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公開日: 2021.05.17
データが活躍人材を育む! デジタルHRシステム「HaKaSe」が目指すもの
デジタルマーケティング事業やメディアプラットフォーム事業などを中心に手がけるセプテーニグループは、独自のHRシステムを開発し、データを活用した人材の採用や育成を行っている。セプテーニグループの人的資産研究所 代表取締役の進藤竜也氏に、開発の経緯やメリット、人材活用の展望を聞いた。

【画像】shutterstock
「人が育つ」を科学的に解明するプロジェクトを発足

人的資産研究所 代表取締役 進藤竜也氏
進藤氏は、2011年に早稲田大学創造理工学部を卒業後、セプテーニ・ホールディングスに新卒入社。採用・育成・配置の分野へのアナリティクスの技術支援を手がけてきた。グループ内研究機関である人的資産研究所の所長を経て、2021年1月に設立された人的資産研究所の代表取締役に就任し、社外向けにHRテクノロジー事業を開始。セプテーニグループの研究成果の社会提供を担っている。
セプテーニグループがデータを活用した人材育成の構想を開始したのは15年ほど前。当時は数百名の規模で、ベンチャー企業として急速に事業が成長してきているタイミングだったという。
セプテーニグループがデータを活用した人材育成の構想を開始したのは15年ほど前。当時は数百名の規模で、ベンチャー企業として急速に事業が成長してきているタイミングだったという。

セプテーニ社内の様子
「会社の事業は伸びていたけれど、それに対応する人材供給が追いついておらず、採用しようとマーケットを見てもネット事業の経験者は少ないという状況でした。そのため、ポテンシャルのある人材を採用して自社で育てる選択肢しか残されていなかった。つまり、人材育成の精度が企業成長に直結する状況でしたので、科学的に再現性のある人材育成のシステムを構築し、企業競争力につなげようと考えたのです。」
当初、取り組みのアイデアとなったのは、映画化もされたマイケル・ルイスの『マネー・ボール』だったという。同作品は、アメリカのメジャーリーグを舞台にした実話を基にした作品。球団のオークランド・アスレチックスは当時、資金力不足のために良い選手を獲得できず、常に最下位にいた。ところが、データを活用することによってチームに貢献する選手を的確にスカウトして育成したり、最適なポジションに配置したりできるようになり、ついには優勝するというストーリーだ。
「人材が思うように確保できないという状況は、当時のセプテーニに通じるものがあり、“独自のデータ戦略で人材のスカウトや育成を進める”という作中で行われていた手法はとても共感できるものでした。これを会社の人事でも実現できるのではないかと現代表取締役の佐藤が発想し、これまでの取り組みにつながっています」
その後、2011年から本格的な研究開発プロジェクトに着手し、2016年には人材データを専門的に研究する組織「人的資産研究所」も発足。試行錯誤を経て生まれたのが、独自の人材育成システム「HaKaSe」だ。
当初、取り組みのアイデアとなったのは、映画化もされたマイケル・ルイスの『マネー・ボール』だったという。同作品は、アメリカのメジャーリーグを舞台にした実話を基にした作品。球団のオークランド・アスレチックスは当時、資金力不足のために良い選手を獲得できず、常に最下位にいた。ところが、データを活用することによってチームに貢献する選手を的確にスカウトして育成したり、最適なポジションに配置したりできるようになり、ついには優勝するというストーリーだ。
「人材が思うように確保できないという状況は、当時のセプテーニに通じるものがあり、“独自のデータ戦略で人材のスカウトや育成を進める”という作中で行われていた手法はとても共感できるものでした。これを会社の人事でも実現できるのではないかと現代表取締役の佐藤が発想し、これまでの取り組みにつながっています」
その後、2011年から本格的な研究開発プロジェクトに着手し、2016年には人材データを専門的に研究する組織「人的資産研究所」も発足。試行錯誤を経て生まれたのが、独自の人材育成システム「HaKaSe」だ。
独自の概念で人材育成を最適化する「HaKaSe」
HaKaSeでは、『人材育成方程式』と呼ぶ概念で人材育成を考えている。これは、“人は個性と環境の相互作用の影響を受けて育つ”という考え方を概念化したもので、職場環境における良質な経験を通じて人は育つものであることを前提としている。つまり、AIを活用し個々に最適な職場環境を提供することで、人材育成の生産性を向上させようというアプローチだ。

『人材育成方程式』によって、個々の社員がもっともスムーズに成長できる環境を予測
右辺の「P×E」では、それぞれの社員と環境の相性をスコア化している。「P」はパーソナリティー、つまり社員の個性についてのデータを意味し、「E」は環境を意味している。ヒューマンロジック研究所が提供する「FFS理論』という、組み合わせを科学するために人の思考行動特性を定量化する理論をベースに、“その人はどういった環境に身を置くとスムーズに成長するのか”を算出している。
また、左辺の「G」では、個人の成長を数値化している。これには、社員同士が匿名で相互にレビューする360度評価を半年に1回実施し、1人あたり数問のコンパクトな質問を対象者の周囲10~20名に回答してもらい、そのデータを使っている。さらに、“特定の相手にだけ理不尽に低い評価をしている”“誰にでも甘い評価をつける傾向がある”といった回答のバイアスについてAIを使って補正し、より正確な評価を算出できる技術も開発しているという。
また、左辺の「G」では、個人の成長を数値化している。これには、社員同士が匿名で相互にレビューする360度評価を半年に1回実施し、1人あたり数問のコンパクトな質問を対象者の周囲10~20名に回答してもらい、そのデータを使っている。さらに、“特定の相手にだけ理不尽に低い評価をしている”“誰にでも甘い評価をつける傾向がある”といった回答のバイアスについてAIを使って補正し、より正確な評価を算出できる技術も開発しているという。

「G」は相互評価とAIによる補正で、「P×E」はFFS理論をベースにした分析で定量化
「端的に言えば、HaKaSeによって“適材適所”を実現しています。P×E、Gをそれぞれ定量化することで、“A君ならこういう上司のもとで、こういう仕事を担当してもらえば一番伸びる”といったことをデータで予測できるようになります」
セプテーニでは人材配置の適材適所を実現する上で、2019年からジョブ型の新卒採用フローを導入。業務内容やスキルに合わせて採用を行うジョブ型の雇用は、専門性を育みやすいといったメリットがある。一方で、長らく新卒一括採用が行われてきた日本では、新卒時に適正を見極めてジョブ型の採用を行うのはまだまだ課題が多いのが現状だ。HaKaSeを使うことで、適性の見極めを行えるようになるのだろうか?
「HaKaSeは個性にあった環境を提供することで、成長を促進するシステムです。どんな環境を提供すれば対象者の方にとって育ちやすいかがデータで分かっているため、採用時に職種を含めたキャリアの提案を進めています。一方で、取り組みはまだスタートしたばかりですので、成果検証はこれからと行っていこう、という段階です。」
セプテーニでは人材配置の適材適所を実現する上で、2019年からジョブ型の新卒採用フローを導入。業務内容やスキルに合わせて採用を行うジョブ型の雇用は、専門性を育みやすいといったメリットがある。一方で、長らく新卒一括採用が行われてきた日本では、新卒時に適正を見極めてジョブ型の採用を行うのはまだまだ課題が多いのが現状だ。HaKaSeを使うことで、適性の見極めを行えるようになるのだろうか?
「HaKaSeは個性にあった環境を提供することで、成長を促進するシステムです。どんな環境を提供すれば対象者の方にとって育ちやすいかがデータで分かっているため、採用時に職種を含めたキャリアの提案を進めています。一方で、取り組みはまだスタートしたばかりですので、成果検証はこれからと行っていこう、という段階です。」
データ活用によって、完全オンラインでの採用も実現
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