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Ideas 公開日: 2019.03.20

顧客体験の未来、プラットフォーム化するリアル店舗

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Sansan Innovation Project 2019におけるDIGITALIST企画。「顧客体験プラットフォーム革命」の今と未来。

 2019年3月15日に開催したSansan主催の「Sansan Innovation Project 2019」。その中の一コマとして、ZippinのCEO(最高経営責任者)であるクリシュナ・モツクリ氏、ウォルマートジャパン/西友 バイスプレジデントCIO(最高情報責任者)白石卓也氏をゲストに迎え、未来の顧客体験についてセッションを行なった。司会はSansan執行役員CTO(最高技術責任者)の藤倉成太氏。デジタル技術を生かした未来の顧客体験としてどのようなものがあり得るのか、そのヒントを得る絶好の場となった(以下、敬称略)。

小売業界における顧客体験

藤倉氏 まず小売業界における現状の課題について、お二人のご意見をうかがってみたいと思います。

モツクリ氏 小売業界は、今とても苦しんでいると思います。マージンは薄いですし、様々なコストも上がってきているからです。

白石氏 Eコマースの世界では、顧客体験という観点から考えると、もうある程度はやり尽くしてしまったのかなと感じます。その中で、今度はリアルな店舗での顧客体験に、注目が集まっている。お客様がお店の中でどう行動しているのか、例えばどういう風に棚の前を通ったのか、どういった順番で品物を手に取ったのか、そういったことが関心を集めていると感じますね。Webでいうと「コンバージョン率をどう上げていくか」という課題ですが、それをリアルな店舗がようやく考え出したということでしょう。この後も、この流れは加速していくだろうと思います。

デジタル時代に必要な顧客との向き合い方

藤倉氏 お二人ともそれぞれの観点から、リアルな店舗の課題について考えているわけですね。これからの時代、どんな体験をユーザーに届けていきたいと思っていますか?

モツクリ氏 まずはリアルな店舗で、レジを待たなければいけない課題について解決したいと考えています。この課題を解決することは、顧客にとっても店舗にとってもメリットがあるでしょう。現在、リアルな店舗では25%の売り上げが失われていると言われています。棚の前に立っても、欲しいものが品切れで売っていない。こういった状況をなくすために、すべての商品をトラッキングし、在庫がすぐに補充されるような店舗を作りたいと考えています。また、クリックすることで商品がある棚までユーザーを連れて行くといったような体験も、提供していきたいと考えています。

白石氏 ウォルマートも、テクノロジーは使い倒していきたいと考えています。一方で、リアルな店舗に行く楽しみを追求していきたいとも思っているんです。 そこで必要になってくるのは、やはり接客ですよね。何か新しい発見や喜びがあったり、コミュニケーションがあったり。テクノロジーを使い倒しながらも、接客やお客様との触れ合いも大切にしていきたいと思っています。このあたりは、Zippinさんはどうお考えになっていますか?

モツクリ氏 白石さんのご意見ももっともだと感じます。Zippinも、決して無人店舗を作ろうとしているわけではありません。商品を勧めてみたり、商品があるところに誘導したり、店員さんによって顧客体験が高まるということはあると思います。

白石氏 面白いなと感じるのは、テクノロジーの部分からスタートして作った店舗と、私たちのようなリアルから始まってテクノロジーを取り入れるようになった店舗と、最終的に同じゴールにたどり着きそうだということですね。

テクノロジーとデータがどのように顧客体験を進化させるか

藤倉氏 テクノロジーやデータがどのような顧客体験を創造していくか、未来のビジョンのようなものはありますか?

モツクリ氏 可能性は無限です。例えばEコマースの世界では、カートに入れた商品をやっぱり気が変わってキャンセルした場合、「購入まで至らなかった」というデータが残ります。このデータは現在、リアルな店舗では失われてしまっています。しかし今後、リアルな店舗でもEコマースの世界と同じようなデータを得られるようになっていくでしょう。こういう未来は、すぐそこまで来ていると思います。

白石氏 顧客体験には2つあると思うんです。キャッシュレスで決済できることやレジに並ばなくてもいいこと、それも一つの顧客体験です。もう一つ重要なのは、より俯瞰した、お店に来る前の段階の勝負です。お店に来なかった人に来てもらうにはどうしたらいいか、お店の外にいるお客様にどうアプローチするのか。お店に来ていただいたお客様にはできるだけ楽しい体験を提供し、買い物が終わったお客様にもフォローを入れる。買い物をする前と後のお客様とも、連携できたらいいなと考えています。より俯瞰した視点から、顧客体験を作っていきたいです。

モツクリ氏 先ほどの話に追加するのですが、小売業がメーカーさんと連携していくのもいいですよね。ケチャップ、マスタード、シリアル、どの商品にどれだけの売り上げがあったのか。小売業とメーカーで一緒になってデータを賢く使えるようになれば、様々なコストを下げられるかもしれません。

白石氏 メーカーさんは、店舗の中のお客様の行動が知りたいはずです。ただCMを打つだけでなく、どういった広告が効果的なのかとか、お客様がお店の中でどう反応しているのかなど、メーカーさんはすごく知りたいと思うんです。小売業とメーカーさんでデータを連携すれば、顧客体験を向上させられるでしょうね。
藤倉氏 お二人の話を聞いていて、リアルな店舗はプラットフォームとしての役割が強くなっていくのかなと感じました。

モツクリ氏 その通りだと思います。開発者にはイノベーティブに、革新的なアイデアを出してもらいたいです。今は、商品を補充しなければならないとき、従業員が店の裏から新しい商品を持ってきて棚に並べます。だけど今後こうした時間は、テクノロジーによって節約されていくでしょう。

白石氏 「顧客体験」ということで今日は「顧客」に話を絞っていますが、テクノロジーの導入によって、きっと従業員の働き方も変わってきますよね。

藤倉氏 リアルな店舗に対して、Eコマースは今後どのようになっていくと思いますか?

モツクリ氏 リアルな店舗とEコマースは、今後も協業していくでしょう。今この場所ですぐに必要だという場合は、やはりリアルな店舗が強いです。一方で、大きなマットなどは店舗に置くとコストが高くなってしまうので、Eコマース向きです。リアルな店舗でも在庫やカタログがアプリで見られるようになると思いますし、リアルな店舗とEコマースでの買い物の体験は、混ざっていくようになるかもしれませんね。

白石氏 私も似たような考えです。リアルな店舗とEコマースの境界線は、今後なくなっていくのではないかと思います。どちらかでしか買い物をしないという人は減っていくのではないでしょうか。リアルな店舗で実物を見て、インターネットで注文し、重いので配達してもらうとか、そういった使い方が増えていきそうですよね。自分がリアルな店舗で買い物をしているのか、Eコマースのサイトで買い物をしているのか、あまり気にしないようになるかもしれません。どんどん垣根はなくなっていくんじゃないかなと。
ウォルマートジャパン/西友 バイスプレジデントCIO(最高情報責任者)白石卓也氏
藤倉氏 Eコマースのことを考えたときに、デリバリーはまだ課題をたくさん抱えており、難しいと感じるのですがいかがですか?

モツクリ氏 デリバリーはコストが高く、難しい問題です。常にコストを下げようと努力はしています。

白石氏 デリバリーについては、いまだに有効な解決策がありません。ドローンの導入も、おそらくまだまだ先でしょう。今すぐにできることは、なるべくお客様にとって利便性が高いところでピックアップできるようにすることです。たとえば中国のアリババのスーパーなどは、店舗の半分はデリバリーセンターです。中国はまだ人件費が安いのでそういったことも可能ですが、日本のように人件費が高い国では、まだまだデリバリーの問題に解はありません。
司会を務めたSansan執行役員CTO(最高技術責任者)の藤倉成太氏

本来の購買に要らないものをなくす

藤倉氏 最後に、今後の展望についてお伺いしたいと思います。

モツクリ氏 まだ我々は、小さなスタートアップです。資金調達をし、実は今、日本の小売業の方々が関心を寄せてくださっています。日本には人件費が高いという問題がありますが、我々がそれを解決できるのではないかと。

白石氏 我々は、ネットスーパービジネスに関しては日本でいちばん古くからやっており、歴史を持っています。これまで培ってきたネットスーパービジネスのノウハウ、またリアル店舗で培ったノウハウ、これらを合わせてより良い顧客体験を作っていきたいと思っています。

藤倉氏 お二人とも必ずしも無人店舗を目指しているわけではなく、レジに並んで待つなど、本来の購買に不必要なことを減らしていきたいということですよね。

モツクリ氏 その通りです。レジに並ばなくてもいい店舗を増やしたいですね。さらにたくさんの店舗で得たデータを、メーカーさん側にも提供してお役に立ちたいと考えています。

白石氏 我々小売業は、いちばんお客様の行動が身近にわかる業種です。持っているデータには、ものすごい価値があると思っています。このデータを生かして、お客様にも還元しますし、マネタイズもしていきたい。その方法を考えることが、我々にとってのチャレンジですね。

藤倉氏 お二人とも、本日はありがとうございました。


チェコ好き
(撮影:黒田 菜月)


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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