Ideas
公開日: 2019.03.28
さぁ、未来を見える化しよう!シミュレーションから始める社会醸成
もしも●●が■■だったら…。コンピュータ・シミュレーションで「議論のキッカケ」作り。

コンピュータ・シミュレーションと聞いて、何をイメージするだろう?
台風の進路予想や、津波が発生したときの浸水予測、交通渋滞のシミュレーションなどは、よく見かける。このような社会問題に直結する内容や、スーパーコンピュータを使った大掛かりなシミュレーションもあれば、「ビールの”神泡”を作るには、1回で注ぐべきか、2回に分けて注ぐべきか」や、「ドレッシングをよく混ぜるには、ボトルを縦に振るべきか、回転させるように振るべきか」といった生活にすぐ役立ちそうなシミュレーションもある。
台風の進路予想や、津波が発生したときの浸水予測、交通渋滞のシミュレーションなどは、よく見かける。このような社会問題に直結する内容や、スーパーコンピュータを使った大掛かりなシミュレーションもあれば、「ビールの”神泡”を作るには、1回で注ぐべきか、2回に分けて注ぐべきか」や、「ドレッシングをよく混ぜるには、ボトルを縦に振るべきか、回転させるように振るべきか」といった生活にすぐ役立ちそうなシミュレーションもある。
ビールの気泡の細かさをシミュレーションした動画
「そんなこと、わざわざコンピュータでシミュレーションしなくても・・・」という声が聞こえてきそうだが、実際にシミュレーションを行ってみると予想とは違う結果になることがある。また、シミュレーション結果から、もっといい方法を考えるヒントが得られたりする。
現象や結果がわかっている身近なことほど、コンピュータでシミュレーションしてみると、意外な発見があるのかもしれない。
現象や結果がわかっている身近なことほど、コンピュータでシミュレーションしてみると、意外な発見があるのかもしれない。
身近なテーマで競い合う
2019年3月1日、「第19回 MASコンペティション」が開催された。構造計画研究所(以下、KKE)が開発したMAS(マルチエージェント・シミュレーション)システムを使ってコンピュータ・シミュレーションを行い、その研究成果を発表するイベントだ。KKEは、もともと建築物の構造設計からスタートした会社だが、「社会のいかなる問題にも対処できるようバラエティに富んだ専門家を集めた、工学を生業とした組織を作りたい」という会社設立時のビジョンから、社会シミュレーション事業を手掛けるようになったという。
MASは、エージェントを複数用いて、それぞれの動きが相互作用し合うことで全体にどんな影響を及ぼすのかを計算するシミュレーション手法である。エージェントとは、現実世界における「人間」や「生物」のような”個”の要素を指し、あらかじめ設定された各々の特徴やルールに応じて、自分の周囲の状況を認識しながら自律的に行動する。人間や組織の動きをシミュレーションするのに向いており、社会課題や経済の分野にも利用されている。
今回の研究発表でいうと、例えば教師の表情がクラスの雰囲気に及ぼす影響をシミュレーションした「特殊エージェントがクラスの雰囲気におよぼす影響分析」(愛知県立大学 五十嵐響さん)があった。教師が「真顔」「笑顔」「怒り」「恐れ」などの表情をするとき、生徒の行動がどう変化し、「授業への集中度」や「教師への信頼度」などがどう変わるかをシミュレーションした。
研究結果から、「笑顔」の表情が最もクラスの雰囲気を良くすることができ、「恐れ」の表情が最もクラスの雰囲気を良くできない、と結論づけた。いじめが起きにくいクラスにするには教師は笑顔で接する必要がある、とのガイドラインが得られたわけだ。
別の研究では、「子どもの自発的行動による避難時間短縮の検証」(福岡女子大学 澁田佳保里さん)も興味深い。自然災害が発生した際に、どうすれば子どもが早く避難できるかシミュレーションしたもので、子どもの年齢別に行動パターンを変えて、自発的な行動を加えた避難モデルを作ってシミュレーションした。その結果、年上の子どもが年下の子どもと一緒に避難したり、声かけをして連れて行ったりすることで避難完了までの時間が大幅に短縮できることがわかった。日頃から避難訓練などを通して、子ども達が避難時に主体的な行動をとるよう意識させることで、避難誘導を効率化できるわけだ。
MASは、エージェントを複数用いて、それぞれの動きが相互作用し合うことで全体にどんな影響を及ぼすのかを計算するシミュレーション手法である。エージェントとは、現実世界における「人間」や「生物」のような”個”の要素を指し、あらかじめ設定された各々の特徴やルールに応じて、自分の周囲の状況を認識しながら自律的に行動する。人間や組織の動きをシミュレーションするのに向いており、社会課題や経済の分野にも利用されている。
今回の研究発表でいうと、例えば教師の表情がクラスの雰囲気に及ぼす影響をシミュレーションした「特殊エージェントがクラスの雰囲気におよぼす影響分析」(愛知県立大学 五十嵐響さん)があった。教師が「真顔」「笑顔」「怒り」「恐れ」などの表情をするとき、生徒の行動がどう変化し、「授業への集中度」や「教師への信頼度」などがどう変わるかをシミュレーションした。
研究結果から、「笑顔」の表情が最もクラスの雰囲気を良くすることができ、「恐れ」の表情が最もクラスの雰囲気を良くできない、と結論づけた。いじめが起きにくいクラスにするには教師は笑顔で接する必要がある、とのガイドラインが得られたわけだ。
別の研究では、「子どもの自発的行動による避難時間短縮の検証」(福岡女子大学 澁田佳保里さん)も興味深い。自然災害が発生した際に、どうすれば子どもが早く避難できるかシミュレーションしたもので、子どもの年齢別に行動パターンを変えて、自発的な行動を加えた避難モデルを作ってシミュレーションした。その結果、年上の子どもが年下の子どもと一緒に避難したり、声かけをして連れて行ったりすることで避難完了までの時間が大幅に短縮できることがわかった。日頃から避難訓練などを通して、子ども達が避難時に主体的な行動をとるよう意識させることで、避難誘導を効率化できるわけだ。