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公開日: 2022.06.17
デジタル技術で「クルマの100%リサイクル」を目指すBMWの新提案
「サステナビリティー」は「持続可能性」でなく「地球環境の維持可能性」と訳すべき、としたのは、ベストセラー『人新世の「資本論」』の著者、斎藤幸平氏。クルマメーカーも、クルマ作りのコンセプトを変えてきているようにみえる。

最近、おもしろい提案だと思わせられたのが、独BMWの「BMW i Vision Circular(BMWアイ・ビジョン・サーキュラー)」だ。「サステナビリティーはラグジュアリーと仲良くできる sustainability can go hand in hand with a luxurious appearance」と謳うこのモデル。デジタル技術を活用しながら、徹底したリサイクルの考えを取り入れたという。
クルマが生活の中で重要と考えている読者の方は少なくないだろう。同時に、このサイトをチェックしている方なら、上記のように、いかにしてクルマのある生活をサステナブルなものへと変えていくかについても、考える機会があるのでは。
BMWの提案は、いくつかの注目すべき要素から成り立っている。第1に、徹底したリサイクル素材でクルマを作ること。第2に、クルマ作りの過程で無駄を排除すること。第3に、新しいユーザーエクスペリエンスの提供。全てがデジタル技術によって可能という。
クルマが生活の中で重要と考えている読者の方は少なくないだろう。同時に、このサイトをチェックしている方なら、上記のように、いかにしてクルマのある生活をサステナブルなものへと変えていくかについても、考える機会があるのでは。
BMWの提案は、いくつかの注目すべき要素から成り立っている。第1に、徹底したリサイクル素材でクルマを作ること。第2に、クルマ作りの過程で無駄を排除すること。第3に、新しいユーザーエクスペリエンスの提供。全てがデジタル技術によって可能という。

100パーセントリサイクルを謳い、再生パーツの使用や分解の容易さが考慮されている設計
デジタライゼーションというと、クルマの電動化や、車内インフォテインメントシステムと密接に結びついている。しかし、そこにとどまらず、「サーキュラーエコノミー Circular Economy」(BMW)を実現する手段として、より広範囲に、そしてより深くクルマ作りと結びつけるのがBMW i Vision Circularだ。
車体外皮や内装はほぼ全てを二次使用の素材で作る。コンピューターと結びついた3Dプリンターを活用して、多くの部品を設計。メリットは「正確に作れるのと、無駄が出ないこと」とBMWでは説明。このところ、メルセデス・ベンツやアウディといった競合メーカーも、設計や製造過程における3Dプリンターの効率の良さに注目しているので、これは大きなトレンドになっている。
車体外皮や内装はほぼ全てを二次使用の素材で作る。コンピューターと結びついた3Dプリンターを活用して、多くの部品を設計。メリットは「正確に作れるのと、無駄が出ないこと」とBMWでは説明。このところ、メルセデス・ベンツやアウディといった競合メーカーも、設計や製造過程における3Dプリンターの効率の良さに注目しているので、これは大きなトレンドになっている。

設計時もデジタル技術が活用されている(後席シート設計の風景)
BMW i Vision Circularでは、同時に、分解の容易性も提案されている。ボディーパネルやロードホイールや内装では、最後にクルマを解体する際に、簡単に部品が外せるような設計が徹底されているのだ。

リアシートもリサイクル素材で、かつ表皮はジッパーで簡単に取り外せるなど構造もリサイクル前提
電気モーターやサスペンションシステムについての言及はないけれど、駆動用バッテリーは、いま各メーカーが取り組んでいるソリッドステートバッテリー(全固体電池)。軽量で効率がよく、かつパーツのリサイクル率が高いためだ。

新世代のBEV(バッテリー駆動EV)の提案
タイヤも、認定栽培されて作られた生ゴムを使用。真っ黒でない。そこにリサイクルされたゴムのパーティクル(切片)を混ぜ込んで強度を上げている。「大理石のように見える」(BMW)視覚的効果もおもしろい。

ボディー外装と内装はほぼ100パーセント、リサイクル素材で作る
クルマの走行データをクラウドで集め、「BMW i Insight Vision(インサイトビジョン)」なるアプリを使って、契約者同士で共用。ナビゲーションを使っているときは、クラウドのデータをもとに、ルートガイドが行われる。
日本車でも同様の機能をもったものがあるが、BMWが本社を置くドイツにおける「グリーンライト」と結びつけられるところがより環境的だ。一定の速度で走行していると、赤信号に引っかからないで走行できるため、発進や加速時に多く出る排ガス中のCO2を低減できる。このルートを積極的に案内するという。
使用者の目線で見ると、デジタル技術はクルマのインテリアを興味深いものへと”進化”させている。目につくのは「クリスタルボディー」と呼ばれる透明なインフォテインメントシステム。手を動かすことで作動するそうだ。
日本車でも同様の機能をもったものがあるが、BMWが本社を置くドイツにおける「グリーンライト」と結びつけられるところがより環境的だ。一定の速度で走行していると、赤信号に引っかからないで走行できるため、発進や加速時に多く出る排ガス中のCO2を低減できる。このルートを積極的に案内するという。
使用者の目線で見ると、デジタル技術はクルマのインテリアを興味深いものへと”進化”させている。目につくのは「クリスタルボディー」と呼ばれる透明なインフォテインメントシステム。手を動かすことで作動するそうだ。

最新のデジタル技術を使う「クリスタルボディ」というコントロールユニットが特徴的
周囲のダッシュボードにはアルミニウムやウッドが一部使用されているが、アルミニウムは陽極処理された二次使用、ウッドは認定栽培されたものを使っている。デジタルデザインによって、リサイクルだからシンプルでいい、といった考えとは正反対のような、新しさが作り出されているのに感心。
BMWではウィンドスクリーンも、デジタル技術を使って”進化”させる。一部をディスプレイとして機能させることで、部品点数の削減を目指しているのだ。
2040年を見ての提案とされるBMW i Vision Circular。デジタル技術のメリットを見せてくれている点で、たいへん興味深い提案だと思う。
BMWではウィンドスクリーンも、デジタル技術を使って”進化”させる。一部をディスプレイとして機能させることで、部品点数の削減を目指しているのだ。
2040年を見ての提案とされるBMW i Vision Circular。デジタル技術のメリットを見せてくれている点で、たいへん興味深い提案だと思う。
Text/小川フミオ
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