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Ideas 公開日: 2019.01.23

300人に聞きました「AIやロボットにあなたの仕事は奪われる? 」

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通信教育のユーキャンが調査を実施。世の中の業務(仕事)の33.2%がAIやロボットなどのテクノロジーに「代替される」。

 「10年後、あなたの仕事はAI(人工知能)やロボットに代替されるか?」と問われたら、あなたはどう回答するだろうか。AIやロボットの活用が広がりを見せる中、たびたび「人間の仕事が奪われるのでは」といった不安の声がメディアなどで取り上げられる。家庭の中でもAIが搭載された家電が自動で調理や掃除、空調制御を行うなど、人がする作業が少しずつ減ってきているのは肌で感じることができる。

 通信教育を手がけるユーキャンは、20代から40代のビジネスパーソン310名(男性159人、女性151人)を対象に実施した「AIやロボットによる仕事代替の影響と備えておきたいスキルに関する意識調査」の結果を発表した。これによると、10年後、世の中の業務(仕事)の33.2%がAIやロボットなどのテクノロジーに「代替される」と考えられていることがわかった(図1)。
 一方で、自身の日々の業務については、AIやロボットに「代替される」と回答した人が36.8%、「代替されない」と回答した人が40.0%だった(図2)。代替されると回答した人に「自身の業務の何%が代替されるか」を聞いたところ、21%~30%という意見が最多ではあるものの、かなりばらつきがあった(図3)。一部の業務は代替できるものの、「完全に仕事を奪われる」と認識している人は少ないようだ。
 「10年後、AIやロボットの普及によって自身の給与に変化があるか」という問いには、現在の給与より「増えている」と答えた人が16.1%、「減っている」と答えた人が28.7%、「変化なし」と答えた人が33.2%だった。給与が増えると予想する人は少ないものの、AIやロボットによる仕事の代替に「期待している」と答えた人は51.0%に上る。特に管理職は、回答者全員が「期待している」と回答したという。

 期待する理由は、「人間がすべき仕事に集中できるから(38.0%)」、「ワークライフバランスの充実(28.5%)」、「ヒューマンエラーを減らすことができるから(26.6%)」などが上位となった(図4)。不安を感じる理由は、「人間の仕事が奪われ失業者が増えるから(40.0%)」、「自分の仕事がなくなる恐れがあるから(36.8%)」という仕事そのものがなくなる不安が大きく、「必ずしも商品・サービスの品質が保証されるものではないから(26.3%)」や「故障や異常のリスクが高く、臨機応変に対応できないから(16.8%)」という仕事の”質”に対する不安を上回った(図5)。
 AIやロボットに代替されないスキルを「持っている」と答えた人は38.7%で、「持っていない」の34.2%をやや上回った。「持っている」と回答した人の職種は、「管理職(71.4%)」が最も多く、次いで「専門・技術職(58.4%)」、「販売職(40.0%)」となった。「身につけておきたいスキルは?」という問いには、「専門資格(28.1%)」が最多となったが、それ以外は「実行力(24.2%)」、「論理的思考力(23.9%)」、「課題を見つける洞察力(23.2%)」といった内面的な”スキル”ばかり並ぶのが興味深い(図6)。
 今回の調査結果を踏まえて、ロボット工学者で大阪大学の石黒浩教授は「ロボットや新しい技術の発展に対し、不安に思うのは当然。技術の発展には良い面と悪い面があり、良い面を正しく理解すればその技術を使いたいと思うようになる。とにかく不安を解消したいという方は、ロボットについて学ぶしかない。ロボットの中身を知れば何が不安なのかがわかり、何をしていればロボットに勝てるかも判断できるはず」とコメント。また、「人が身につけるべきスキルは、コミュニケーション力やカウンセリング力だと思う。カウンセリングのような人と心を通わせるような仕事はこれからも人間のすべき仕事だし、どんな時も不測の事態に対応できるのは人間だけ。ロボットはあくまで道具。上手く活用することで新しい仕事も生まれてくるだろう」とした。

一部の職種では予測が現実に

 今回の調査と同様の研究はこれまでにも行われてきた。中でも、2015年12月に野村総合研究所とオックスフォード大学が行った共同研究は話題になった。日本国内601種類の職業について、それぞれAIやロボット等で代替される確率を試算。10~20年後に日本の労働人口の約49%が就いている職業が代替可能とする結果を発表したのだ。

 当時のレポートで、自動化が可能になる確率が99.7%以上として挙げられたのが、電車運転士、経理事務員、検針員、一般事務員、包装作業員、路線バス運転者、積卸作業員、こん包工(輸送向けに荷造りを行う専門職)、レジ係、製本作業員だった(図7)。

 発表からおよそ3年。JR山手線や路線バスは自動運転の実証実験を開始したし、検針を自動化するためのスマートメーター設置も始まった。衣料品店やスーパーマーケットのセルフレジも増えたし、会計ソフトによって作業の一部が自動化されるなど、すでに予測が現実のものとなりつつある。ここに挙がっていない職種でも、受付や案内係、倉庫内の搬送、検品作業、金融機関での各種審査などはテクノロジーによる代替が進んでいるし、先日テレビドラマの題材にもなった農業用の無人ロボットも導入されつつある。
 このとき「自動化可能性が最も低い職業」として挙げられたのは、医師や作業療法士、カウンセラー、教員、メイクアップアーティストなどの「人と密に関わる仕事」だった。つまり、コンピューターが比較的得意としている情報の保管や処理に関連する仕事や、単調な作業はAIやロボットが代替しやすく、創造性や柔軟なコミュニケーションが必要な「非定型」の仕事は代替されにくい。

 例えば、介護の現場において食事や入浴の介助をロボットが支援できるようになれば、身体的な負担が軽減し、カウンセリングなどの精神的なサポートを提供する余裕が生まれる。医師の仕事も同様に、画像や数値データを基にしたAIによる診断や、カプセルを飲み込めば病気を発見・治療してくれるような技術が登場したとしても、患者の不調と向き合う本質的な仕事はなくならないだろう。
 ちなみに、筆者の仕事(フリーライター)は「代替可能性が低い」職業に分類されていた。一安心と言いたいところだが、「代替される部分は多い」というのが正直な認識だ。実際、日本経済新聞ではAI記者がすでにデビューしており、企業決算のニュース速報を”執筆”している。

 現在はまだ、決算資料のような定型的な文章をベースにしたニュースを配信しているが、対談記事や新製品ニュースなどはAI記者が大部分を執筆できるようになるだろう。人間にしか書けない記事とはなにか。これからの時代、どんな仕事に従事していても「人間らしさ」と向き合うことが不可欠となりそうだ。


森元 美稀


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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