選択してもらいます。ここでは特に課題やテーマを選択しなくても大丈夫です。
あとは購買履歴が自動的に同期され、例えばナスとかニンジンといった食材の買い物情報を抽出し、それを栄養素に変換してくれるという流れです。
あとは購買履歴が自動的に同期され、例えばナスとかニンジンといった食材の買い物情報を抽出し、それを栄養素に変換してくれるという流れです。
アプリの画面例。買い物履歴を元に、栄養素に変換して表示。栄養素の摂取状態を視覚的に確認できる
その上で、国が出している食事摂取基準に従って、どんな栄養素が不足しているのか、逆にどんな栄養素が過多なのか、といった傾向をグラフで視覚的に把握できるようにしています。
とはいえ、単に栄養素を見せられてもピンとこないかと思います。そこで、足りない栄養素を、食材あるいはレシピとしては何で補えるのかをリコメンドします。例えばカリウムが不足気味の人にはナスを、かつナスを使ったレシピをおすすめする、といった具合です。
とはいえ、単に栄養素を見せられてもピンとこないかと思います。そこで、足りない栄養素を、食材あるいはレシピとしては何で補えるのかをリコメンドします。例えばカリウムが不足気味の人にはナスを、かつナスを使ったレシピをおすすめする、といった具合です。
足りない栄養素を補える食材や、それを使ったレシピを提案する
レシピについては、以前スタートアップ企業向けのプログラムで支援を受けたクックパッドから提供を受けています。
好みやアレルギー食材も考慮
小原:ただ、いくら栄養素を補えるとしても、好みではない食材やレシピは受け入れがたいですし、特にお子さんがいる家庭についてはアレルギーも考えなければいけません。
そこでアプリでは、ユーザーの買い物傾向や閲覧するレシピの種類から食の好みを推測する機能、またアレルギーで食べられない食材を登録しておけばそれを排除する機能を備えています。例えばひき肉はよく買うしひき肉を使ったレシピはよく閲覧するけれども、揚げ物のレシピはあまり見ないな、といった形で、アプリではユーザーの傾向を考慮します。
これにより、その人の食生活の傾向に沿いつつも、かつ、栄養バランスを整える方法を提案できるようにしています。
そこでアプリでは、ユーザーの買い物傾向や閲覧するレシピの種類から食の好みを推測する機能、またアレルギーで食べられない食材を登録しておけばそれを排除する機能を備えています。例えばひき肉はよく買うしひき肉を使ったレシピはよく閲覧するけれども、揚げ物のレシピはあまり見ないな、といった形で、アプリではユーザーの傾向を考慮します。
これにより、その人の食生活の傾向に沿いつつも、かつ、栄養バランスを整える方法を提案できるようにしています。
「ざっくり」な情報でもメリットは大きい
栄養素の情報を特定する精度はどの程度なのでしょうか。買い物履歴だけだと限界があるように思いますが。
小原:レシート情報と栄養素の対応については独自のノウハウを適用して、妥当な形で栄養素の情報を推測・変換できるようにしています。ただ、SIRU+で得られる買い物の情報は「ニンジン」はニンジン以上ではありません。つまり、スーパー側でそこまで細かい商品マスターを管理しているわけではないので、ニンジンの本数や重量が分かるわけではありませんし、ご家族の場合には特に、一人ひとりがそれぞれどれだけ栄養素を摂取しているのかを把握するのは難しいです。ですからおっしゃるとおり、限界があります。
SIRU+のターゲットは、あくまでも購買履歴から栄養摂取の傾向を知りたい人です。そもそも、今はそれさえもできていないケースがほとんどではないでしょうか。
健康に関心があって、もっと細かいレベルで知りたい人は、食べたものを詳細に入力して分析するアプリを使われることでしょう。しかし、毎回の食事記録を付けることまでして、手間をかけて栄養摂取の傾向を把握したい人が多数派かというと、そうではありません。
栄養摂取のおおよその傾向を知ることができる、それだけでも食生活や健康に対するアクションが取りやすくなることが期待できます。しかも、日々の買い物で使っているポイントカードから把握できる。こうした点にメリットを感じるユーザー層はかなり多いというのが私たちの見方です。
実際、過去の実証実験で、その辺りのニーズがあることを把握することができました。2018年夏に宮崎県のスーパーマーケットであるマルイチさんで、約50人のユーザーを募集して実証実験を行いました。
1つ、大きな反響としていただいたのが、「自分が考えている『足りない栄養素』について、思い込みがあったことが見えた」というものです。
つまり、自分たちとしては足りていないと思っていた栄養素に当たる品を過剰に購入していて、逆に十分だと思っていた栄養素の品を購入できていなかったとか、そういった傾向が分かって大きなヒントになった、という声をいただきました。
SIRU+のターゲットは、あくまでも購買履歴から栄養摂取の傾向を知りたい人です。そもそも、今はそれさえもできていないケースがほとんどではないでしょうか。
健康に関心があって、もっと細かいレベルで知りたい人は、食べたものを詳細に入力して分析するアプリを使われることでしょう。しかし、毎回の食事記録を付けることまでして、手間をかけて栄養摂取の傾向を把握したい人が多数派かというと、そうではありません。
栄養摂取のおおよその傾向を知ることができる、それだけでも食生活や健康に対するアクションが取りやすくなることが期待できます。しかも、日々の買い物で使っているポイントカードから把握できる。こうした点にメリットを感じるユーザー層はかなり多いというのが私たちの見方です。
実際、過去の実証実験で、その辺りのニーズがあることを把握することができました。2018年夏に宮崎県のスーパーマーケットであるマルイチさんで、約50人のユーザーを募集して実証実験を行いました。
1つ、大きな反響としていただいたのが、「自分が考えている『足りない栄養素』について、思い込みがあったことが見えた」というものです。
つまり、自分たちとしては足りていないと思っていた栄養素に当たる品を過剰に購入していて、逆に十分だと思っていた栄養素の品を購入できていなかったとか、そういった傾向が分かって大きなヒントになった、という声をいただきました。
確かに、「高齢者はもっとカルシウムを取った方が良い」とか「風邪の防止にはビタミンCがいい」などと言われますが、実際に自分が何をどう摂取しているのかというのは、なかなか分かりません。それにだいたいの場合、食材の買い方は好みに従ってパターン化しがちです。
小原:そうですね、私たちの栄養摂取の傾向は、住んでいる地域の食文化や一緒に住んでいる家族の好み、個人の好みなどでかなり左右されています。実際、「この地域はおしなべてカリウム不足だよね」といった具合に、地域によって特性や傾向が表れる場合があるのです。
また、私たちはメディアから与えられる「こういう食材を取ったほうが良い」という情報に影響を受けています。しかし、そうやって様々な影響を受けた自分の食生活が、理想的な栄養摂取の状態なのかということは、検証したことがないという人が多いのではないでしょうか。
また、私たちはメディアから与えられる「こういう食材を取ったほうが良い」という情報に影響を受けています。しかし、そうやって様々な影響を受けた自分の食生活が、理想的な栄養摂取の状態なのかということは、検証したことがないという人が多いのではないでしょうか。
運動にしろ食事にしろ、健康関係のアクションは、「分かっているけれども面倒で、なかなかできない」というものが多いですよね。
小原:はい。実際には、詳細に調べて対策を取るほど体調が悪くなっているわけでもないし、そこまで手間暇はかけられないという人が多数派でしょう。とはいえ、そういう人でも、将来に備えて、できる範囲で健康に寄与するアクションはとりたいと思っています。
そうしたニーズがある中で、日々の買い物から栄養摂取の傾向がざっくりとでも分かるというのはメリットが大きいと考えています。
そうしたニーズがある中で、日々の買い物から栄養摂取の傾向がざっくりとでも分かるというのはメリットが大きいと考えています。
栄養素の傾向を捉えたマーケティングを可能に
SIRU+のマネタイズの方法は。
小原:基本的には、取得したデータを活用したマネタイズで進めるつもりです。買い物履歴から栄養素が分かるというコンセプトに、食品メーカー、小売業、健康関連企業の方々がかなり反応してくださっています。
特に期待が大きいのは、食品のより精緻なマーケティングです。例えば、ある一人暮らしの女性ユーザーについてカルシウムが不足しているという傾向が分かったとします。そこで、そのユーザーの画面に、カルシウム補給を前面に押し出した食材の広告を出す。SIRU+の結果で栄養素として足りないことがユーザーにビジュアライズされているので、通常のネット広告よりも効果が高いと考えられます。
先ほど、地域ごとに摂取している栄養素に特徴や違いがあるというお話しを紹介しました。ここから例えば、カルシウムが足りない傾向がある地域に対しては、その地域ならではのキャンペーンを打つということも考えられるでしょう。
こうしたアクションは、単なる効果的なマーケティングという産業セクターの取り組みにとどまらず、地域の健康度向上にも寄与するのではないかと考えています。
高下 義弘
特に期待が大きいのは、食品のより精緻なマーケティングです。例えば、ある一人暮らしの女性ユーザーについてカルシウムが不足しているという傾向が分かったとします。そこで、そのユーザーの画面に、カルシウム補給を前面に押し出した食材の広告を出す。SIRU+の結果で栄養素として足りないことがユーザーにビジュアライズされているので、通常のネット広告よりも効果が高いと考えられます。
先ほど、地域ごとに摂取している栄養素に特徴や違いがあるというお話しを紹介しました。ここから例えば、カルシウムが足りない傾向がある地域に対しては、その地域ならではのキャンペーンを打つということも考えられるでしょう。
こうしたアクションは、単なる効果的なマーケティングという産業セクターの取り組みにとどまらず、地域の健康度向上にも寄与するのではないかと考えています。
高下 義弘
本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.
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