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Lifestyle 公開日: 2019.04.23

日本の「食品ロス」を削減 「フードシェア」をアプリで実現へ

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国内で廃棄される食品は約643万トン。東京都民が1年間に食べる食品の量に匹敵する。国内で広がるフードシェアサービスの動向を紹介する。

 食品ロスの問題が深刻だ。環境省が2019年4月に発表した国内の食品廃棄物の推計値は、2016年度で約2759万トン。このうち、売れ残りや食べ残し、賞味期限切れなど本来は食べられるにもかかわらず捨てられてしまう「食品ロス」は、約643万トンに達した。これは、国連が世界中で飢餓に苦しむ人たちを救済するために実施する食糧援助量約320万トンの約2倍に相当。東京都民が1年間に食べる食品の量に匹敵する。こうした事態をうけ、超党派の議員連盟が今国会に「食品ロス削減推進法案」を議員立法で提出。早ければ今国会で4月中にも与野党の賛成多数で成立する見通しとなっている。

 食品ロスは、レストランや居酒屋などの飲食業者、食品メーカーなど事業者だけの問題ではなく、「食べ物を消費する」家庭や消費者一人ひとりの意識にも関わる問題だ。国内の食品ロス約643万トンのうち、その約半分は家庭で廃棄されている。飲食業者や食品メーカーなど事業者と消費者、双方の意識を変えていかなくてはならない。

 そこで食品ロス問題の解消にICTを活用する動きも顕著だ。エイチ・アイ・エスグループのTODOKISUGIは2019年2月、クーポンアプリ「No Food Loss」をリリースした。コンビニエンスストアや小売店から、販売期限や季節限定パッケージなどの理由によりまだ食べられるのに捨てられている食品を「クーポン」として発行し、買い物の際に利用してもらおうというアプリだ。

 アプリをダウンロードして会員登録すると、近隣店舗が発行したクーポン情報が通知され、店舗で直接クーポンを認証させることで商品を割引価格で購入することができる。さらに、購入金額の一部は特定非営利活動法人TABLE FOR TWO Internationalを通じて、アジアやアフリカの子ども達の給食費として寄付される。お得に「買い物をしながら社会貢献もできる。

 「No Food Loss」は、余って廃棄される食品と消費者をマッチングすることで、食品ロスを削減する「フードシェアリングサービス」のひとつだ。まずは、節分の風習として広まった「恵方巻き」の大量廃棄で批判を浴びたコンビニエンスストアをターゲットに導入を促すという。すでに、コンビニチェーン・ポプラの「生活彩家 貿易センタービル店」での利用が始まり、2019年4月18日には「ポプラ 相模大野南口店」、「生活彩家 横須賀市役所店」でも開始。都内近郊5店舗で使える。今後は首都圏を中心に全国へサービスを拡大する。TODOKISUGIでは、コンビニエンスストアからスーパーマーケット、パン屋などの小売店まで広げて、食品ロスの削減を推し進めたいとしている。

余った食材を使った料理を、1日1回食べられる定額制サービスも

 他にもさまざまなフードシェアリングサービスが登場している。スタートアップのコークッキングが展開するフードシェアリングサービス「TABETE」は、飲食店やパン屋、惣菜店などから、余った料理や商品をお得な価格で購入・テイクアウトできるサービスだ。2019年1月、新たにAndroid版アプリを公開。3月からは、東京・新宿ルミネにあるロサンゼルス発のオーガニックコーヒーとパイの専門店「The Pie Hole Los Angeles」にも導入された。
 さらに、2019年3月からは、さいたま市が展開する食品ロス削減に向けた取り組み「フードシェア・マイレージ」に協賛。浦和駅、大宮駅、さいたま新都心駅周辺の飲食店にTABETEの導入・運用を働きかけていく。

 TABETEでは、店舗側が閉店時間や賞味期限の兼ね合いで余りそうな食事をアプリに掲載すると、利用者がその中から、食べたいものを選んで購入できる。近隣の店を登録しておけば、出品情報の通知を受けることも可能だ。現在、約300店の飲食店や総菜店が登録しているという。

 飲食店の余剰食材をシェアするサービスも登場している。REARSが展開している「フードパスポート」は、月額2980円で余剰食材を使ったおまかせメニューを、1日1店舗まで食べられるサービスだ。2018年10月にアプリをリリース。その時点で、関西圏の加盟店舗数は207店だったが、2019年4月には415店に拡大している。関東、中部、九州エリアに順次対応中だ。

 利用者は1回ごとに1ドリンクのオーダーが必要だが、毎日利用しても月額2980円の定額で外食を楽しむことができる。また提供する店側は、余剰食材を使うので材料費0円で料理を提供できる。食材の廃棄を削減できるだけでなく、新規集客用の販促ツールとしても活用できる。追加オーダーする場合は実費になるので、売り上げのアップも見込める。

フードをシェアすることで、寄付もできるサービスも登場

 またSHIFFTは、月額1980円の定額制で、1日2回まで余剰食品をテイクアウトできるサービス「Reduce GO」を2018年4月から開始した。提供される食品は、パンからパスタ、お弁当、ジュースなどさまざま。定額制で個別の価格設定はされていないため、利用者は安心して好きなものを購入できる。

 アプリをインストールすると、現在地周辺の余剰食品がお店までの距離と共に一覧表示される。注文時の決済は不要で、2タップで注文が完了。指定の時間に店舗へ行って、注文画面を提示することで受け取ることができる。周辺の飲食店でテイクアウトするので、加工食品だけでなく飲食店の調理済み食品も提供できるのが特徴だ。

 しかも、利用金額の2%が社会活動団体に寄付される。SHIFFTによれば、2019年4月時点で加盟店数は150店、余剰食品削減数7009食、寄付予定額4万7544円に達したという。都内、首都圏から対応エリアを順次拡大していく。

 その日のうちに売り切ることが前提の飲食店や総菜店などは、仕入れを調整して余剰が出ないよう努力しているが、正確な来客予測は難しく、突発的な予約キャンセルの可能性もある。一方で、食品ロスを防ぐため少なめに準備すると売り切れになったり、「品揃えが良くない店」といったイメージがついたりするおそれもあるため、常に多めに食材を用意する傾向がある。こうしたことから、食品ロスを事業者側だけの努力で削減していくのは難しい。

 余った食品を、必要としている人たちに分配する、あるいはシェアするという考え方は以前からあったが、それを効率的にストレスなくサービスとして展開することが難しかった。それが、ICTで可能になった。フードシェアによって、一人ひとりが削減できる食品ロスはわずかな量かもしれないが、その意識が草の根的に広がることが期待されている。


林 渉和子=タンクフル


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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