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Lifestyle 公開日: 2022.06.24

フェムテックとは? 女性の体の悩みを解決するテクノロジーに注目

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 フェムテックとは、女性の悩みを解決するためのテクノロジーやサービスのことである。本稿では、近年国内外で注目を浴びているフェムテックについて解説し、今後の展望をみていく。

【画像】Shutterstock

フェムテックとは

 そもそもフェムテックとはどのようなものなのだろうか。まずはフェムテックの定義と起源について解説する。

フェムテックの定義

【画像】Shutterstock
 フェムテックとは、「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせてつくられた造語で、女性の体特有の悩みを解決するためのテクノロジーや、それを駆使した製品・サービスのことを指す。

 「フェムテック」という言葉は2016年、デンマークのIT起業家イダ・ティンによってつくられた。イダ・ティンは生理周期を記録する『Clue』というアプリケーションを開発し、フェムテックサービスの先駆けとなっている。

 国内では2019年ごろからフェムテックという言葉が広がりつつある。現在、フェムテックに分類されるサービス・製品は多岐にわたり、その目的も生理痛の改善や月経周期の予測、不妊対策、妊娠中のQOLの向上、セクシュアルウェルネスなど幅広い。

フェムテックの起源

 フェムテックの起源は1960年代、FDA(アメリカ食品医薬品局)によって経口避妊薬が承認されるまでの一連の流れにあると考えられている。男性用のコンドームがそれより一世紀以上前に開発されていたのに対し、女性たちは長らく自分自身で避妊する手段を持たなかった。

 しかし経口避妊薬が承認された後も、女性の「性」にまつわる問題は依然としてタブー視され、健康問題への取り組みは十分に行われてこなかった。バイアグラなど男性向けの「性」に関する医薬品は速やかに承認される一方で、女性の体にまつわるニーズは可視化されることなくスルーされてきたのだ。このような問題を解決するため、フェムテックという言葉が誕生したとされている。

フェムテックの事例

 フェムテックと呼ばれる製品やサービスにはどのようなものがあるのだろうか。ここでは、フェムテック企業およびその製品・サービス事例を、国内から2つ、海外から2つ紹介する。

(1)ルナルナ

【画像】PR TIMES
 生理日を携帯電話で記録・管理する『ルナルナ』は、IT企業のエムティーアイによって2000年11月に提供開始された国内フェムテックサービスの老舗であるといえる。

 生理周期は人によって異なるが、生理日を記録しておくことで次のタイミングを予測できる。初期のルナルナはこれを携帯電話(ガラケー)で行う月額課金制サービスだった。

 しかしサービスを継続していく中で、女性は生理周期だけでなく、「性」にまつわるさまざまな問題を抱えていることが分かってきた。その悩みに寄り添う形で発展を遂げてきたルナルナは、現在はスマートフォン向けの無料アプリに変わり、婦人科とユーザーをつないだり、妊活をサポートしたりといったサービスも提供している。
 特に力を入れているのは妊娠を希望する女性向けのサービスで、次の生理日の予測に加え、妊娠しやすい時期やしにくい時期の表示も行っている。

 またサービス誕生から20年を迎えた2020年には、より多くの人に女性の体の仕組みなどを周知するための教育プロジェクト『FEMCATION(フェムケーション)』を始動させた。 FEMCATIONは「Female(女性)」と「Education(教育)」を掛け合わせた造語で、若年層向けの分かりやすいコンテンツや、企業や男性に向けたセミナーの提供などを行っている。社会全体に働きかけることを意図した試みだ。

(2)TRULY

【画像】PR TIMES
 フェムテック企業TRULYは妊娠中のつわりを通じて「女性の心と体は女性ホルモンの影響を強く受けることを痛感」した代表自身の経験に基づいて立ち上げられた。

 同社は閉経前後の女性を対象とし、更年期や膣ケア、性の悩みといった女性ホルモンの変化による問題について正しい情報を伝えるオンライン相談サービス『TRULY』を提供している。

 2020年には日本人女性の半数が50歳以上となっており、社会で活躍する多くの女性にとって閉経を迎える前後の時期をどう過ごすかは重要な問題になっているといえるだろう。TRULYは「本当に信じられる情報と、安心できる寄りどころ」をコンセプトとしており、信頼性の高い情報とサービスの提供をうたっている。

 「オトナ」の男女のホルモンの影響に関する悩みを女性医師や医療専門家にチャットで相談できるサービスは2980円(税込)で利用可能だ。「婦人科に行くのは恥ずかしい」「時間が取れない」といったユーザーのさまざまな悩み相談を受け付けている。

 また法人向けサービスを提供しているのも特徴で、従業員全体に向け、女性医師や専門家による「ヘルスケアセミナー」や「ヘルスケア動画」を提供している。従業員が専門家監修のセルフチェックを行い、現在の心や体の状態を自身で確認した上で、専門家に相談することができるのも特徴の一つだ。福利厚生の一種としてさまざまな大手企業や自治体が取り入れている。

(3)Elvie Trainer(エルビートレーナー)

【画像】PR TIMES
 イギリスのElvieは骨盤底筋群の筋トレをサポートするデバイス『Elvie Trainer(エルビートレーナー)』などの製品を提供しているフェムテックカンパニーだ。

 骨盤底筋群とは骨盤の底にあり、子宮や膀胱、直腸などの臓器を支えているほか、排泄を制御する役割も担っている、女性の体にとって重要な筋肉の一つだ。骨盤底筋群を鍛えることで、尿失禁の予防や骨盤の歪みの改善、性的満足度の向上などの効果が期待できるといわれている。

 医療用シリコン製のElvie Trainerは本体を膣に挿入し、スマートフォンとBluetoothで連携させることで、ゲーム感覚で骨盤底筋群を鍛えられる。イギリス本国では医療機関にも認められており、NHS(国民保健サービス)を通じて購入することもできる。製品はパステルグリーンを基調としており、「女性といえばピンク」といった固定概念にもあらがうものとなっている。

 またそのほかに、本国ではブラジャーの中に装着して使用する電動搾乳器などの製品も販売している。スマートフォンを通じて操作することができ、ハンズフリーで手間をかけず使用できるのが特徴だ。

 同社は、女性があらゆる局面において自身の体が本来持ちうる能力を発揮できるようなツールを提供することを目標として掲げており、さまざまなライフスタイル・ライフステージにある女性の悩みをテクノロジーによって解決する製品を開発・販売している。

(4)The Illumigyn Gynescope System

【画像】Shutterstock
 婦人科検診は過去50年間大きな発展を遂げていないといわれている。高画質の画像は撮られておらず、記録も不十分で、正確な診断のためには追加の検査が必要となる。

 2012年に設立されたイスラエルのillumigynは、この状況にメスを入れ、よりよい婦人科治療をスタンダードなものにしようとしている。また全ての女性がより容易に婦人科診療にアクセスできる未来を目標に掲げている。

 同社は「子宮頸がんのない世界」を目指し、2050年までに世界の子宮頸がんに関連する死者数を500万人削減するという目標を掲げて事業を展開している。

 主な製品は婦人科内視鏡「The Illumigyn Gynescope System」だ。FDA認証を取得しており、クラウドプラットフォームサービスと連携している。

 この製品は高解像度のデジタル画像を撮影することによって、従来の機器よりも診断の精度を大幅に向上させている。さらに画像をクラウドにアップロードすることで、世界中の医師による診断を可能にする。

 従来の検査画像と異なり患者が自身で画像やデータにアクセスし管理できるのも特徴のひとつで、セカンドオピニオンなどに役立てられることを想定している。

フェムテックの意義と今後の展望

 フェムテックは現在、国内外で大きな注目を集めている。それはなぜか、また今後はどのような広がりを見せるのか、ここではフェムテックの意義と今後の展望について解説しよう。

フェムテックの意義

 世界の全人口の半数を占める女性の医療費は年間5000億ドルにも上ると推定されているが、現在のところ、女性の健康に特化したヘルスケア製品・サービスの研究開発は、医療研究開発全体のうち、わずか4%にとどまっているといわれている。
 これまで取り上げられることのなかった、あるいはタブー視され触れられることのなかった女性の「性」にまつわる課題に取り組み解決するフェムテックは、隠れていたニーズに応えるものだといえるだろう。

 女性起業家が増えたことや、セクシュアルハラスメントや性的暴行の被害体験を告白する「#MeToo」運動が世界的な広がりを見せたこともこのムーブメントの後押しとなっているのかもしれない。

フェムテックの展望

 アメリカのリサーチファームFrost&Sullivanの調査では、フェムテック市場は2025年までに500億ドル規模に成長することが見込まれている。

 また国内でも、2021年より経済産業省がフェムテック企業と、フェムテックサービス導入企業を対象とした補助金の交付を行っている。これはフェムテックを提供する企業や女性を雇用しフェムテックを導入する企業、医療機関、自治体などを対象に、働く女性が能力を最大限発揮できる環境の整備を目的とした事業の費用を補助するものだ。

 2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」においても、女性がより活躍できる社会の実現のため、女性の雇用拡大・登用やデジタル人材育成のほか、フェムテックの推進の必要性について言及されている。
 今後もフェムテック市場は世界的に大きく成長していくと考えられるだろう。企業が新たなビジネスチャンスと捉え、フェムテック製品の開発に取り組めば大きな利益が見込めるかもしれない。

 またフェムテックを導入することにより、社内の女性従業員に福利厚生を提供し、事業の効率化を図れる可能性もある。妊娠や出産、生理など女性の体特有の事象は働き方とも大きく関わってくる。例えば経済産業省が実施した「『働く女性の健康推進』に関する実態調査」によれば、生理にまつわる症状による労働損失は4911億円に上ると試算されている。

 フェムテックを通じて女性がより働きやすい職場をつくることで、労働環境の改善や生産性の向上、長期的な人材の活用にもつながると考えられるのだ。

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