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Ideas 公開日: 2022.06.20

生体認証がもたらすイノベーションとは? 12業界への応用事例と展望

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 生体認証(バイオメトリクス)市場の伸びが著しい。グローバルインフォメーションの調査によると、2021年から2026年にかけての年平均成長率は16.3%、約1兆円の市場になる見込みと予測されている。これからのビジネスにおける生体認証技術の概観を示したい。

あなたの体臭もデータになる……生体認証技術12種類を解説

【画像】Shutterstock
 生体認証には大きく分けて12種類ものバリエーションがある。以下、それぞれの特徴やビジネスでの応用ケースを紹介する。

 指紋認証はパソコンやスマートフォンなど、身近に使われている代表的な生体認証技術だ。他の生体認証よりも歴史が長いこともあって技術が進歩している。それゆえに、低コストで利用できる点が大きなメリットだ。掌紋認証は手のひらの形で認証できる技術だ。指紋認証のように必ずしもデバイスに手のひらをタッチする必要はなく、離れた位置からでも認証可能になっている。静脈認証は血管の形状などで個人を識別できる認証技術で、精度の高さゆえに銀行のATMなどでも利用されている。手の指をかざして利用できるものが多い。体内の情報を利用するので、偽装しにくい。

 目の動作から判断する虹彩認証もよく利用されている。目の動きは偽装できないため、安全性も非常に高い。運転免許証やパスポート、国民IDなどの認証にも利用されるほどだ。眼球血管認証は目の中にある毛細血管で個人を識別する認証技術だ。利用するのにスマートフォンでも事足りる手軽さと、コストの安さがメリットだ。

 顔認証も代表的な生体認証技術としてよく利用されている。その名の通り、口や鼻、目などのパーツや顔の輪郭などから個人を識別する。声から発せられる周波数を判断基準にする音声認証は、風邪をひいていたりすると適切に声を認識できない点が欠点だ。しかし、眼球血管認証と同様にスマートフォンや通話で簡単に認証できるため、応用範囲は広い。耳音響認証は、外耳道の形状による音の反射で個人を識別する手法だ。イヤホンを着けている間、認証されている相手にだけ音声コミュニケーションを届けられる。耳介(耳形)認証はその名の通り、耳の形から判断して認証できる。現状としては犯罪捜査などで利用されることがほとんどだ。

 DNA認証では遺伝子から個人を識別する。人の髪の毛や爪、表皮などを使う。認証精度は非常に高いが、認証までに時間がかかる。行動認証は歩行や筆跡、まばたきの癖などから個人を識別する技術だ。文章を書く癖は第三者には真似できないため、筆跡で個人を識別する手法はすでに広く使われている。「サイン」として知られているものだ。体臭認証という技術もあるが、この手法はまだ研究段階だ。実用化されても精度が低いため、他の技術とあわせて利用されることが見込まれている。

ビジネスでの利用用途は3種類に大別される

【画像】Shutterstock
 生体認証技術のビジネス上の利用用途は大きく「セキュリティー」、「業務効率化」、「セールス・マーケティング」の3種類に大別されるだろう。

 セキュリティーについては言うまでもない。指紋認証や顔認証などはすでに多くのビジネスでセキュリティーのために利用されている。IoTデバイスが今後も増えていくことが見込まれている現状にあっては、生体認証によるセキュリティー管理はより重要性を増していくだろう。

 業務効率化ツールとしても生体認証が使える。上述したが、例えば認証された個人にのみ業務で必要な情報を送受信したりする方法がある。これで工場の作業現場やイベント現場などでは、わざわざ人対人でコミュニケーションをする必要がなくなり、業務効率化が図れる、というわけだ。

 意外と知られていないが、生体認証はセールス・マーケティング用途にも使える。例えば、店舗に入店する際に顔認証を利用すると、実店舗に来店した顧客のデータがたまっていく。そうした顧客に対してアプリやシステムを通じてポイントを付与したり、サンキューメールなどを送付したりすることでよりきめ細やかなセールス・マーケティングが可能になるのだ。

“顔パス”でチェックインもスムーズに。 12業界・職種での事例と期待

 では、実際、生体認証技術はどのように利用されているのだろうか。以下、警察、ヘルスケア、小売、飲食、ホテル、広告、金融、航空、自動車、教育、家電、スポーツの12業界・職種別での利用事例や展望を紹介していきたい。

 まず、すでに広く活用されているのは、警察やヘルスケア業界だ。生体認証技術が最も必要とされるのは警察だろう。技術分野で世界的権威のあるアメリカのカーネギーメロン大は、顔認証技術をさらに進歩させ、顔を隠している人物でも顔つきを想像できる認証技術の特許を取得し、実際に警察で利用されている。顔認証技術だけでなく、あらゆる認証技術が警察には必要とされるはずだ。ヘルスケア業界では、生体認証技術が業務効率化の文脈で利用されることが多い。病院やクリニックなどの入り口での顔認証がよくある事例だ。Googleは顔認証と心拍数の分析を組み合わせ、患者のモニタリングをより効果的にするソリューションを開発した。

 マーケティングでの活用が目立つのが小売、飲食、ホテル業界だ。小売業界では、店舗に入る際に顔認証で取得した顧客データに対して、メールや広告でマーケティングをかけられる。その上、取得されたデータはビッグデータとして今後のマーケティングにも生かせるのだ。飲食業界では、支払いを顔認証だけで済ませられる飲食店も出てきている。顔認証で認識したリピーター顧客に対して特別割引クーポンを発行するなどの施策が展開可能だ。ホテル業界では、顔認証技術を利用すればスムーズにチェックインできる。また、顧客それぞれのデータをホテルスタッフがその場で参照することで、よりきめ細やかなサービス提供を実現させている。
【画像】Shutterstock
 伸び代が大きく、発展していく可能性が高いのが、広告、金融、航空業界だ。広告業界では、パソコンやスマートフォンに顔認証技術が標準搭載されるようになれば、顔認証で識別されたユーザーデータに応じて、インターネット広告を振り分けられるようになる。また、店舗にある商品を眺めている顧客を顔認証で識別し、データマーケティングに利用することも可能だ。金融業界での利用用途は多様で、ATMではすでに指静脈認証による顧客の認証がスタートしている。すでに、顔認証なども利用できるようになっていて、インターネットバンキングのログインも顔認証で実施できる。航空業界では、主に業務効率化の文脈で生体認証技術の活躍が期待されている。顔認証を利用すれば、チケットが不要になる。当然ながら、セキュリティーにも顔認証が利用されている。

 他にも、自動車、教育、家電、スポーツ業界にも注目が集まっている。自動車業界では、顔認証を車の鍵として利用する技術が開発されている。教育業界では、主にセキュリティー目的で生体認証技術が使われている。学校の出入りを顔認証で管理できるようになれば、より安全な学校生活が実現できる。また、出欠確認を顔認証ですることで、教師の負担も軽減される。すでに一部の学校では取り入れられている。

 家電業界のパソコンやスマートフォンなどにおいては、電子機器での指紋認証、顔認証などを利用したロック・アンロックの技術は、すでに多くの人に利用されている。しかしウエアラブル端末などでの利用用途はまだまだ開発途上だ。最後に、新型コロナウイルス感染症の拡大を経て、感染症対策に敏感になっているスポーツ業界では、イベント時に顔認証技術を利用して顧客を識別することで、顧客のセキュリティーとスタッフ側の業務効率化を両立している。また、集められた顧客の顔認証データはマーケティングにも利用できる。生体認証技術の利用法としての究極の形だ。

未来のトレンドは多要素認証。ワクワクする未来が待っている

【画像】Shutterstock
 生体認証に潜むリスクもある。顔認証や指紋認証にしても、ある人が被写体となって写っている高精細のHD画像から、その人の指紋や顔を再現することは現状でも可能なのだ。そうなると、やはりセキュリティーリスクに対して不安視する声もある。

 そんな中で注目されているのは多要素認証だ。いわゆる多要素認証は知識要素 (パスワードなど) や、所有要素(スマートフォンの認証通知、ユビキー型セキュリティーキーなど)、および固有要素(バイオメトリクス)のうち2つを組み合わせたものであり、認証の信頼度は向上する。

 指紋認証や顔認証などすでに市民権を得ている技術から、体臭認証のような発展途上の技術まで、生体認証技術は多様だ。IoT時代が本格化していく中で、新たな用途が開発されていくに違いない。ほぼ全ての業界が利用できるチャンスがある生体認証技術は、これからのビジネスパーソンの必須教養となるだろう。

 近い将来、手ぶらで財布やスマートフォンすら持たずに買い物や行政手続き、海外旅行にまで行けてしまう日がくるかもしれない。あなたしか持っていない固有の情報を組み合わせることで、もはや「認証」できないものはなくなる……、個人が最強のパスワードだからだ。

 そういう世の中になったとき、どんなサービスが必要になってくるだろうか。どんな仕組みをつくれば社会がより豊かになるのだろうか。それが次のビジネスチャンスになるはずだ。

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