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Lifestyle 公開日: 2022.08.01

自動車メーカーと音楽家の協業で、EVの“音”はもっとエモーショナルに

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 デジタル技術は、クルマに乗るときの気分を昂ぶらせてくれる。そのひとつが音。EVを中心に、いま自動車メーカーは“音づくり”に励んでいるのだ。そのとき活躍するのが、デジタル技術と、プロの音楽家だ。

 私たちが気持ちよさを感じるとき、サウンドはとても大事な役割を果たす。映画が好例。盛り上がるシーンでは効果音が大きく作用する。実際のクルマでも、実はちょっと似ていて、加速時などエンジンルームからの音や排気音の高まりで、ドライバーの気分は盛り上がる。

 いっぽう、電気自動車では、内燃機関(エンジン)がないから、従来の痛快なエンジン音や排気音は得られない。

 「電気モーターのおかげで静粛性はうんと高まりますが、ドライバーにとって、ある種のエモーショナルな喜びはなくなってしまいます」とするのは、ドイツのBMWだ。

 エンジンで回るプロペラのモチーフをエンブレムにしているBMW。企業スローガンも「駆けぬける歓び」と、やはりドライビングで得られる感情に重きを置いている。

 電気自動車の開発にも熱心なBMWでは、そこで、ドライバーのエモーションをかき立てる音を、デジタル技術で作っている。同社に協力するのは、米国のハンス・ジマー氏。映画通ならよく知っている、ハリウッドで活躍する作曲家だ。
BMWのピュアEV、i4Mのサウンドもハンス・ジマー(画面右)が手がける
 ジマー氏の名前は、多くの作品で見ることができる。日本の例だと、2022年5月に公開されて大ヒットを記録している『トップガン マーヴェリック』。シーンごとに適切な音楽を作り、場面を盛り上げてくれている。バットマンのバットモービルの音もジマーの仕事だ。

 「そのクルマごとにふさわしい音というのがあると思います。それを考え、あるいは強調することで、ドライバーのエモーションを刺激するのです」

 ジマーは、モデルごとに適切な音を作る。長年、デジタル技術を駆使して映画のための音楽や効果音を作ってきたスキルが、クルマにも活かされ始めているのだ。

 スポーティーなMモデルには乾いたエンジン音を大きめに、いっぽうピュアEVのiXやi4のようなモデルではドライバーが選択したドライブモードに合わせて、音を変える、という具合。
ピュアEVとして開発されたBMW i4
 「IconicSounds Electric(アイコニックサウンズ・エレクトリック)」とBMWが呼ぶ、このデジタルサウンド技術は、さらに、運転中以外にも、乗り込んだときなど、クルマの操作に劇的な効果音を添えてくれる。新しい体験として、かなりおもしろい。
i4のモニタースクリーンではハイファイの操作が楽に行える
 ルノーでも同様に、映画やイベントなどの音楽で知見の多い作曲家であり音楽家のジャン=ミシェル・ジャールに協力してもらい、車内のサウンドを構築している。

 「乗り込んだとき、車載オーディオの音場づくり、時速30キロを超えて加速していくとき、あるいは、歩行者が近くにいるときの警告音、と幅広い場面で(EVでは)音づくりをしています」(ルノー本社のプレスリリースより)
デジタル音楽を1970年代から手がけるジャン=ミシェル・ジャール
 ジャン=ミシェル・ジャールは、父親が『ドクトルジバゴ』や『アラビアのロレンス』といったいわゆる名画の作曲を手がけたモリス・ジャールであることの事実を置いておいても、数多くのファンをもつミュージシャン。これを書いている私も、古くは『エキノクス』(1978年)などのアルバムを愛聴している。

 『エキノクス』をはじめ、ジャールは電子楽器を多用。今回、ルノー車のためにデジタル技術で”いい音”を作るのに向いた人選だったのだろう。

 同時に、ルノーとジャールは「Sonic Roadソニックロード」というサービスを準備中。走行状態に合わせて“最適な”バックグラウンドミュージックを流すというものだ。ドライバーのアーカイブ、ポッドキャスト、さらにニュースなど、さまざまな音源で構成するという。
ルノーはデジタル技術を用いてさまざまな音楽体験の提供を目指している
 「周囲の環境に溶け込んでいるようなフィーリングをドライバーに味わってもらうこと」を、ルノーではソニックロードの目的に挙げている。
走行シーンに応じてストリーミングのように音を提供しようというのがルノーの「ソニックロード」コンセプト
 マセラティも、やはり、音楽の重要性に意識的だ。かつてDIGITALISTでも紹介した、伊モデナ郊外に持つ「イノベーションラブ(ラボ)」では、音響の研究にも熱心に取り組んでいる。
マセラティがモデナ郊外に持つイノベーションラブにある音響室では車内のリスニング環境も再現できる
音響評価室の名前はなんと「パバロティ」
 マセラティでは、音づくりは、同国で活躍する作曲家でありエレクトリカのミュージシャンとしても人気のダーダスト(本名ダリオ・ファイーニ)に協力してもらっている。美しい旋律の楽曲が多いその作風から鑑みるに、ユニークな組合せといえるかもしれない。

 「コラボレーションは2021年に始まったばかりです」。イノベーションラブの担当者はそう教えてくれた。どんな音をデジタルで“作曲”してくれるか。まもなく登場が噂されるグレカーレそれにMC20のEV仕様で、マセラティとダーダストの成果が見られるかもしれない。
マセラティMC20にもデジタル音源が搭載されるようになるかもしれない
 というわけで、これから電気自動車をはじめとする新車に乗るときは、乗りこむときから、ぜひ耳を澄ませていただきたい。これまでなかった体験を、デジタル技術が作ってくれているはずだから。

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