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Lifestyle 公開日: 2019.01.30

カードレス社会に進む中国(前編)──金融サービスはスマホアプリで

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キャッシュレスを越え、カードレスへ。銀行ATM利用時にもスマホや生体情報で認証。

 中国でスマートフォンによるキャッシュレス決済が普及していることはよく知られている。ただ筆者が感じているところでは、キャッシュレスというよりも、ウォレットレスが浸透しているといったほうがしっくりくる。現金、クレジットカード、キャッシュカード、交通系ICカード、会員カードなど各種カードとレシートといったものが入った財布を持ち歩かなくても、生活には困らない。

銀行ではATMがスマホ認証や顔認証に

 例えば銀行。中国のどの都市にもある大手銀行の「招商銀行(ジャオシャンインハン)」では、顔認証によるカードレス取引を可能にしたと発表している(2018年12月27日発表)。

 同行のATMを利用するとこんな感じだ。まずメニュー画面でカードか、スマホ現金取り出し(手机Pay取款)か、顔認証かを選択する。顔認証を選択するとATMについたカメラで利用者の顔認識処理を実行する。昆明という内陸の街で筆者が試したところ、認識時間は3秒程度だった。北京や上海などでは、銀聯カード決済の速度は昆明より圧倒的に速いことから、顔認証時間についても地域によってはもっと処理速度が速くなるかもしれない。

 顔認証終了後、2段階セキュリティとして電話番号の下4桁を入力する。両方が通ると「身分認証成功」の文言と、銀行カード番号の最初4桁と最後4桁が表示される。その後キャッシュカードでの引き出しと同様に、引き出す金額をボタン押下で設定し、暗証番号を押すと現金が出てくる。なお、顔認証は事前の登録が必要で、外国人は登録できないようだ。
 顔認証を使わず、メニュー画面で「スマホ現金取り出し(手机Pay取款)」を選択した場合でも、キャッシュカードを使わず現金を引き出せる。スマホで招商銀行のアプリを起動し、ATMに表示されたQRコードをスキャンして、アプリから引き出し金額を設定すれば現金を引き出せる。招商銀行のガラス壁やATMにはカード不要で現金が引き出せるポスターを張り出しているなど、カードレスに向けてのアピールにも積極的だ。(写真は招商銀行(ジャオシャンインハン)のATM顔認証捜査の様子)
 中国人民銀行が発表した「2018年第三季度支付体系運行総体状況」によると,2018年9月末の時点で、中国で発行されるキャッシュカードは同年6月比で2.75%増の73億8500万枚となった。この数字は増えているものの、過去数年の伸びと比べても明らかに伸びは鈍化しているという。スマートフォンによる振込総数は前年同期比74.19%増の169億3500万回、振込総額は32.91%増の65兆4800億元と増加、また「choice」が発表した中国国内のatmの数のデータでは、2013年には10万4400台だったのが、2017年には3万6400台へと、3分の1まで減少している。キャッシュレス決済や振り込みをスマートフォンアプリからするように、現金引き出しもカードレスが進み、今後atm数はゼロにこそならないがだらに減少していくことだろう。

 中国メディア「中国新聞網」によると、招商銀行が中国初となる「全土で全面カードレス化へのアップデートが完成した」とし、「個人の顧客については、ほぼ全ての業務においてカードレスが実現した」としている。「ATMに限らず窓口業務もアプリで予約しカードレスを実現」し、ひいては「利用状況が見やすくなる」と分析している。

 この記事の中で業界関係者は、「銀行は中国のインターネット発展に合わせて『スマート化・モバイル化』している。最終的には金融サービスは『カード時代』から『アプリ時代』に進んでいくだろう」とコメントしている。カードレス化に関しては招商銀行が最も進んでいるようだが、他行も部分的にカードレスを実現している。今後は一層、カードレスでも現金が引き出せる方向にいくだろう。

ショッピングのカードはPaaSの中に

 筆者が中国に住んでいる際に、持ち歩く店舗の会員カードは、以前より少なくなった。一部がスマートフォンで済むようになったからだ。店舗公式アプリはユニクロや無印良品など有名チェーン店各店で用意されているが、アプリをインストールせずとも会員証をスマホで持ち運べるようになった。

 騰訊(Tencent)の微信(WeChat)には、「微信小程序(ミニアプリ)」と呼ばれる、小容量のアプリをクラウドからダウンロードし、インストールせずに利用できるPaaS(Platform as a Service)のプラットフォームや、微信公衆平台と呼ばれるSaaS(Software as a Service)があり、これらを使って取引できるケースも多い。また例えばアリババ(Alibaba)の関連金融会社のアントフィナンシャル(Ant financial)の支付宝(Alipay)には「カード機能」があり、これを使えるサービスもある。

 電子会員カードを採用するチェーン店では、多くの消費者がレジでまずスマートフォンで会員証のバーコードやQRコードを見せて、店員がそれをスキャンする光景がみられる。もともと物理的なカードを発行してたチェーン店の多くがそれを廃止しカードレスに向かっているが、全体で廃止に向かっているかというとそうでもない。「1000元払えば2000元分利用できるカード」といったような、先払いを狙ったカードは小規模の店舗で行う手法で、そこは物理カードに依存している。

後編につづく)

山谷 剛史


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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