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公開日: 2018.09.13
Amazonに負けるな、AIで“攻め”のリアル店舗──リテールAI研究会 代表理事 田中雄策氏
オンラインショッピング大手に負けない店舗を作るべく、日本の小売業が挑むAI活用。
「レジなしで決済できる無人店舗」として世界各国のメディアから注目を集めている「Amazon Go」が、2018年1月に米ワシントン州シアトルで一般公開された。はたして、無人店舗はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店舗が目指す最終形態なのだろうか?
ネットショッピングの普及によって、小売店舗で買い物をする機会が減ったと感じる消費者は少なくないだろう。しかし、人はすべての買い物をネットショッピングで済ませたいわけではない。食品や嗜好品などは、陳列された商品を見ながら手に取って確認してから買いたいことも多い。消費者が小売店舗ではなくネットショッピングでの買い物を選択する理由は、単に価格が安いからだけでなく、「24時間いつでもどこでも買い物できる」「品揃えが豊富」「商品を直接自宅に届けてくれる」「決済が簡単」などだろう。
ただ小売店舗でも、工夫次第で対抗手段は打ち出せる。もちろん、ネットショッピング最大の特徴である「いつでもどこでも買い物できる」には対抗すべくもないが、代わりに、「新鮮な生鮮品をじかに目で見て選べる」「試食や試着などその場で試す機会がある」「購入するものを決めないまま店舗を訪れ、欲しくなったものを買える」といった、リアル店舗ならではの強みがある。重要なのは、これらの強みを生かしつつ、ネットショッピング以上の買い物体験ができる場を作ること。そのために必要なのがAI活用だ。リアル小売店舗でのAI活用方法を調査・研究するリテールAI研究会の田中雄策理事長に、その取り組みについて聞いた。
ネットショッピングの普及によって、小売店舗で買い物をする機会が減ったと感じる消費者は少なくないだろう。しかし、人はすべての買い物をネットショッピングで済ませたいわけではない。食品や嗜好品などは、陳列された商品を見ながら手に取って確認してから買いたいことも多い。消費者が小売店舗ではなくネットショッピングでの買い物を選択する理由は、単に価格が安いからだけでなく、「24時間いつでもどこでも買い物できる」「品揃えが豊富」「商品を直接自宅に届けてくれる」「決済が簡単」などだろう。
ただ小売店舗でも、工夫次第で対抗手段は打ち出せる。もちろん、ネットショッピング最大の特徴である「いつでもどこでも買い物できる」には対抗すべくもないが、代わりに、「新鮮な生鮮品をじかに目で見て選べる」「試食や試着などその場で試す機会がある」「購入するものを決めないまま店舗を訪れ、欲しくなったものを買える」といった、リアル店舗ならではの強みがある。重要なのは、これらの強みを生かしつつ、ネットショッピング以上の買い物体験ができる場を作ること。そのために必要なのがAI活用だ。リアル小売店舗でのAI活用方法を調査・研究するリテールAI研究会の田中雄策理事長に、その取り組みについて聞いた。
── リテールAI研究会を立ち上げた経緯を教えてください。
よくご存じだと思いますが、2016年にAmazon Goが登場しました。これは、日本の小売業界に大きな衝撃を与えました。これがきっかけになって、小売業界でAIへの関心が急速に高まりました。こうした流れの中で、店舗向け機器のメーカーやITベンダーを中心に、小売業に関わる人間が集まり、AIなど最新のテクノロジーに関する情報を共有できる場を作ろうという話になりました。
通常はお互い切磋琢磨しているライバル同士ではありますが、Amazon Goのような店舗が進出してくるかもしれないとなったとき、それぞれが連携しなければ対抗できないという危機感を抱いたのです。それで、小売店舗向けの機器を製造・販売しているメーカーを中心に、一部の小売事業者を巻き込みながら活動を始めました。
活動としては、月に1回集まって、さまざまな技術を持っているベンチャー企業から最新の話題や事例などについて情報共有しています。さらに、これらの企業からの技術協力を得て、AIを活用した店舗づくりの実証実験も行っています。
── 小売業でのAI活用というと、具体的にどのようなものが挙げられますか?
リテール分野におけるAI活用は、大きく3つのカテゴリーに分けられます。まずは店舗におけるAI活用で、主にショッパーマーケティング(商品を買ってもらうための適時適切な仕掛け)に使います。次は、商品陳列などでのカテゴリーマネジメント(商品カテゴリーを戦略的事業単位として管理する手法)での活用です。そして3つめは卸売業におけるAI活用で、サプライチェーンマネジメントが関わってきます。
店舗でのAI活用では、大手チェーン店による店舗の無人化が注目されていますが、小規模商店でもAIを活用してさまざまな効果を上げている事例があります。例えば伊勢神宮の参道にある創業100年の老舗飲食店では、AIでメニューの需要予測を行い、食材の無駄をなくしたり従業員の働き方の効率化を図っています。また、福岡県のクリーニング店では、経営者自らがオープンソフトでシステムを組み、AIによる画像認識を活用した無人店舗を作ろうとしてます。
商品の仕入れ・陳列では、AIを活用したカテゴリーマネジメントによって、似通った商品のアイテムを絞り、棚の有効活用につなげられます。空いた棚のスペースにサイネージを設置して情報を流したり、ストックを置くスペースを確保して欠品を防ぐなどいろいろな効率化が考えられます。
よくご存じだと思いますが、2016年にAmazon Goが登場しました。これは、日本の小売業界に大きな衝撃を与えました。これがきっかけになって、小売業界でAIへの関心が急速に高まりました。こうした流れの中で、店舗向け機器のメーカーやITベンダーを中心に、小売業に関わる人間が集まり、AIなど最新のテクノロジーに関する情報を共有できる場を作ろうという話になりました。
通常はお互い切磋琢磨しているライバル同士ではありますが、Amazon Goのような店舗が進出してくるかもしれないとなったとき、それぞれが連携しなければ対抗できないという危機感を抱いたのです。それで、小売店舗向けの機器を製造・販売しているメーカーを中心に、一部の小売事業者を巻き込みながら活動を始めました。
活動としては、月に1回集まって、さまざまな技術を持っているベンチャー企業から最新の話題や事例などについて情報共有しています。さらに、これらの企業からの技術協力を得て、AIを活用した店舗づくりの実証実験も行っています。
── 小売業でのAI活用というと、具体的にどのようなものが挙げられますか?
リテール分野におけるAI活用は、大きく3つのカテゴリーに分けられます。まずは店舗におけるAI活用で、主にショッパーマーケティング(商品を買ってもらうための適時適切な仕掛け)に使います。次は、商品陳列などでのカテゴリーマネジメント(商品カテゴリーを戦略的事業単位として管理する手法)での活用です。そして3つめは卸売業におけるAI活用で、サプライチェーンマネジメントが関わってきます。
店舗でのAI活用では、大手チェーン店による店舗の無人化が注目されていますが、小規模商店でもAIを活用してさまざまな効果を上げている事例があります。例えば伊勢神宮の参道にある創業100年の老舗飲食店では、AIでメニューの需要予測を行い、食材の無駄をなくしたり従業員の働き方の効率化を図っています。また、福岡県のクリーニング店では、経営者自らがオープンソフトでシステムを組み、AIによる画像認識を活用した無人店舗を作ろうとしてます。
商品の仕入れ・陳列では、AIを活用したカテゴリーマネジメントによって、似通った商品のアイテムを絞り、棚の有効活用につなげられます。空いた棚のスペースにサイネージを設置して情報を流したり、ストックを置くスペースを確保して欠品を防ぐなどいろいろな効率化が考えられます。
福岡のスーパーマーケットを最先端AI活用のショーケースに
── 実際の店舗づくりも進めていますね。
はい。福岡市を起点としてドラッグストアを展開しているトライアルカンパニーが、私たちの想いに賛同して、リテールAI研究会に参加してくれました。実際に使ってみたほうが理解しやすいよね、という流れの中で、「それなら」と実証の場としてのスペース提供に協力してくれています。それが、同社が2018年2月に福岡市にオープンしたアイランドシティ店です。スーパーマーケットとドラッグストアの機能を兼ね備えた24時間営業の店舗で、AIを活用した小売店舗づくりを試みています。
具体的に言うと、アイランドシティ店では約700台のスマートカメラを設置ました。そのうちの600台は商品単位で画像の取得を行い、商品棚の陳列状態とその変化を可視化しています。これによって、欠品している商品がすぐにわかります。これまで売れ筋商品は、定期的に店員が商品棚に行って確認して、少なくなったら早めに補充するようにしていました。スマートカメラの活用で店員が逐次確認する手間がなくなるだけでなく、次はいつなくなるかが徐々に学習されて、商品補充の手間も最小限になり在庫管理が効率化されます。
残り100台のスマートカメラは、店舗内での買い物客の行動を可視化するために利用してます。従来、来店者の行動を知るにはPOSデータの情報と店員の目と記憶によるという、あいまいなプロファイリングが頼りでした。アイランドシティ店ではスマートカメラを使って、プライバシーを侵害することなく、買い物客の動線、特定の棚の前での滞在状況、商品を手に取ったり棚に戻したりする行動を解析します。
── 700台というと、結構な規模ですね。コストもかなりかかりそうですが。
確かに、AIを導入するうえで、コストは一つの大きな課題です。特に、商品の単価が低いリテール分野では、なかなか大きな投資はできません。
ただ、最近はデジタル技術も、工夫次第でかなり導入コストを抑えられます。例えば、備え付け用の監視カメラは数万円くらいします。店内に数百台設置するとなると、当然、コストがかかりすぎます。そこで、アイランドシティ店では中古のスマートフォンをカメラとして使用しました。最近では、1年前に発売された高性能なCPUを搭載したスマートフォンが1万円以下で購入できます。
画像解析に使っているAIもオープンソースのものを活用しました。AIというと大がかりなイメージがあるかもしれませんが、小売店舗では思いのほか低コストで導入できます。
はい。福岡市を起点としてドラッグストアを展開しているトライアルカンパニーが、私たちの想いに賛同して、リテールAI研究会に参加してくれました。実際に使ってみたほうが理解しやすいよね、という流れの中で、「それなら」と実証の場としてのスペース提供に協力してくれています。それが、同社が2018年2月に福岡市にオープンしたアイランドシティ店です。スーパーマーケットとドラッグストアの機能を兼ね備えた24時間営業の店舗で、AIを活用した小売店舗づくりを試みています。
具体的に言うと、アイランドシティ店では約700台のスマートカメラを設置ました。そのうちの600台は商品単位で画像の取得を行い、商品棚の陳列状態とその変化を可視化しています。これによって、欠品している商品がすぐにわかります。これまで売れ筋商品は、定期的に店員が商品棚に行って確認して、少なくなったら早めに補充するようにしていました。スマートカメラの活用で店員が逐次確認する手間がなくなるだけでなく、次はいつなくなるかが徐々に学習されて、商品補充の手間も最小限になり在庫管理が効率化されます。
残り100台のスマートカメラは、店舗内での買い物客の行動を可視化するために利用してます。従来、来店者の行動を知るにはPOSデータの情報と店員の目と記憶によるという、あいまいなプロファイリングが頼りでした。アイランドシティ店ではスマートカメラを使って、プライバシーを侵害することなく、買い物客の動線、特定の棚の前での滞在状況、商品を手に取ったり棚に戻したりする行動を解析します。
── 700台というと、結構な規模ですね。コストもかなりかかりそうですが。
確かに、AIを導入するうえで、コストは一つの大きな課題です。特に、商品の単価が低いリテール分野では、なかなか大きな投資はできません。
ただ、最近はデジタル技術も、工夫次第でかなり導入コストを抑えられます。例えば、備え付け用の監視カメラは数万円くらいします。店内に数百台設置するとなると、当然、コストがかかりすぎます。そこで、アイランドシティ店では中古のスマートフォンをカメラとして使用しました。最近では、1年前に発売された高性能なCPUを搭載したスマートフォンが1万円以下で購入できます。
画像解析に使っているAIもオープンソースのものを活用しました。AIというと大がかりなイメージがあるかもしれませんが、小売店舗では思いのほか低コストで導入できます。
ショッピングカートのAI化で新サービスの導入も
── アイランドシティ店では専用のプリペイドカードでログインして、買い物客自身が商品のバーコードをスキャンさせて決済できる、スマートレジカートも導入していますね。
最近は日本でも、セルフレジを導入するスーパーやコンビニが増えてきていますね。ただ、セルフレジでは、最後にまとめて一つひとつの商品をスキャンしなければならないのですが、利用者はこれが面倒に感じます。そういった点を解消するために、スマートレジカートを導入しました。これなら、商品をカートに入れるたびにスキャンすればよく、セルフレジのように面倒に感じることはありません。むしろ楽しみながらやっている利用者もいます。
スマートレジカートに関しては、新しいサービスの導入も考えています。顧客のプロファイルや蓄積された購入履歴を参照して、次に買いそうな商品の紹介や関連するクーポンをレコメンドします。従来のクーポンは、買い物終了後に有効になるので利用されないケースも多いのですが、スマートレジカートならば購入した商品に応じてその場で発行できるので、すぐ買い物に活かせます。また、購入した商品の順番をたどれば、店内の買い物ルートが記録されます。そこから買い物客の動線も解析できるので、この商品とこの商品を隣合わせにすれば、相乗効果で売り上げが伸ばせるのではという気づきも生まれてきます。
とはいえ、ディスプレイ付きのショッピングカートも、大量に導入するには結構なコストがかかります。ここは、コストの負担を緩和する方法を模索しています。方法の一つは、ショッピングカートのディスプレイに商品の広告を表示できるようにすることです。メーカーから広告費をもらえれば、一部のコストを相殺できるかもしれません。
最近は日本でも、セルフレジを導入するスーパーやコンビニが増えてきていますね。ただ、セルフレジでは、最後にまとめて一つひとつの商品をスキャンしなければならないのですが、利用者はこれが面倒に感じます。そういった点を解消するために、スマートレジカートを導入しました。これなら、商品をカートに入れるたびにスキャンすればよく、セルフレジのように面倒に感じることはありません。むしろ楽しみながらやっている利用者もいます。
スマートレジカートに関しては、新しいサービスの導入も考えています。顧客のプロファイルや蓄積された購入履歴を参照して、次に買いそうな商品の紹介や関連するクーポンをレコメンドします。従来のクーポンは、買い物終了後に有効になるので利用されないケースも多いのですが、スマートレジカートならば購入した商品に応じてその場で発行できるので、すぐ買い物に活かせます。また、購入した商品の順番をたどれば、店内の買い物ルートが記録されます。そこから買い物客の動線も解析できるので、この商品とこの商品を隣合わせにすれば、相乗効果で売り上げが伸ばせるのではという気づきも生まれてきます。
とはいえ、ディスプレイ付きのショッピングカートも、大量に導入するには結構なコストがかかります。ここは、コストの負担を緩和する方法を模索しています。方法の一つは、ショッピングカートのディスプレイに商品の広告を表示できるようにすることです。メーカーから広告費をもらえれば、一部のコストを相殺できるかもしれません。
最終目的は無人店舗ではない
── リテールAI研究会では、流通店舗の管理や運営の自動化に向けたAIの導入レベルを定義していますね。
これもリテールAI研究会のテーマの一つです。自動運転のように、無人店舗の実現の度合いをレベル0からレベル5で定め、共通認識の普及を図ることを目的としています。
これもリテールAI研究会のテーマの一つです。自動運転のように、無人店舗の実現の度合いをレベル0からレベル5で定め、共通認識の普及を図ることを目的としています。
リテールAI研究会が定めたAI活用のレベル0~5(出所:リテールAI研究会)
レベルの定義がはっきりしていると、うちの技術は今この段階まで来ているという指針を示せるようになります。次はレベル3を目指しますとか、3年後にはレベル4にいますなど、外部に対しても説明や比較がしやすくなるでしょう。これによって、業界全体でAIの導入速度が上がっていくのではないかと思っています。
── みんなが高いレベルを目指していくということなんでしょうか。
そうではありません。一番上はレベル5の無人店舗ですが、それが小売店舗におけるAI活用のゴールというわけではありません。
Amazon Goも、無人店舗とはいってもレジに人がいないだけです。重要なのは、いかに買い物体験をスムーズにして楽しんでもらえるかです。そのために私たちが目指している活動の一つが、リテールに関わる企業や団体が共通に活用できるAIのプラットフォームを作ることです。そこは私たちだけでは実現できないので、外部からさまざまな力を借ります。
もちろん、企業や店舗同士は競争ですから、差異化も考えなければなりません。ただ差異化は、そのプラットフォームを利用した上で始まると思います。AIによる効率化で削減された経費を人材に投資すれば、コンシェルジェがたくさんいる店舗ができます。効率化の効果を、ホスピタリティではなく小売価格に反映させれば、格安販売の店舗ができます。そうやって競争すればいいわけです。
── オンラインショッピング、特にAmazonは大きな脅威ですね。さらなる購買層拡大のためにリアル店舗にも興味をもち、運営に乗り出してきました。これに対して、日本の小売業はAIを活用してどう対抗していけばいいのでしょうか。
オンラインでのショッピングは、買いたいものがだいたい決まっていて、他のサイトと価格を比較しながら買うというケースが多くなります。これに対してリアル店舗での買い物は、購入行動そのものが違います。もちろん、あらかじめ決めたものを買いに行くケースもありますが、目的を決めずに立ち寄り、そこで気に入ったもがあれば買う、ということも少なくありません。リアル店舗での購買行動の解析については、我々の方がいろいろとノウハウを持っています。
また、Amazon GOのような形態はカメラやセンサーにコストがかかりすぎるので、利益を出すのはまだまだ難しいでしょう。一方でAIに関しては、自動運転などの開発が活発化することで徐々にコモディティ化し、導入のハードルが下がってきました。こうしたことから、日本における小売業の将来像はわれわれが先駆けて描き、流通から小売業、マーケティングのあり方までを考えていきたいと思っています。
元田 光一
(撮影:湯浅 亨)
── みんなが高いレベルを目指していくということなんでしょうか。
そうではありません。一番上はレベル5の無人店舗ですが、それが小売店舗におけるAI活用のゴールというわけではありません。
Amazon Goも、無人店舗とはいってもレジに人がいないだけです。重要なのは、いかに買い物体験をスムーズにして楽しんでもらえるかです。そのために私たちが目指している活動の一つが、リテールに関わる企業や団体が共通に活用できるAIのプラットフォームを作ることです。そこは私たちだけでは実現できないので、外部からさまざまな力を借ります。
もちろん、企業や店舗同士は競争ですから、差異化も考えなければなりません。ただ差異化は、そのプラットフォームを利用した上で始まると思います。AIによる効率化で削減された経費を人材に投資すれば、コンシェルジェがたくさんいる店舗ができます。効率化の効果を、ホスピタリティではなく小売価格に反映させれば、格安販売の店舗ができます。そうやって競争すればいいわけです。
── オンラインショッピング、特にAmazonは大きな脅威ですね。さらなる購買層拡大のためにリアル店舗にも興味をもち、運営に乗り出してきました。これに対して、日本の小売業はAIを活用してどう対抗していけばいいのでしょうか。
オンラインでのショッピングは、買いたいものがだいたい決まっていて、他のサイトと価格を比較しながら買うというケースが多くなります。これに対してリアル店舗での買い物は、購入行動そのものが違います。もちろん、あらかじめ決めたものを買いに行くケースもありますが、目的を決めずに立ち寄り、そこで気に入ったもがあれば買う、ということも少なくありません。リアル店舗での購買行動の解析については、我々の方がいろいろとノウハウを持っています。
また、Amazon GOのような形態はカメラやセンサーにコストがかかりすぎるので、利益を出すのはまだまだ難しいでしょう。一方でAIに関しては、自動運転などの開発が活発化することで徐々にコモディティ化し、導入のハードルが下がってきました。こうしたことから、日本における小売業の将来像はわれわれが先駆けて描き、流通から小売業、マーケティングのあり方までを考えていきたいと思っています。
元田 光一
(撮影:湯浅 亨)
本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.
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