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Innovators 公開日: 2018.10.09

[アクサ生命保険]お客様の健康を守る“パートナー“へ(前編) デジタル技術あってこその挑戦

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経済的保障から健康維持支援へ、事業転換を目指す生命保険会社のデジタル変革。

「米中摩擦のおかげで、今期は業績が大幅に落ち込みそうだ」
「たび重なる自然災害の影響で、資材費が高騰し、利益を圧迫している」
「顧客企業の業績が思わしくない。経費削減の影響を受け、うちも売り上げ減は免れない」

 こんな声が、あちこちから聞こえてくる。もちろん、ほかにも消費が活性化せず、売り上げが思わしくない、といったケースもある。大抵の企業は、このような外因が業績を大きく左右する。

 そんな中にあって、比較的、市場や景気の影響を受けにくい業種もある。一例が生命保険会社。「他の業種ほど、見込んでいた業績から大きくはずれてしまうことはない、少し変わった業種だ」。複数の生命保険会社を経験し、現在はアクサ生命保険で取締役 専務執行役チーフマーケティングオフィサー(CMO)を務める松田貴夫氏は、こう話す。

 実際、生命保険業界は、明治時代からほとんど変わらないビジネスモデルで、安定的な収益を上げ続けてきた。新商品の開発がないわけではないが、病気にかかったときや事故に遭ったとき、あるいは死亡したときの経済的な保障を提供する「ペイヤー」としての事業モデルが根幹にあることは変わらない。

 ただ、最近になって生命保険会社が、保険のあり方そのものに目を向け、顧客との違う向き合い方を模索し始めている。そこにあるのは、気づかないうちに時代や環境の変化に取り残されていってしまいかねないという危機感。顧客のライフスタイルやワークスタイル、考え方が変わっていくなかで、生命保険だけが変わらずに受け入れられ続けるはずがない。そういう想いだ。

 そこで取り組み始めているのがデジタル変革。今日明日の業績ではなく、将来のサービス提供に向けた布石としての変革である。

 「ペイヤーから、パートナーへ」。こうしたビジョンを掲げるアクサ生命は、デジタル技術の力を駆使することで、新しい生命保険会社、もっと言えば、新しいタイプのサービス企業に転身しようと考えている。そのためにアクサはグループレベルで米国シリコンバレーや上海にラボを開設したり、テクノロジーの先端企業やスタートアップとパートナー契約を結んだりと、デジタル技術活用のための研究や仕組みづくりに余念がない。

 デジタル変革といっても、狙いは製造業などが取り組むような、作業工程の見える化や、ムダの排除といったこととは違う。では、アクサ生命が求めるデジタル革命とはどんなものか。その先に、顧客にとってどんな存在になる絵を描いているのか。松田CMOに聞いた。(以下、松田氏談)

時代の変化に合わせて保険商品も進化すべき

 私はこれまで、三井生命保険、アメリカンファミリー生命保険など、いくつかの生命保険会社で、商品開発やマーケティングを経験してきました。その経験を通じて、今の保険のあり方について、このままでいいのだろうかという問題意識を持つようになりました。

 「加入を勧めるときは一生懸命。保険料を払い続けて、病気のときや死亡時には保険金をもらえるけれど、契約や更新のとき以外は、ほぼほったらかし」。生命保険には、多くの人が、そんなイメージを持っているのではないでしょうか。

 将来お客様の身に降りかかるかもしれないリスクを予想し、そのリスクに遭遇して困ったときに経済的な保障を行うペイヤー。それが、そもそもの生命保険会社の立場です。

 例えば「40歳・男性」なら、何年か先にがんや脳梗塞、心筋梗塞といった病気を患うかもしれない。病気になれば治療費がかかるし、障害が残ればケアの費用もかかる。運悪く死亡することを考えると、残された家族の生活も心配。そうした事態に備えて保険に加入し、病気になったときに保険金や給付金を受け取れるようにしておけば、将来に向けた経済的な不安がやわらぐかもしれません。

 ただ実際には、40歳・男性だからといって、誰もが等しくがんや脳梗塞にかかるわけではありません。若くして患うこともあれば、高齢になってもこうした病気とは無縁のケースもあります。つまり、個体差があるわけです。

 いまはネットが浸透し、気になることはいつでも自分の手で調べられます。それだけ、病気あるいはリスクについて、お客様のリテラシーが向上しているわけです。ひとくくりに「40歳、男性」といっても、仕事も健康状態も、住んでいる場所も、人生の目標や夢も、全部違う。個人のリスクは個体差が大きすぎて、とてもじゃないけれど、年齢と性別のみでは、もはや区別できません。

「ペイヤーから、パートナーへ」

 さらに最近は、遺伝子検査により、自分がどの病気に、どの程度かかりやすいのかを見える化できるようになってきました。同じ40歳・男性でも、相対的にがんにかかりやすい体質かどうかがわかります。可能性が高いお客様と、それほど高くないお客様に、一様にがん保険を進めても意味がない。

 そんなときに、リスクマネージメントの専門家であるはずの人間が、「40歳、男性」ですから、といっていたのでは信用してもらえません。いずれ、お客様の気持ちが離れていってしまいます。

 では、どうしたらよいか。改めてペイヤーの仕事について考えてみると、それは、お客様が困らないようにサポートするということにほかなりません。お客様が健康な状態で長生きし、人生を全うするための手伝いをする立場から、健康を保ち、経済的にも満たされた状態でいられるようアドバイスを送り続ける存在。それが本来のあるべき姿ではないか。これが、私が抱くようになった想いです。

 これと同じ考えに基づいているのが、アクサグループが掲げている「Payer to Partner」というビジョンです。このパートナーとしてお客様に寄り添い、貢献できる商品やサービスを開発し、提供したい。そんな想いを持って、アクサ生命で働くようになりました。

リスク管理の専門性へのニーズが変わってきた

 では、パートナーになるには、何を変え、具体的に何をしていったらいいか。そこにデジタル技術をどのように役立てられるか。その答えは、私たちがお客様にどのような体験を提供するかによって決まります。

 Payer to Partnerのビジョンに基づくと、私たちが重視すべきポイントは3つあります。(1)スピーディなサービス、(2)わかりやすい説明、そして(3)保険会社のリスクマネージャーとしての専門性とホスピタリティです。

 このうち、スピードとわかりやすさは、ベーシックラインです。本来は、それがあって当たり前。それがなければお客様が離れていくものだと考えています。そのベースがあったうえで、高い専門性とホスピタリティを提供することで、お客様が進んで私たちの商品/サービスを選んでくれるようになるわけです。

 問題は、この専門性の捉え方が従来とは違ってきていることです。ペイヤーとしての生命保険会社にとっての専門性は、将来のリスクを徹底的に分析して、経済的にイーブンな関係を作ることでした。例えば将来的に病気などのために100万円が必要になるリスクと、今の保険料の支払いの関係をイーブンにする、というイメージです。

 これに対してパートナーとしての専門性は、その100万円のリスクが現実のものとならないようにするための方法を提案できることです。人によってリスクに違いがあることも理解し、そのうえで必要な方法を考える必要があります。

 お客様のリスクに対するリテラシーは高まりましたが、一方で、ネットには各種の情報があふれていて、お客様はどの情報が正しいのか判断が難しくなっています。それをきちんと評価し、適切な方法を提案することこそが、パートナーとしての役割になるわけです。

 例えば、脳梗塞や心筋梗塞になったら、こんな再発予防策がある、がんになったらこんな策がある、糖尿病になったらこんな策があるなど、比較的かかる可能性が高い病気の治療を支援するプログラムを作ったとしましょう。そのときは、きっと「年に2万円払ってプログラムを継続的に利用してもらったら、万が一大きな病気になったときには、それに対応する1件20万円程度の専門サービスを受けてもらえるようにします」といったサービスが成り立ちます。ペイヤーとして保険金をお支払いするわけではありませんが、代わりに専門サービスを提供するわけです。これって、一種の保険商品ですよね。

 要介護状態になったときにでも、ただお金をお支払いしても困ってしまうケースがあります。それよりは、支援サービスをコミットメントするほうがいいという場面は少なくないはずです。そういうものでないと役に立たない時代になっていくのではないかと思います。

後編へつづく)


河井 保博=日経BP総研
(撮影:湯浅 亨)


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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