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Innovators 公開日: 2021.06.21

GoogleからパイオニアCDOへ。「DXという言葉は使わない」――老舗企業へ新しい風を吹き込む手腕

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 2019年に上場を廃止し、ファンド傘下に入った老舗企業パイオニア。創業83年の歴史を誇る大企業が変革期を迎えている。そんな中に自ら飛び込んだのが、今回話を伺うパイオニアのモビリティサービスカンパニーCDO(最高デジタル責任者)の石戸亮氏だ。

 同氏はサイバーエージェントやGoogle、セールスフォース・ドットコムなど名だたるIT企業でマーケティングや営業職に従事し、あるいは取締役として事業立ち上げを経験してきた。

 そんな石戸氏がなぜ「老舗メーカー」へ入社し、CDOに就任したのか。これまで培ってきた経験を新天地でどのように注入してきたのか、入社から1年間を振り返ってもらった。

パイオニア復活の希望は膨大なモビリティー領域のデータ・アセット

 世代によってはパイオニアと聞くと音響機器メーカーのイメージが強い人もいるかもしれない。近年、同社を牽引してきた主力事業はカーナビなどのカーエレクトロニクス事業だ。『カロッツェリア』と聞いてピンとくる方もいるだろう。しかし自動車業界は「100年に一度の大変革の時代」迎え、インターネットとつながるコネクテッド化が進むなど単にカーナビというハードを売る時代ではなくなりつつあり、事業構造の変革は待ったなしの状況だ。

 その中で事業拡大に大きく貢献する可能性を秘めているのが「モビリティー分野の画像・動画データの活用です」と石戸氏は語る。

 「パイオニアは実は、良いデータと良い技術のアセット(資産)を持っているんです。これらを活用して今後、ビジネスモデルの転換を図っていきます。具体的には、製品などのモノを売り切るビジネスから、モノとコトを販売する、いわゆるリカーリング(継続利用してもらうことで利益を生む)ビジネスへとシフトしていく。特にBtoB領域のビジネスがここ5年ほどで急伸しており、BtoBの売上や利益比率を大きくしていく方針です」

 データとは、地図データやクルマのルートデータ、緯度経度のデータ、分かりやすい例は『Google マップ』だろう。あるいは通信型ドライブレコーダーの動画データも含まれる。

 「タクシーアプリやUber、出前館などの宅配サービスの裏側ではほとんど、GoogleのAPI(他社とソフトウエアの機能を共有できるようにするインターフェース)が使われています。

 Googleは地図データを持っているからこそ、ルートを表示し、到着時刻を予測するサービスを提供できるわけです。一方、パイオニアもこれらと同等のアセットを活用できる環境を持っている。つまり極論、同様のサービスを展開しようと思えば、できるんです。しかしせっかくいいアセットを持ちながら、これまではそれを十分に生かしきれていませんでした」

 「私がかつてGoogleに在籍していた頃、自分の乗るクルマで使っていたのはパイオニア製のカーナビでした。しかしなぜか、パイオニア製のカーナビよりスマホのGoogleマップのほうが使い勝手が良かった。“いったいなぜなんだ!?”と思ったのを覚えています」

老舗企業でCDOに求められた「ソフトウエアの“当たり前”の注入」

 石戸氏はGoogleやセールスフォース・ドットコムなどでの経験を通じて、IT業界にも精通している。その中で疑問に感じていたのが「人材流出の問題」だった。

 「IT企業にいた頃、メーカーなどの事業会社からどんどん人材がIT業界へ流入してくる時期がありました。本来、IT企業は事業会社のIT化を支援しているはずなのに、IT人材の流出を止められていない状況に疑問を感じていました。それで、逆の人材の流動性、つまりIT業界で経験を積んだ私のような人が逆に事業会社へ流れていく必要があるんじゃないかと考えたんです」

 少し体制を整えるだけでベンチャー企業数社分相当を立ち上げられるほどのアセットを大企業は持っているのに「もったいない」と感じていたという。そんな中、転職を考えるに当たり、こだわった点がいくつかあったそうだ。

 一つは、老舗の事業会社で、ファンドが入っていること。ファンドが入ることで旧経営層は退陣し刷新される。また、ファンドの傘下であれば結果を出すまでのタイムリミットがあり、危機感が生まれる。役員やキーパーソンと面談し、変革への本気度を感じたのもパイオニアを選んだ決め手だった。

 「経営層の都合でDX(デジタルトランスフォーメーション)の方針がコロコロと変わってしまう、表面上だけDXを導入して全く機能していない企業をこれまでたくさん見てきました。DXの責任者が部署異動した瞬間、プロジェクトが空中分解して無かったことになることもしょっちゅう。だから、ファンドが入って危機感を持っている企業を条件にし、合致したのがパイオニアでした」

 入社から1年。一般的な企業でのCDOは「DX推進部長」のような立ち位置で、新規事業を立ち上げたりITツールを導入したりする役割を担うケースが多い。しかし石戸氏の場合、始めからCDOの肩書で入社したわけではなかった。当初はマーケティングと営業の部門を強化する責任者として採用プロセスを進めていた。入社時には部下を持たず、特定の部署付でもなく、自由な立ち位置で入社。半年間はさまざまなプロジェクトやミーティングを通じて組織課題に応じて、自身の貢献領域を経営陣と話しながら、有機的に動いていた。
 「部署は関係なく人事や財務・経理などのキーパーソンと1on1面談を通じて100人ほど会いました。川越の工場へ出向き、海外のキーパーソンとも面談して話を聞いて。

 その際に意識したのは、“信頼残高”です。入社当初は“外から来た見た目の変な人”って言われていたので、とにかく信頼関係を築こうと。誰かメンバーが困っていたらすぐに助ける、あるいは人同士をつなぐ役割を買って出る。そうやって仲間だと思ってもらえるよう、馴染んでいく工夫を重ねました」

 パイオニアでは2010年代、事業が回復軌道に乗らない時期が続いて大きな構造改革が実行された。そのことから自信を失っている社員もおり、外部から来た石戸氏のような人間の言うことを鵜呑みにし過ぎてしまうこともあったという。その点にも気を配った。

 また、リカーリングビジネスへ転換していくに当たり、これまでの「ソフトウエア」の現場では当たり前だった流儀が通じない。大改革が必要だった。

 「パイオニアは今日まで、ソフトウエア単体でグロースさせた経験が少ないんです。アプリを作ったことはあっても、あくまでハードウエアのコントローラー、付属物。例えば一般的なベンチャーがアプリを作る際は、想定ユーザーにインタビューを行い、β版を作って実際に触ってもらい、その声を受けて改善して、またインタビューし、データを見て……というPDCAサイクルを回すのが当たり前です。しかしパイオニアの社員はユーザーインタビューやデータを見ながら、サービスをグロースさせ続けるという文化が当たり前になっているわけではなく、直接、顧客と接しながら製品開発するノウハウも持っていませんでした」
 カーナビ製品の販売先は主にOEM供給する自動車メーカーと、カー用品店のオートバックスなど小売店だ。つまり、直接ユーザーと接した経験がなかったのだ。

 「例えば、物流系のBtoCサービスを企画しているのですが、筑波や遠方の運送会社に出向いて、実際にトラックドライバーや運送会社の経営者に話を聞いたり、Twitterでアクティブに発信しているトラックドライバーにコンタクトして電話でインタビューさせてもらったりしていると、社内のメンバーから驚かれるんですよ。“石戸さんが自ら行くものなんですか”と。私のこれまでの感覚では普通です。本気で良いサービスを作り、成長させていくなら、こうした現場の仕事もたくさんやりながら、顧客起点でサービスが本当に求められているかというのを泥臭く進める」

モビリティー社会で役立つ「動画データ活用」に活路

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