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Lifestyle 公開日: 2019.02.28

自転車専用の信号機・交通情報板も──コペンハーゲンに見る街のデジタル化(2)

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「自転車のパラダイス」と自称するコペンハーゲン。自転車社会を支えるデジタル活用を紹介。

前編からのつづき

 自転車の街、コペンハーゲン。自転車で安全に街を走れるよう、自転車用の信号機を設けているなど、街には、ならでは仕組みが設けられている。その一つが、自転車が交差点に差し掛かると、それを察知して自動的に輝度を上げる「インテリジェント街灯」である。

 これらに加えて、もう一つ、コペンハーゲン市長が誇ったのが、「自転車向けのITS」だ。ここでいうITSは、情報化といった意味合いとなる。

 自転車のリアルタイム交通量は、市内各所のセンサーで検知される他、時間ごとの動きは事前に組んだモデルである程度解析されている。カメラによる自動計数が多用されているようだ。

 これらの情報に基づいて、いくつかの場所に設置された情報掲示板に、「○○方面、→方向早い」などのメッセージを表示する。また、信号の表示パターンも変更する。信号は、「一定速度で走れば、緑信号ばかりつながる」ように設計されている。市の担当者は、講演で「自転車を優先して制御している」としており、基本的な移動方法として自転車が重用されていることがわかる。
コペンハーゲン市が誇る自転車用交通情報表示板。訪問時は、安全関連の注意喚起が表示されていた。
 自転車向けの情報表示板は、ITS世界会議の時点で市内に5カ所あった。カラーのドットマトリクス式ディスプレイで、文字、図形が自由に描画できるという。そこで、現物を見に、街に出てみた。市の中心部にあるQueen Louise橋から北西に伸びるNorrebrogade通り沿いに1台確認できた。GPSは、その所在地を「経度: 12° 33’ 38.838” E、緯度: 55° 41’ 16.494” N」と示している。コペンハーゲンを訪れる方は、ご覧あれ。

 視察時は、ラッシュアワー前だったためか、取り立てて有用な情報は表示していなかった。「停止前に合図を」といった、注意喚起のメッセージが出ているだけだったが、混雑時にはルートごとの所要時間予測などが表示されるという。ディスプレイは見やすく、有効な情報提供ツールと感じられる。

 コペンハーゲンで、自転車用情報表示板を探して歩いた際に感じたのは、道路標識の少なさ。おかげで、町がスッキリしている。道路脇からニョキニョキと立っている標識は意外に騒々しいのだということが、コペンハーゲンを訪れて分かった。
自転車の街なら自転車用エアバッグなども使いでがあるかもしれない。写真はCES2019に登場した仏HELITEの自転車用エアバッグ

見落とし防ぐ車上信号を自転車向けにも

 ITSを研究開発している人々が真剣に議論しているのが、自転車の「車上信号」だ。

 従来、信号は、柱に取り付けられた色彩灯火が常識だった。しかし、それだと、ドライバーが信号を見落としす可能性がある。これを防ぐために、車両の内部などに表示させようというのが車上信号の取り組みである。実はコペンハーゲンでは、既に新幹線などの列車では使用されている。新幹線の場合は、高速移動中には運転士が信号機の灯火を視認できない恐れがあるため開発された。

 自動車でも、見落とし防止の有効策として車上信号は議論されている。ただし、実現のためには信号機にすべて発信機を取り付けなければならない。車両側にも通信機が必要だ。車両とインフラの間の通信(V2I)が実現しないと成立しないが、車両が無線対応になることは既定の事柄と言っていい。問題は、どの方式で通信するかだ。現在、2つの有力な方式があり、共存を唱えつつもバトルが繰り広げられている。車両が周囲と通信することをV2Xと総称する。V2X用としては、無線LANの機能を拡張したWAVE / ITS-G5方式と、携帯電話技術を拡張したC-V2X方式がある。

 車上信号は列車や自動車の話かと思ったら、2018年のITS世界会議には自転車用の車上信号の原理試作が登場した。ノルウェーのQ-Freeがデモしたもので、信号機やその他の標識から情報提供を行う。手許のタブレットに大きく表示されるため、見落としはない。先行する大型車に隠れて信号が見えない、というような事は起こらなくなる。

 通信技術は、他の面でも期待されている。例えば、自転車が自動車ドライバーの死角に入ったときに、自動車のドライバーに警告する機能。これは、既に実用化されている機能を転用することで、比較的容易に実現できる。安全性向上だけではない。V2X技術が一般化すれば、標識の数を大幅に減らせる。見通しの良い通りを作れそうだ。

 オートバイや自転車用エアバッグが各所で開発されている。これらは、最後の砦として重要なデバイスだが、衝突しないに越したことはない。自転車ばかりか、歩行者もV2Xを装備するようになるとも言われている。道路に出るときは、人であれ自転車であれ無線通信により安全を確保する、そんな時代が来るかもしれない。


杉沼 浩司


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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