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Ideas 公開日: 2021.08.11

スマートシティーと、その先にある「スーパーシティ構想」とは

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 テクノロジーの活用によって、都市や地域のサービスを効率化したり、交通や防災、観光などさまざまな分野の課題の解決を図るスマートシティー。本記事では国内外の取り組みや事例を紹介する。

【画像】shutterstock

日本でもスマートシティー実現の動きが本格化

 日本でのスマートシティー実現のための施策としては、総務省が2017年から「データ利活用型スマートシティ推進事業」を実施。また、2018年に策定された「統合イノベーション戦略」では、戦略の柱の一つとして、「スタートアップ・エコシステム拠点都市の形成やスマートシティの実現」が盛り込まれた。

 日本のスマートシティーの取り組みは、海外に比べて遅れがちだと言われてきたが、ようやく本格的な動きを見せつつある。

トヨタ ウーブン・シティ

 トヨタは、2020年1月にラスベガスで開催された展示会「CES2020」で、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスがつながる実証都市「Woven City」(ウーブン・シティ)のプロジェクト概要を発表した。

 ウーブン・シティは、人が生活するリアルな環境で、自動運転やMaaS、パーソナルモビリティー、ロボット、スマートホーム、AIなどの技術を導入・検証できる実証実験都市。静岡県裾野市のトヨタ東富士工場跡地に約70.8万㎡の街をつくる計画で、初期はトヨタの従業員やプロジェクト関係者など2,000名程度の住民が暮らす予定だ。
 CES2020で行われたプレスカンファレンスには、同社CEO豊田章男も登壇。「ゼロから街全体を作りあげる機会というのは、例えこのように非常に小さな規模であったとしても、多くの点で千載一遇のチャンスなのです」と話すなど、意気込みの大きさがうかがえる。

 各社との協業に向けた動きも進んでおり、2021年3月にはNTTとの業務資本提携が発表された。スマートシティービジネスについて協業関係を構築することを目的としたもので、「スマートシティプラットフォーム」を共同で構築予定だという。

 さらに、5月には水素エネルギー利活用についてENEOSと協業していくことも発表。具体的には、ENEOSによるウーブン・シティ近隣への水素ステーションの建設・運営や、水素ステーションで製造された再生可能エネルギー由来の水素をウーブン・シティに供給することなどが計画されている。

 同プロジェクトは2021年2月に着工したばかりだが、NTTをはじめとした各企業との協業により、注目と期待が高まっている。日本のスマートシティー実現を牽引する存在となってくれそうだ。

東京ポートシティ竹芝

 都市型スマートシティーを構成するひとつの要素として、以下のような実証実験も行われている。

 東京・竹橋に2020年9月にオープンした「東京ポートシティ竹芝」は、東急不動産と鹿島建設が共同開発するスマートシティー。その目玉となっているのが、スマートビル「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」だ。
 同ビルでは、ビル内のさまざまなリアルタイムデータを収集してプラットフォームに集約する。エレベーターホールの混雑状況やトイレの空き状況といった情報を館内のデジタルサイネージやウェブサイトを通じて配信。施設の混雑状況や気温・湿度といった情報をリアルタイムで配信することで、混雑回避や快適性の向上に役立てる。

 多くの人が集まる都心のオフィスビルは、エレベーターやトイレ、ビル内テナントの飲食店など、さまざまな場所で「待ち時間」が発生しがちだ。リアルタイムデータで混雑を回避する取り組みは、無駄な時間を減らすことによる業務効率化にも貢献しそうだ。

スマートシティたかまつ

 地方でも実証実験が行われている。香川県高松市の「スマートシティたかまつ」は、総務省の「データ利活用型スマートシティ推進事業」として、2017年より産学民官連携で進められているプロジェクト。
【画像】TakamatsuMovie
 ヨーロッパで開発されたIoTプラットフォーム「FIWARE」を使い、防災、観光、福祉、交通などの分野でのデータ活用による課題解決を目指す。

 具体的に、防災分野における取り組みを紹介しよう。「FIWARE」導入以前に、高松市は以下二点の課題を抱えていた。
  1. 降水量が増加した際の、河川の氾濫や津波・高潮の危険性
  2. 大規模災害時における、避難所状況の把握や市民への情報提供の迅速化
 河川の水位に関して、これまでは職員が現地に赴いて調べる作業が行われていたものの、「FIWARE」導入後は市役所からリアルタイムで観測できるようになった。また、指定避難所から電力の使用状況についてのデータを集め、「高松市ダッシュボード」にて確認することも可能となった。データを確認することで、避難所が利用できるかを迅速に判断できる仕組みが整ったのだ。このように、「FIWARE」による都市基盤を構築することによって、市民を災害からいち早く守る環境になったといえる。
 少子高齢化や人口減少にともなう課題を抱える地域は多い。都市部とは異なる課題を解決するための取り組みとして、地方での実証実験は重要な意味を持つ。

中国は国家プロジェクトとして注力

【画像】shutterstock
 国家プロジェクトとしてスマートシティー実現に力を入れる中国では、2011年の「第12次五ヶ年計画」、2014年の「全国新都市計画」および、「スマートシティの健全な発展の促進に関する指導意見」、2016年の「第13次五ヶ年計画」など、スマートシティー推進に関連したさまざまな政策を打ち出してきた。

雄安新区

 河北省の雄安新区は、2017年に、国の重大な発展や改革の任務を受け持つ「国家級新区」として設置された。農村地区の同地域をスマートシティー化して、北京の都市機能を分散させることを目指し、無人自動車や無人コンビニなど多くの実証実験が行われている。

中国・シンガポール天津スマートシティ

 「中国・シンガポール天津スマートシティ」は、中国とシンガポールの政府が進める大規模環境都市プロジェクト。水やエネルギーの使用量に極力配慮した、環境性能の高い建築様式・建築物であるグリーン建築も指標として取り入れられているのが特徴だ。再生可能エネルギー利用率20%以上、グリーン建築比率100%などの目標が掲げられている。

 2021年4月には、CO2を排出しないクリーンエネルギーを導入した「スマートエネルギータウン」が、「中新天津生態城」「大張荘智慧能源小鎮」に完成したと発表。環境に配慮した街づくりに注力する。

城市大脳

 中国のIT大手・アリババによるスマートシティー戦略「城市大脳」は、同社のクラウドサービス「アリババクラウド(阿里雲)」を通じてさまざまなサービスを提供する。

 例えば、新型コロナウイルス感染症の影響が広がった2020年2月に利用が開始された「健康コード」は、緑・黄・赤の3色のQRコード。健康状態が深刻化すると、いずれかのコードが発行され、駅や商業施設の入場時などの確認に利用される。

 また、同年9月に導入された水道事業をスマート化するシステムでは、地下の水道管のデータを取得、AIを使って水流速度や水量、詰まり具合などを分析できる。さらに、ARで可視化することも可能だ。

ニューヨークでは「Link NYC」の整備が進む

 アメリカでは、ニューヨークが長期戦略「One New York」を2015年に発表。2019年には、その改訂版となる「One New York2050」が発表されている。経済成長や気候変動に関する問題なども含めた包括的な戦略だが、この中にはスマートシティーに関する取り組みも含まれている。
【画像】shutterstock
 生活に密着した取り組みとしては、街頭に設置された「Link NYC」がある。これは、ニューヨーク市内の利用されていない公衆電話をWi-Fiスポットに転換したもの。スマホなどを接続してWi-Fi通信を行えるほか、USBポートを使って充電したり、側面に搭載されているタブレットを使って地図などを調べたりが可能。さらに、緊急電話につながるボタンも用意されている。1700を超える機器が設置されており、毎週約1100万人が利用しているという。

 なお、同様の取り組みは、日本でも行われている。東京都が西新宿エリアで設置を進める「スマートポール」がそれだ。2020年に運用が開始されたばかりで、設置数も多くはないが、先行するニューヨークの事例をみると、今後街のインフラとして広く受け入れられていくことも期待できそうだ。

 「One New York2050」では他にも、公共交通機関のシステムを見直して交通渋滞や環境汚染を回避したり、隠れた空きスペースを活用してオープンスペースのネットワークを構築したりする取り組みを発表し、新たなニューヨークへの発展を目指している。

デンマークでは大規模な交通ソリューション導入も

【画像】shutterstock
 ヨーロッパでは、デンマークのコペンハーゲンが大規模な取り組みを実施する。同市が導入する交通ソリューション「CITS」は、街のいたる場所に設置されたセンサーによって、車や自転車、歩行者などの状況をリアルタイムで把握できる。さらに、道路や公園などに設置されたスマート照明「DOLL」の実証実験も進める。

 「DOLL」とは、Denmark Outdoor Light Labの略語であり、街灯を全て再生可能エネルギーによって運用するプロジェクトである。グリーン化や省エネを促進することを目的に、コペンハーゲン西部のアルバッツが実証実験の地となっている。アルバッツには、デンマークの企業が開発した最先端の照明の数多くが集約されており、具体的には自動車の走行に合わせて周辺の街灯が自動的に点灯・消灯する照明技術のテストなどが行われている。

スマートシティーの先にある、「スーパーシティ」構想

 先ほどまで世界各地のスマートシティーに関する取り組みを述べてきたが、日本ではスマートシティーの次なるものとして「スーパーシティ」が注目されている。スマートシティーが分野別の施策が中心となっているのに対して、スーパーシティは街全体をデジタル化してデータを連携させる構想となる。2020年に国による経済特区について定めた「国家戦略特区法」が一部改正。「スーパーシティ型国家戦略特別区域」の公募が行われ、全国31の地方公共団体から応募があった。

 内閣府が公開した資料には、スーパーシティ構想の概要として、「移動」「支払い」「行政」「医療・介護」「教育」「エネルギー・水」などの項目を掲げる。これらの分野間でデータを連携することで、住民が抱える社会的課題の解決を目指すという。また、AIの活用によってビッグデータの解析を行うとともに、重要なデータに関しては安全な技術で集中管理を行うなどの施策を講じる。

 同資料には、具体的に要望があった事例として、地方都市で高齢者の通院対策が挙げられている。具体的には、免許を返納した高齢者の交通手段として、ボランティアドライバーを活用した市民タクシーを実現し、その決済には、地域共通の「ボランティアポイント」制度を導入。さらに、遠隔医療や介護情報のIT化を進め、それぞれのデータを市が提供するデータ連携基盤を利用して連携するという内容だ。

 この事例でいえばタクシー事業や遠隔医療など、スーパーシティの実現には各分野の規制改革が必須になる。しかし、個別のサービスをデジタル化するのではなく、複数の分野間でデータを連携させることで、より利便性が高く、課題解決につながるサービスを提供することが可能になる。

 データやAIを生活に活用していくことは、今後さらに重要性を増してくる。スマートシティーやスーパーシティ実現のための動きは、ますます加速していくことだろう。

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