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Business 2021.07.20

フードデリバリーの世界情勢からひも解く、 各国の配送事業に対するテクノロジー活用の差

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 新型コロナウイルス感染症によって大きな打撃を受けた2020年の外食・サービス産業。非接触が求められる世の中になったことで、商品の「配送」においてもテクノロジー面における変革が、かつてないスピードで起こっている。

【画像】shutterstock

各国の最新テック

 フードデリバリー・食品配送における主なトレンドとしては、「自動運転」「ロボット」「ドローン」が挙げられるだろう。

 これらのテクノロジーを活用したサービスを通して見えてくる、世界各国のフードデリバリーにまつわる情勢について考えていこう。

Uberは食料品やアルコール配達にサービスを拡大

 まずは、アメリカのテクノロジー企業発で、多くの国々にサービスが浸透しているUberからフードデリバリーサービスのテクノロジーや最新動向について確認しておく。

 Uberはアプリによって顧客とサービス提供者を結びつける技術を活用し、タクシーの配車事業を開始した。現在はフードデリバリーにもそのテクノロジーを活用し、サービスを展開している。食品デリバリーについて語る上で欠かせない存在であるUberは、2020年4月にアメリカなどで食料品や医薬品の配送を行う「Uber Direct」を開始。Uber Eatsでも食料品店やコンビニからの商品を配送する取り組みを行っているが、それをさらに強化したものだ。さらに、個人間で荷物を届ける「Uber Connect」も、アメリカやオーストラリアなどで提供を開始した。

 Uber Eatsとしては、2021年2月にアメリカのアルコール宅配サービス企業「Drizly」の買収を発表。料理の配達だけでなく、広く「モノを運ぶ」ためのサービスとしてのインフラを目指している同社の姿勢が見てとれる。

 一方で、業績が伸びない地域からは撤退するケースもみられる。2020年1月には、インドの事業を地元フードデリバリースタートアップの「Zomato」に売却。インドでは、Zomatoを含めた2社が寡占する状態があり、不採算が続いたことが原因だという。
【参考】Uber Technologies, Inc. - Uber to Acquire Drizly

アメリカでは配送ロボットの活用が進む

【画像】shutterstock
 アメリカでは、自動運転ロボットを使ったサービスが広がっている。自動配送を実現するにあたって欠かせないのが法整備だが、DOT(アメリカ合衆国運輸省)は、自動走行システムに関する新しいガイドライン「Automated Vehicles 4.0: Preparing for the Future of Transportation(自動走行車4.0)」を、2020年1月にラスベガスで開催されたCES2020で発表。メーカーによる開発や実用化を後押しすべく、環境整備を進めている。

 ただし、実際に自動運転車両が公道を走るための州による法整備はばらつきがあるのが現状。小型の自動運転車両となる配送ロボットについても、稼働するのは一部の地域にとどまる。

 Starship Technologiesは、アプリで注文を受けて自動運転ロボットで商品を配送するサービスを展開。料理や日用品などの配送に対応しており、アプリから注文すると、小型の自動走行ロボットが目的地まで移動して荷物を届けてくれる。

 ロボットは歩道を時速約6kmで移動。人が横切ろうとしたときに停止して衝突を回避したり、信号を認識して、進む・止まるの判断を行ったりできる。また、雨や雪の中での動作も可能だ。

 米国各地の大学キャンパス内のほか、カリフォルニア州のマウンテンビューやモデストでサービスを提供。さらに、イギリスやドイツ、デンマーク、エストニアでも展開しており、2021年1月には配送回数が100万回を達成した。
 アメリカでも、自律走行ロボットによる配送が法律で認められているのは一部地域にとどまる。とはいえ、まだ実証実験段階にある日本に比べると実用レベルで広く使われており、今後日本で普及させるに当たってのモデルにもなりそうだ。

 また、空港でのロボットを使ったサービスもスタートしている。フィラデルフィア国際空港で提供されているデリバリーサービス「OrderAtPHL」では、ロボットによる配送オプションを2021年2月より開始。

 同サービスは、空港内の飲食店の商品をスマートフォンから注文できるサービス。これまでは従業員が徒歩で商品を届けていたが、接触機会を減らすための新たなサービスとしてロボットによる配送を選べるようになった。

 利用されているのは、アメリカのPiaggio Fast Foward社の配送ロボット「Gita」。先述のStarship Technologiesのロボットのように自律走行はできないため、配達の際は人間が先導する必要があるが、商品の受け渡し時の接触を避けることが可能になる。

 Gitaの場合、自律走行ができない点を考えると長距離の配達や省人化を目的としたロボットの導入には適しておらず、活用の場面はやや限定的になりそうだ。しかし、手渡しで飲食物を受け取ることに抵抗を感じてデリバリーサービスの利用を控えようとするユーザーは少なからず存在するため、それらのユーザーの取りこぼしを防ぐという点では効果が期待できそうだ。

イギリスでは、大規模合併による新勢力が誕生

【画像】shutterstock
 世界各地でUber Eatsが躍進を続けるフードデリバリー市場だが、イギリスでは老舗のJust Eatが従来大きなシェアを占めていた。そして、2020年4月には、オランダのTakeaway.comがJust Eatを吸収合併して、「Just Eat Takeaway.com」が誕生。フードデリバリーサービスの新勢力となった。さらに同年6月には、アメリカのフードデリバリー大手Grubhubと同社が合併することが発表された。
 大規模な合併が繰り返されているのは、Uber Eatsへの対抗という側面が大きいだろう。今後はイギリスだけでなく他国でも、中小フードデリバリー業者の吸収・合併の動きが加速していくことが予想される。

中国はドローン配送にも注力

【画像】shutterstock
 中国は、『中国製造2025』とよばれる技術分野に関するロードマップを2015年に策定。自動配送やドローンも、これに沿って環境整備が進められている。

 中国スタートアップのNeolixは、2019年6月より自動運転のデリバリーロボットの大量生産を開始。新型コロナウイルスの影響による需要増でさらに成長を続けている。

 また、アリババ傘下の中国フードデリバリーサービスであるウーラマは、2018年から配送手段としてドローンを導入。さらに、美団外売やアントワークなどもドローンによる配送を行っている。

日本は法整備が課題

【画像】shutterstock
 日本の自動配送やドローン配送の状況は、中国をはじめとした他国に比べてやや遅れをとっているのが現状だ。ロボットによる配送はまだ実証実験の段階だが、ZMPの自動配送ロボット「DeliRo(デリロ)」を使った実証実験が複数回にわたって行われている。2021年2月に東京都中央区で実施されたフードデリバリーの実証実験には、松屋や磯丸水産、ローソンといった企業が参加した。

 また楽天と西友、横須賀市は、商品を顧客の自宅まで自動配送する実証実験を2021年3月23日から4月22日の期間で実施。配送にはパナソニック製のロボットが使用され、顧客がスマートフォンから商品を注文すると、ロボットが住宅地の公道を走って指定の住所まで移動する。
 実施日の限定された実証実験ではなく、恒常的なサービスとしての提供を可能にするには法整備が必須となるが、そちらについても明るい兆しがみえる。日本経済新聞の報道によると、政府は2021年度に自動配送ロボットの法整備を認める方向だという。
 ロボットによる配送がすでに実用段階にある欧米諸国や中国などに比べ、日本は遅れをとっているが、これは法整備が追い付いていなかったことによる部分が大きいだろう。今後、自動配送ロボットの公道走行が法的に可能になることで、サービスが広まっていくことに期待したい。

 また、ドローンを使ったデリバリーサービスの実証実験も予定されている。これは、KDDI、日本航空、JR東日本、ウェザーニューズ、Terra Droneが参画する「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」として行われるもの。実証実験は2021年度中に東京都内で予定されており、運用の課題や収益性などを検証する。
 法的な面に目を向けると、日本でドローンによる配送が認められているのは山間部などに限られている。それに対して、先述の中国のアントワークは、同国航空局の許可を得て都市部でのドローンの商用運用を行っている。

 日本の市街地などで配送サービスを実現にするには法整備が課題となっていたが、2021年3月に航空法の改正案が閣議決定されたことで、大きな進展が見え始めた。具体的には、2022年度中に人口の多い都市部でも目視者なしでドローンを飛ばすことが可能になる見込みだという。
 2022年を目標に政府が無人航空機の飛行空域などの規制緩和を進めていることを受け、規制緩和後のサービス展開に向けた動きも起きている。ANAホールディングスは4月15日、ドイツのスタートアップ・ウイングコプターとの提携を発表。日本国内のドローン配送ネットワークを構築し、医薬品や日用品のドローン配送を目指している。

 航空大手のANAが参入を表明したことは、他企業の参入や市場の活性化においてもプラスに作用するだろう。

2021年はデリバリー事業におけるロボティクスのさらなる普及が期待される

 2021年も配送手段へのロボティクスの活用はさらに進みそうだ。法整備の面で海外に遅れを取っていた日本でも、法改正などの動きがみられ、ようやく実用レベルのサービス展開が現実的になってきた。自動配送やドローンに関する規制緩和後の、国内各社の動きに注目していきたい。

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