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Business 公開日: 2022.09.29

シリーズ:どうしてうちの会社のDXは進まないのですか? | 第3回:なぜうちの企業のDXは進まないのか? ~組織・風土編~

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 本シリーズでは、社会全体のDXブームの流れの中で、二極化する日本のDXの状況をご説明するとともに、DXに苦戦する企業の課題にフォーカスし、「どうしてうちの会社のDXは進まないのですか?」と題して、DXのボトルネックについて紹介していきます。
 今回は、組織や企業の風土面におけるDXの障壁を解説いたします。

【画像】shutterstock

目次

DXに注目する経営者と理解できない経営者の存在

 DXの推進にとって最も重要な点は経営者自身がDXの重要性を理解して、社内全体にDXの実行を指示していくことにほかなりません。

 しかし、日本の経営者はどの程度DXに対して理解し取り組んでいるのでしょうか?帝国データバンクが2022年1月に実施した「DX推進に関する企業の意識調査」によると、「DXの意味を理解し取り組んでいる」経営者がいる企業は15.7%であり、まだ経営者自身のDXに対する理解が進んでいないことが見受けられます。

 また、同調査では、社長の年代別でも結果を公表しており、「39歳以下」と他の世代では4.4ポイントの差があり、年齢の高い経営者が運営している企業ほどDXは遅れている状況が浮き彫りになっています。このことから、40代以上の経営者が自らの意識を変える必要があることがわかります。
参考:帝国データバンク「DX推進に関する企業の意識調査」
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p220105.html

笛吹けど踊らない組織とは? 〜意識の高い経営者と硬直した現場組織〜

 一方で、経営者がDXに対して理解をして取り組みを実施している企業であったとしても、実際のDXの推進には苦慮するケースも見受けられます。

 経営者がDXを重視し経営戦略にDXを掲げる企業でも、現場にDXに対する理解や必要性を浸透させることができないと、現場レベルで行動が伴わず、結果として「笛吹けど踊らず」の状態になることが多くなっています。

危機感を感じる現場と現場丸投げの経営者

 前述のケースとは反対に、現場での危機感が高いにもかかわらず、経営者や事業の責任者クラスがDXの必要性や重要性を理解できていない企業の場合は、現場や個人レベルでの取り組みに終始してしまう事態が起きています。

 現時点でも一部の企業では、部分的にPoC(実現可能性を検証する過程)という位置づけでAIを試行したり、新しいデジタルツールを導入検討したりするような活動が存在します。このような活動も、経営者の支援や承認を得ることができず、最終的に全社的な導入や改革に結びつけることなく頓挫してしまっている事例も散見されています。

 また、DX人材の育成等の分野についても、デジタル知識の習得プログラムや研修を採用する企業が増えつつあります。しかし、会社としての職能評価やスキル評価などの継続的な育成や評価までは整備されていない場合、従業員にとってデジタル知識習熟のインセンティブが高まらず、暗礁に乗り上げやすい状況になることが懸念されます。

DXは組織全体の一体感をもった変革にすることが重要 〜一部の理解者の努力にとどめない〜

【画像】shutterstock
 前述の通り、DXの実現には、DXに理解を示した経営者のトップダウンの動きと、現場レベルでの理解と実行の二つの動きがない限り途中で変革が止まるリスクが存在します。そのためDXを成功させたい企業は、組織的なメカニズムとしての経営改革と、個々人が動機づけを持って継続する文化的な変革という側面の二つのテーマに同時に取り組んでいくことが必要です。

 それぞれのテーマについて代表的な取り組みを以下に提示します。

〈組織的な変革メカニズム〉
・経営者の明確なビジョンと方針策定
・変革の計画として定義する戦略設計
・変革を進める体制構築とガバナンス
・持続的な行動として定着化させるための目標と評価の設定

〈意識・風土改革〉
・目的とゴールの共有
・経営者や管理職層の強力なリーダーシップ
・変革への共通認識
・個々人のモチベーション、参加意識の醸成
・相互に知識や経験を承認する文化の形成

全社改革に昇華できている企業にはCDOが設置されている

 では、一体どうすればDXを全社的な改革にしていくことが出来るでしょうか?DXに先進的に取り組んでいる企業では、DXを経営改革という位置づけで、経営レベルで取り組んでいるだけでなく、経営幹部でDXにコミットする役員を明確に配置しています。

 そのような経営執行職はCDO(最高デジタル・データ責任者)と呼ばれ、経営的な視点でDXに戦略的に取り組むだけでなく、全社横断的な権限をもって現場レベルまでDXに取り組むための組織や制度を整備しています。また、組織全体のモチベーションやリテラシーを上げるための育成などの活動も人事と連携して実施するなど、活動は多岐にわたっています。

 DXは取り組む範囲が広く、テーマが多岐にわたるため、従来のように個々の組織や事業ごとに取り組むと改革活動もサイロ化するリスクが存在します。その意味でも横断的な権限をもつDXの推進責任者の設置は、DX成功の絶対条件になっていくことでしょう。

 次回は組織以外のDXのボトルネック要素として紹介した、IT人材についてご紹介します。上に挙げたような原因とは一体何か?次回はそれぞれの点についてご紹介していきます。
【筆者プロフィール】
一般社団法人CDO Club Japan 理事 事務総長 水上晃 氏
大手コンサルティング会社でデジタルチーム(先端技術)責任者として活動してきた経験を活かし、次世代テクノロジーを活用した活動を実施。
主な活動は、次世代テクノロジーを活用した新規事業の企画、デジタル技術を活用した業務プロセスの改善、データ分析技術を活用した企画など。主な技術分野はIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボティクス、ブロックチェーン、ドローンなど。

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