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公開日: 2023.06.02
故障診断アプリ開発事例に見る「課題発見」からDX成功への道筋
AR(Augmented Reality:拡張現実)とVR(Virtual Reality:仮想現実)は共に広く知られるデジタル技術だが、最近の傾向としてはVRが主にゲーム分野で先行し、ARはビジネスや産業の現場と相性が良いようだ。
デジタル領域でビジネスの課題に対して革新的なソリューションを開発・提供している株式会社モンスターラボ。建設機械・農業機械 において国内外でトップクラスのシェアを誇るクボタが2020年12月にリリースした故障診断アプリ「Kubota Diagnostics(クボタ ダイアグノスティックス)」において、モンスターラボはAR技術を活用し開発に参画した。

【画像】モンスターラボ 山口将寛氏(左)と若本岳志氏(右)
同アプリでは、建設機械・農業機械の故障原因を診断したうえで、具体的な内部の故障箇所をスマートフォンの画面越しに視覚的に表示させることができる。これにより、経験が浅いメカニック の修理対応時間を、実証実験においては約3割から最大で8割の削減に成功。
今回は、プロジェクトを牽引した株式会社モンスターラボ コンサルティンググループシニアマネージャー山口将寛氏と、同・ヴァイスマネージャー兼DXコンサルタント若本岳志氏を迎え、クボタのARアプリのプロジェクトを成功させたカギに迫った。
今回は、プロジェクトを牽引した株式会社モンスターラボ コンサルティンググループシニアマネージャー山口将寛氏と、同・ヴァイスマネージャー兼DXコンサルタント若本岳志氏を迎え、クボタのARアプリのプロジェクトを成功させたカギに迫った。
学習コストとダウンタイムを大幅に削減
ARは「拡張現実」の名の通り、デジタルデバイスを通して、現実の対象物から情報を得られる技術。位置情報ゲーム「ポケモン GO」でおなじみだ。産業界では主に工事現場や工場、大きな施設などでの経路案内、保守・点検などに活用されている。身近な例では、部屋に置く家具の配置を試せたり、メイクや服装を疑似体験できたりするなど、AR活用の幅は広がり続けている。
今回取り上げる故障診断アプリ「Kubota Diagnostics」は、故障が発生した建設機械・農業機械をスマートフォンのカメラで映し、いくつかの質問に答えるだけで、故障している箇所を可視化してくれる。画面上でエンジンなどの故障の原因箇所をハイライト表示し、解決方法を導いてくれるものだ。
今回取り上げる故障診断アプリ「Kubota Diagnostics」は、故障が発生した建設機械・農業機械をスマートフォンのカメラで映し、いくつかの質問に答えるだけで、故障している箇所を可視化してくれる。画面上でエンジンなどの故障の原因箇所をハイライト表示し、解決方法を導いてくれるものだ。

実際のKubota Diagnosticsの画面。建設機械・農業機械にカメラを向けることで、内部の構造、および故障箇所が可視化される。※プレスリリースより引用
クボタの建設機械・農業機械は世界中で販売されており、故障が起きた際には、販売代理店のメカニックによって修理が行われるが、担当者の習熟度にはばらつきがあった。熟練の担当者でない場合、ダウンタイム――つまり機械の使えない期間が長引き、稼働率を下げてしまうことにもつながる。この機会損失は農機ユーザーの収益を減らしかねず、大きな課題だった。
こうした課題を解決するために、モンスターラボはプロジェクトに参画。DXコンサルタントの若本氏は、複数社の中から同社が選定された要因を次のように振り返る。
若本氏「当社は、建設機械・農業機械の専門部隊がいるわけではありません。その中で当社を選んでいただけた理由は、課題に対する解決策、つまり私たちの強みである「アジャイル型コンサルティング」を提案できたからではないかと思います」
それは「どうすればダウンタイムを減らせるのか」という課題をビジネス・デザイン・テクノロジーという複数の角度から捉え、短期間で仮説検証をしながら適切な解決策を導く方法である。例えば、今回の想定のユーザーはアメリカ人のメカニックであったが、彼らの利用シーンを想定して事前リサーチを行い、グローバル対応のUX/UIを盛り込んだ。また仕様通りに開発を進めるウォーターフォール型の開発ではなく、アジャイル開発という短いスパンで改善を続けていく開発手法も提案。クボタではほとんど前例のない開発手法であったが、このプロジェクトにフィットするだろうと評価された。デジタルソリューションに対する解像度の高さが勝敗を分けた。
加えて、20カ国33拠点と、モンスターラボがグローバルに展開していることも後押しとなった。特に、北米のユーザーに焦点をあてて現地とのやり取りが必要だったため、ネイティブのデザイナーが英語で直接会話できるハイブリッド体制を構築した点、また、XR(AR・VRなどの技術の総称)系アプリの海外での実績がすでにあった点も評価された。
こうした課題を解決するために、モンスターラボはプロジェクトに参画。DXコンサルタントの若本氏は、複数社の中から同社が選定された要因を次のように振り返る。
若本氏「当社は、建設機械・農業機械の専門部隊がいるわけではありません。その中で当社を選んでいただけた理由は、課題に対する解決策、つまり私たちの強みである「アジャイル型コンサルティング」を提案できたからではないかと思います」
それは「どうすればダウンタイムを減らせるのか」という課題をビジネス・デザイン・テクノロジーという複数の角度から捉え、短期間で仮説検証をしながら適切な解決策を導く方法である。例えば、今回の想定のユーザーはアメリカ人のメカニックであったが、彼らの利用シーンを想定して事前リサーチを行い、グローバル対応のUX/UIを盛り込んだ。また仕様通りに開発を進めるウォーターフォール型の開発ではなく、アジャイル開発という短いスパンで改善を続けていく開発手法も提案。クボタではほとんど前例のない開発手法であったが、このプロジェクトにフィットするだろうと評価された。デジタルソリューションに対する解像度の高さが勝敗を分けた。
加えて、20カ国33拠点と、モンスターラボがグローバルに展開していることも後押しとなった。特に、北米のユーザーに焦点をあてて現地とのやり取りが必要だったため、ネイティブのデザイナーが英語で直接会話できるハイブリッド体制を構築した点、また、XR(AR・VRなどの技術の総称)系アプリの海外での実績がすでにあった点も評価された。
課題へのソリューション・フィットが成功要因
ARを構築するにあたっては、クボタが保有しているCAD(コンピュータ支援設計)データを活用。開発のプロジェクトマネジメントを担当した山口氏は、カメラを建設機械・農業機械にかざして中のエンジン部分がスケルトン状に表示されるARの様子を動画で説明してくれた。
山口氏「スマートフォンのカメラをかざして建設機械・農業機械をトラッキングするのですが、カメラがブレて一度トラッキングが画面から外れても、またカメラをかざせばすぐに元通りトラッキングができるようにしてあります。ズレずに再度同じ位置に表示させるこの技術は、かなり難しいものでした。
現場でこのアプリを使うメカニックの方は建設機械・農業機械を触って作業しますのでスマートフォンを持ちっぱなしで作業することはできません。そのためいったんスマートフォンを置くことでトラッキングが外れても、再びかざせばまたすぐ元の画面に戻れることは必須要件でした」
山口氏「スマートフォンのカメラをかざして建設機械・農業機械をトラッキングするのですが、カメラがブレて一度トラッキングが画面から外れても、またカメラをかざせばすぐに元通りトラッキングができるようにしてあります。ズレずに再度同じ位置に表示させるこの技術は、かなり難しいものでした。
現場でこのアプリを使うメカニックの方は建設機械・農業機械を触って作業しますのでスマートフォンを持ちっぱなしで作業することはできません。そのためいったんスマートフォンを置くことでトラッキングが外れても、再びかざせばまたすぐ元の画面に戻れることは必須要件でした」
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