Ideas
公開日: 2022.04.15
AIがたった1時間でデザイン1000案を生成 人に求められるクリエイティブと価値はどう変わる?
これまでクリエイターが行っていたクリエイティブ領域をAIが代替する――。「AIは人間の仕事を奪う」との文脈で語られがちだが、そうとは限らない。より発想力や創造性が必要なクリエイティブ領域が拡大されると解釈すれば、未来は明るいのではないだろうか。

今回インタビューするのは、プラグ 代表取締役社長 小川亮氏だ。プラグは、デザインの評価・生成ツール『パッケージデザインAI』を開発し、2019年にリリースした。なぜ、デザイン領域のAI開発に挑戦し、プロダクト化したのか。社内のデザイナーとは自社競合しなかったのか。AIとクリエイティブの関係はこれからどうなるのか。クリエイティブ領域のAI活用の可能性を伺った。
920万人分の消費者調査データがAIのベースに
プラグは2014年に、デザイン会社とマーケティングリサーチ会社が合併してできた会社。本来、パッケージデザインやマーケティングリサーチ、商品開発支援を主な事業としている。スーパーやドラッグストアなどで誰もが目にしたことのある、スナック菓子や飲料、日用品のパッケージを手掛け、その数は年間約200商品にも及ぶ。
デザインとマーケティングリサーチを起源に持つプラグは、20年間で培ってきたデザイン評価のノウハウと、のべ920.6万人を対象に、9206商品に対する「好みや印象」をリサーチした画像の調査データを基にAIサービスを制作。その結果、人間にリサーチした場合と同等の分析ができるツール『パッケージデザインAI』が完成し、パッケージデザインの選定に大きな変化をもたらした。
テクノロジーが活用されるまで、商品に採用するパッケージデザインを決めるプロセスにはさまざまな課題があった。パッケージを開発するに当たって、消費者に対する調査やパッケージデザインの修正には膨大なコストや時間が掛かる。
デザインとマーケティングリサーチを起源に持つプラグは、20年間で培ってきたデザイン評価のノウハウと、のべ920.6万人を対象に、9206商品に対する「好みや印象」をリサーチした画像の調査データを基にAIサービスを制作。その結果、人間にリサーチした場合と同等の分析ができるツール『パッケージデザインAI』が完成し、パッケージデザインの選定に大きな変化をもたらした。
テクノロジーが活用されるまで、商品に採用するパッケージデザインを決めるプロセスにはさまざまな課題があった。パッケージを開発するに当たって、消費者に対する調査やパッケージデザインの修正には膨大なコストや時間が掛かる。

【画像】PLUG
一方、プラグの『パッケージデザインAI』は920万人分もの調査結果をAIに学習させたツールだ。消費者に好まれるパッケージデザインの数値評価を、AIで近似的に算出できる。ターゲットごとの評価を見ることも可能だ。1時間足らずで1000パターンのデザインを生成することも。評価AI開発の際は東京大学と共同研究を行っており、正確性にはアカデミックな裏付けもある。飲料や食品、化粧品、医薬品、ペットフード、ビジネス書籍など51カテゴリで利用ができる。
開発のきっかけは、2015年まで遡る。「どのパッケージが好まれるのか、いいデザインだと言われるかを知りたくて、自社で大規模な調査を開始しました」と小川氏は振り返る。
「3年分ほどのデータがたまった際に、AIでこれが活用できるのではと議題に上がったんです。それでAIツールの開発に着手しました。
AIは一般的に、『同じフォーマットの学習データ』が必要です。ところが、企業が行っている調査の方法は毎回少しずつ違います。例えばユーザーに対して3案だけ見せたり、5案を見せて調査を行ったりしていますが、見せる案数が異なると、結果も異なってきます。調査データのフォーマットを揃えないと、AIには活用できません。同じフォーマットの学習データは、どの企業も持っていないのです。当社の調査データはフォーマットが揃っていることに優位性があると考えました」
ところがテスト段階までは比較的すぐに作れたものの、精度を上げるために「パワーを要した」という。
「既存のAIを組み合わせたらテスト段階まではある程度の完成度で作れました。ところがそこから先は、いくつもの微調整を行い、リアルの調査結果に近づけるのが大変でした。試行錯誤しながら精度を上げてAIの予測値を人間の調査結果に近づけるためのチューニングは、今もずっと続いていて終わりがありません」
『パッケージデザインAI』導入実績には、カルビー、ネスレ日本、森永乳業など大手の食品会社や飲料メーカーがズラリと並ぶ。パッケージデザインAIを活用し、リニューアル前と比べて売り上げが1.3倍に向上した商品もある。
「現在は、ターゲットが『20代女性』『30代男性』のような性年代別で設定できます。それを例えば『赤ちゃんのいる男性』など、今後はもっとターゲットを細かく設定できるようにしたいです」
開発のきっかけは、2015年まで遡る。「どのパッケージが好まれるのか、いいデザインだと言われるかを知りたくて、自社で大規模な調査を開始しました」と小川氏は振り返る。
「3年分ほどのデータがたまった際に、AIでこれが活用できるのではと議題に上がったんです。それでAIツールの開発に着手しました。
AIは一般的に、『同じフォーマットの学習データ』が必要です。ところが、企業が行っている調査の方法は毎回少しずつ違います。例えばユーザーに対して3案だけ見せたり、5案を見せて調査を行ったりしていますが、見せる案数が異なると、結果も異なってきます。調査データのフォーマットを揃えないと、AIには活用できません。同じフォーマットの学習データは、どの企業も持っていないのです。当社の調査データはフォーマットが揃っていることに優位性があると考えました」
ところがテスト段階までは比較的すぐに作れたものの、精度を上げるために「パワーを要した」という。
「既存のAIを組み合わせたらテスト段階まではある程度の完成度で作れました。ところがそこから先は、いくつもの微調整を行い、リアルの調査結果に近づけるのが大変でした。試行錯誤しながら精度を上げてAIの予測値を人間の調査結果に近づけるためのチューニングは、今もずっと続いていて終わりがありません」
『パッケージデザインAI』導入実績には、カルビー、ネスレ日本、森永乳業など大手の食品会社や飲料メーカーがズラリと並ぶ。パッケージデザインAIを活用し、リニューアル前と比べて売り上げが1.3倍に向上した商品もある。
「現在は、ターゲットが『20代女性』『30代男性』のような性年代別で設定できます。それを例えば『赤ちゃんのいる男性』など、今後はもっとターゲットを細かく設定できるようにしたいです」