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Business 公開日: 2019.04.25

【若田光一が対談、宇宙利活用の旅】宇宙空間での実験が創薬の時間とコストの圧縮を促す

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ペプチドリーム舛屋圭一氏と対談。宇宙におけるタンパク質結晶生成実験が、創薬に与える影響とは?

前編からのつづき)

 地球近傍軌道(地球低軌道)を民間企業や、研究機関が使うことで、何ができるのか。どのようなイノベーションにつながるのか。宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事・有人宇宙技術部門長で、宇宙飛行士の若田光一氏が、外部識者たちとの対談で探る。

 第4弾前編では、創薬企業として世界から注目されているペプチドリームの副社長である舛屋圭一氏に、国際宇宙ステーションの「きぼう」を活用した高品質タンパク質結晶生成実験について聞いた。後編では、この実験が創薬に与える影響のほか、研究者の育成について議論する。

「きぼう」活用によるタンパク質結晶化実験の成果

若田 ペプチドリームは2017年からこれまでに、実際に「きぼう」での結晶化実験を利用されてどのような成果を得ていますか。

舛屋 地上での結晶化ではうまくいかなくても、同じ条件でもう一度「きぼう」で結晶化実験を行うと、いい結晶がとれることがあります。とはいえ、地上で結晶化できなかったものを宇宙に打ち上げるのは、結構勇気が要ります。コストもかかりますし、「きぼう」での結晶化実験がすべてうまくいったわけではありませんから。

 宇宙なら地上よりもいい結晶がとれるという実感はありますが、地上での結晶化実験を進めながら慎重に判断した上で、「きぼう」での結晶化実験にトライすべきだと感じています。

 結晶化は、タンパク質をどのように用意するかというところから始まります。まず、結晶化すべきタンパク質をどういう実験系で作ったのか、どれくらいの純度なのかなどを調べます。そして、いろいろな実験系でタンパク質を用意して、結晶化にトライします。フレキシビリティや機動力も必要です。

若田 実際に医療の分野では、「きぼう」を活用した事例にさまざまな分野の企業が注目しています。そういった企業に対して、何か結晶化に成功した具体例を紹介していただけますか。
舛屋 最初に「きぼう」を使って結晶化に成功した事例は、がん治療をターゲットにしたものでした。メインターゲットは乳がんです。HER2という、乳がん患者に見られるタンパク質に、私たちの作った小さい医薬品候補化合物(特殊環状ペプチド)がしっかりと食いついていたのですが、そのようなX線結晶構造解析の画像を見たのは初めてでした。今は実際に、乳がんに対する薬作りが着々と進行しています。

 ペプチドを使ったがん治療には、いろんな展開があります。例えば、あるタンパク質に特異的に結合するペプチドを使って、がんの抗体をがん細胞に運ぶ薬が考えられます。他にも、ペプチドに放射性物質を運ばせてがん細胞の周りに集め、その放射性物質を目がけてレーザーを照射すれば、とても狭い範囲にレーザーを照射でき、がん細胞だけを殺すことができます。レーザー治療は昔からありますが、これまでは正常な細胞までも殺していました。ペプチドを使えば、レーザー治療を補助する薬も作れるのです。

若田 宇宙で高品質なタンパク質の結晶化を成功させることが、今後の創薬にどのような影響を与えるのでしょうか。

舛屋 例えばがんの創薬では、薬の種を発見してから市場に流れるまでに10年以上かかると言われています。「きぼう」の活用によって、宇宙で高品質な結晶がとれるようになり、タンパク質の構造が視覚化されることで、このフェーズが大きく短縮されます。現状の半分くらいの時間で市場に出て行くことがあるかもしれません。

 創薬のコスト面からも、重要な意味を持ちます。ブラインドの状態で薬の種を研究すると、私のようなケミスト(化学者)が、5人から10人ほどのチームを組んでプロジェクトを進めます。それが、タンパク質構造の視覚化によって大幅に人員削減ができ、その分の研究者を別の研究に充てられます。

研究者を育てるにはどうすればいいのか

若田 JAXAとしても、「きぼう」にタンパク質を打ち上げる前の準備や宇宙から戻ってきてからの解析についても支援するパッケージ化した宇宙実験を提供しており、そうした研究者を採用してきました。

 このようなことも、日本が宇宙関連事業において欧米やロシア、中国に比べてリードしているところかなと思っています。

舛屋 いろいろとサポートしていただいているJAXAのメンバーは、初期の頃からお互いに切磋琢磨しながら成長していると感じています。JAXAの地上部隊、特にタンパク質を扱っている人たちは非常に広い視点で技術に特化しています。

 結晶化だけに限らず、薬作りも最後は人が大切になります。どんなにいいシステムや設備を持っていても、それを使いこなす人によって結果が全く変わってきます。JAXAの場合は、普通の製薬会社と同じレベルの設備と技術を持ち、それを使いこなせる能力を持った研究者も揃っています。

若田 やはり、研究者や科学者の育成は重要ですね。今後も日本は、さまざまな分野で研究者や科学者を育てていく必要があると思います。そのためには、まず若い人たちにサイエンスに興味を持ってもらうことです。そのためには、どうすればいいのでしょうか。

舛屋 JAXAが宇宙のことを積極的にPRすることで、ある程度の効果はあると思います。ただ、JAXAというと、どうしてもロケットを打ち上げているイメージが強くなっていて、エンジンをどう作るかといった方向に目が行ってしまいます。

 それも重要な技術なのですが、JAXAには化学の研究者や、生物学的なバックグラウンドを持った研究者など、さまざまな分野の研究者や科学者がいることを知っている人はほとんどいないでしょう。そういった情報も、積極的に表に出していってほしいと思います。

 そうすれば、今後化学や生物の研究者になりたいと考えている学生にとっても、JAXAへの就職が選択肢の一つになるでしょう。

 日本人がロケットを打ち上げるテレビドラマがありましたが、次はロケットを使ってなにを宇宙に持っていって、何を持って帰るかとか、そこにうごめいている人たちをドラマにするのも面白いと思います。日本人はどちらかというと専門的な話を喜んで聞きますから、うまくいけばタンパク質の結晶化といった地味な分野にも、若い人たちが興味を持ってくれるかもしれません。

若田 JAXAの、この実験の担当者は高校生の時に、「免疫細胞がウイルスを認識する瞬間に、どのようなタンパク質がどのように働いているのか」を擬似的な動画で表現していたNHKの教育番組を見て、もっとタンパク質のことを知りたいと研究者の道を目指すことにしたそうです。昨年はJAXAのシンポジウムで、大々的に学生向けのアピールをしました。PRするにしても、ターゲットをどこに絞るかを考えないといけませんね。ターゲットはやはり、高校生でしょうか。

舛屋 自分が将来進みたい進路がはっきりとしていなくて、将来科学者になりたいのか、弁護士になりたいのかなどと考えている時ですね。私自身も化学の研究を進路に選んだのは、高校2年の頃に、はとこが骨肉腫によって僅か7歳で亡くなったことがきっかけになりました。その時に、人の命を救う薬を創ることにチャレンジしたいと思ったんです。

 だから、高校生や中学生にも、JAXAってこんな面白いこともやっているんだよ、というところを見せられればとても効果的だと思います。

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