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Lifestyle 公開日: 2022.05.27

Alexaがなくす、家とクルマの境界線

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クルマはさまざまな感覚を使って運転するもの。視覚や聴覚は言うに及ばない。昔のクルマでは、匂いも大事だった。異常があると、配線が焦げる匂いとかガソリン(が漏れる)匂いとかで分かったものだ。それはデジタライゼーションの時代にどうなるか。

 ドライバーの立場から見た自動車の世界では、今は、感覚とデジタル技術が結びついている。嗅覚は、「アトマイザー」といった車内に感覚をいい意味で刺激してくれる香りを漂わせる機能を採用するクルマが出てきた。加えて声を使う機能も増えてきた。

 エアコンの温度設定をしたり、オーディオの選曲をしたり、窓を開けたり閉めたり……。ドライバーが手を使ってやっていたことが、今はデジタル技術の発達によって、音声で行えるようになってきている。

 「これからのクルマは、極端なことを言えば、手をあまり使わなくても運転できるようになるでしょう」。かつて、ドイツの自動車メーカーのヘッド・オブ・デザイン(デザインを統括する人)が筆者に語ってくれたことがある。

 その少し先にある技術を、最近体験した。日産が発売したピュア電気自動車「アリア」で。このクルマは(オプションで)「Amazon Alexa(アレクサ)」を搭載している。
アリアはまず66kWhのバッテリー搭載のシングルモーター前輪駆動「アリアB6 FWD」からデリバリー開始(写真=日産自動車)
 フロントマスクも、クーペライクなシルエットも斬新なアリアをドライブしながら、運転席に座った筆者は、例の「アレクサ」という呼びかけ(ウェイクワード)で起動する会話型のコマンドシステムを楽しめた。
モニター画面からAlexaを起動させるにはアイコンをクリック
 Alexaが家庭用として実用化されたのが、2014年。現在までに、世界累計で1億台の販売を達成したとか。2017年11月より日本語対応、そしてAlexaに対応する「Echoデバイス」の国内販売が開始されている。

 Alexaが車載されたのは、2018年8月。自動車載向けの「Alexa Auto SDK(Software Development Kit)」が提供開始され、以来、ジャガー、ランドローバー、アウディ、BMW、フォード、GM、ランボルギーニ、ステランティスグループ(ジープなど)、フォルクスワーゲン、それにEVのスタートアップであるリビアンなどが採用。日本では、2021年4月にBMWに搭載されたのが最初となる。

 日本ではAlexaの車載に先がけて、2020年9月に「Echo Auto」が販売された。 スマートフォンのAlexaアプリを介してインターネットへ接続し、Alexaとハンズフリーで対話できる車載デバイスだ。

 車内の音響特性を考慮して設計された8つのマイクアレイを搭載し、騒音もそれなりにある車内でも、乗員が話しかける声にスムーズに応答するというのが、車載用のEcho Autoの特徴なのだそう。

 「Amazonでは、アンビエント・インテリジェンス(Ambient Intelligence )をイノベーションの上で大切にしています」。Amazon Alexaの広報担当者は、今回、インタビューに応えてそう説明してくれた。

 「アンビエント・インテリジェンスとは、お客様の好みや行動をよく理解し、お客様が必要なときにはサポートし、必要でないときには自然と背景に溶け込み退いてくれるテクノロジーです。私たちはこのテクノロジーを家の中だけでなく、自動車にも応用したいと考えています」

 アリアでは、ステアリングホイールのスポーク部のボタンか、ダッシュボードのインフォテイメントシステム用モニターのアイコンをクリックすることで、Alexaが起動する(その前に自分のスマートフォンをシンクロさせる必要がある)。
「コネクテッド」技術による車内でのインフォテイメントの充実もアリアの大きなテーマだったそう(写真=日産自動車)
 すぐにAlexaっておもしろい、と思えるのは、音楽を聴いたときだった。Amazon Music、Apple Music、それにSpotifyなどに対応しているため、NissanConnect サービスに加入し「docomo in Car Connect」を契約するか、スマートフォンのテザリングなど使えば、オンラインのサービスで音楽を楽しめる。例えば「アレクサ、ロバート・グラスパーかけて」と日本語でい言えば、ストリーミング再生が始まる。家庭と同じだ。

 「お客様の好みに応じ、パーソナライズされた音楽やエンターテイメントの視聴や音声によるショッピングなど、さまざまな家の中における体験を自動車内でも同様に提供していきたいと考えています」。前出のAmazonの広報担当者の言葉だ。

 私などはこれだけでも楽しいが、アリアのAlexaは、車内からインターネットコンテンツへのアクセスを可能にし、「リマインダー」「ニュース」「天気予報」「アラームセット」といったことをこなしてくれる。

 レストランなど施設名を言えば目的地設定もできるようになるそうだ。機能のアップデートはいわゆる「OTA(オーバージエア)」で行われる。オーディオブックも聴けるので、特に通勤などにクルマを使う人にとって利便性が高そうに感じられる。

 もう一つの機能は、住宅の設備にアクセスできること。いわゆるスマートホーム対応家電を使っていれば、車内から声によって、自宅の照明やエアコンや音響機器などを操作できるのも、大きなセリングポイントだ。

 予想以上に気温が上がりそうだと思ったら、「(イヌのために)エアコンを(25度で)つけて」とか、別荘を持っているなら到着前に「(玄関と室内の)照明をつけて」とか、車内からボイスコントロールできる。

 デジタライゼーションによって、クルマの機能や役割が大きく変わっていきそうだ。自動車メーカーはシームレスという言葉を使って、家庭も仕事場も車内も、デジタル技術の下で一つにつながっていくとする。アリアとAlexaを体験すると、それは本当にありえる未来、いや近未来だと感じた。
Text/小川フミオ

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