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Lifestyle 公開日: 2019.02.04

【デジタルな生活はいかが?】凝り性のための調理用温度計とスマート温度計

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さまざまなシーンに向け多様化する料理用の温度計。デジタル技術が入り込んで便利になった。

 みなさんのお宅のキッチンに温度計はあるでしょうか?大さじ・小さじや計量カップ、はかりといった量をはかる道具に比べると、温度を測る道具は不思議とあまり使われていないようです。

 でも、料理をよりおいしく、失敗なく仕上げるためには、温度は無視できない重要な要素の一つです。

 例えば揚げ物は、食材や衣の種類によって揚げ油の温度を適切に調節することが美味しさの秘訣です。菜箸を油に入れたときの気泡の出方や、衣を落としたときの様子で温度を推定する方法もありますが、食材を入れたり裏返したりすると、水分が蒸発する際の気化熱によって温度が大きく変化しますし、火加減によっても上下します。そのため、実際には油の温度が常に分かる状態で揚げたほうが、誰でもおいしく揚げ物を作ることができます。

 他にも、お茶やコーヒー、出汁の味は、抽出する際の湯温に左右されますし、お酒の燗をつけるときにも温度計を使うようにすると、自分の好みの加減をいつでも再現できます。肉料理に凝ったり、パン作り、製菓に挑戦したりするときにも温度計があると良いでしょう。

 温度計があると、経験による勘や感覚に頼る必要がなくなるので、慣れない人でも失敗しにくいですし、自分好みにできたときの温度条件を記録しておけば、同じような仕上がりを何度でも再現できるという利点があります。

 温度計というと、理科の授業で使うような、赤色の球がついたガラス製のアナログのものを想像する方もいるかもしれませんが、最近はデジタルの料理用温度計が充実していて、より手軽に扱える製品やスマートフォンにつなげて便利に使える製品も色々出ています。

 筆者は色々調べてみたいという性格と、料理研究家という仕事柄、料理用の温度計をいくつか使い分けています。今回の記事ではオーソドックスなものからちょっと変わったスマート温度計など、私が使っているものや気になっているものを中心にご紹介します(記事トップの写真は筆者が使っている温度計たち)。

食材の内部温度をはかる温度計

 料理によく使われるデジタル温度計には、スティック温度計と赤外線温度計(放射温度計)の2種類があります。

 スティック温度計は、プローブ(尖った棒状のパーツ)を食材に刺したり液体に入れたりして温度を計るものです。安いものは700円程度で家電量販店や調理器具売り場で手軽に購入できますし、スイッチを入れて食材や液体に差し込むだけで測定できるので使い方も簡単です。
筆者が使うスティック温度計(ThermoPro TP-02S)
 用途としては、かたまり肉の中心温度を調べたり、やかんや鍋に刺して湯の温度を計ったり、パン生地の発酵温度を管理したりといったことが挙げられます。

 コーヒーやお茶に凝りたいときには、こういう手軽な温度計が一つあると便利です。コーヒーやお茶は、湯の温度によって抽出される成分の種類やバランスが変化し、一般的にコーヒーは85〜90℃、煎茶は70〜80℃のお湯を使うとおいしく淹れられると言われています。沸騰するまで加熱すれば100℃前後のお湯は簡単に用意できますが、80℃前後のお湯を温度計なしに用意するのは慣れが必要なので、はじめは温度計を使うのが良いでしょう。

 初心者だけでなく喫茶店などでプロがコーヒーを淹れる際にも温度計を使っているところをよく見かけます。また、煎茶は温度を高くすると苦味の成分がよく出て、逆に低くすると苦味が抑えられうま味が強くなるといった具合に、抽出温度を変えることで味わいが変化するので、温度計片手に、好みの味を求めて温度を調節するのも楽しみ方の一つでしょう。

 ローストビーフやローストポークといった肉料理でもスティック温度計が活躍します。かたまり肉を調理する際、中まで火が通っているか不安でつい焼きすぎてしまう人は少なくないのではないでしょうか。

 肉料理、特に豚肉や鶏肉、ひき肉を使った料理の場合、食中毒を防ぐため中心が一定の温度に達するまで加熱する必要があります。一方で、火を通し過ぎると水分が抜けてパサパサしたり硬くなったりしてしまいます。中心が衛生上問題のないギリギリの温度になるよう仕上げられると、安全とおいしさを両立できるのですが、これを勘や感覚で実現するのは困難です。このような料理に挑戦する人はプローブのついた温度計を1つ持っておくと、よりおいしい肉料理を安心して楽しむことができるでしょう。

 鶏ハムなども同様です。鶏胸肉は脂質が少なくヘルシーな半面、パサついたり硬くなったりしやすいので、湯煎によって低温で火を通す鶏ハムなどのレシピが人気です。ただ、鶏肉はカンピロバクターやサルモネラ菌による食中毒の恐れがあるので、中心が65℃以上になるまで十分に加熱する必要があります。鍋の大きさや鶏肉の厚さによっても必要な加熱時間が前後しますし、湯煎の温度が低すぎるとどれだけ加熱しても十分な温度に達しない可能性もあるので、温度計で湯温や中心の温度を確認しながら調理を行うことをお勧めします。

リアルタイムで温度をはかれる温度計

 肉料理では、ちょうど適温になったタイミングを見計らって加熱を止められるのが理想ですが、通常のデジタル温度計は本体の耐熱性や耐水性の問題で、肉に挿したまま湯煎したりオーブンに入れたりできないのが難点です。

 そこで、よりこだわりたい人にオススメなのがプローブと本体が分かれたタイプの温度計です。コードが耐熱性のものであれば食材にプローブを挿したままお湯に入れたり、オーブンに入れたり(オーブンの機種によってはコードがあると扉が閉まらない可能性があるので注意が必要です)できます。アラーム機能を使えば、設定温度に達したタイミングで音が鳴るので、他の作業をしながらでも絶妙な焼き加減を判断できます。ThermoProやHaborなどのメーカーから1500円程度で販売されています。

 スマートフォンに接続して、さらに便利に使える温度計もあります。スマートフォンにBluetoothで接続するタイプのものは、プローブから離れたところでもアプリ画面上で温度を把握したり、タイマーをセットしたりできますし、温度を記録してグラフにする機能がついているものもあります。
 私が使っているのはクラウドファンディングで生まれたスマート温度計Rangeと、最近購入したCUSTOMの温度計です。

 RangeはKickstarterというクラウドファンディングで作られた製品。スマートフォンのアプリから、一定の温度になったら通知するアラーム機能や、温度の変化を記録するグラフ機能を使うことができます。私が使っているタイプは古い機種なので、プローブとスマートフォンをコードで接続する必要がありますが、Range Dialという比較的新しい機種にはダイアル型のコントローラーが付いていて、スマートフォンを使わずに簡易的な操作ができます。また、コントローラーからBluetoothでスマートフォンに接続できるようになったので、温度計本体から離れたところでも温度を把握できるようになりました。ただし、海外からの取り寄せになるので送料や時間がかかるのがやや難点です。
Supermechanicalのスマート温度計Range
 私が最近使っているのは、CUSTOMという計測機器メーカーが出している温度計です。Bluetoothでスマートフォンに接続し、離れたところから温度を確認できますし、設定した温度を上回ったり下回ったりすると知らせてくれるアラーム機能もあるので肉料理の温度管理などに便利です。また、温度を記録してグラフ化できるので、自分なりに調理方法やレシピを研究したい方には面白い道具だと思います。
CUSTOMの無線ステンレスプローブ温度ロガー(CT-621BT)
 オーブンにコードが挟まるのが気になる人向けにはMEATERという温度計もあります。これは、プローブ自体にBluetoothの送信機が内蔵されているので、プローブからスマートフォンに直接、コードレスで温度を送信できます。プローブの両端で温度を測定し、食材の内部温度だけでなく周囲の温度も把握できるので、オーブン料理のほか、燻製などにも便利そうです。

触れずに計る温度計

 内部の温度を測る必要がある場合はスティック温度計が便利ですが、表面の温度を測りたい場合、または表面の温度さえわかればいい場合には、赤外線温度計という選択肢もあります。これは食品や調理器具から出る赤外線を検出して温度を測るので、対象に触れる必要がありません。「非接触温度計」とも呼ばれます。

 食品に直接触れないので、拭いたり洗ったりする手間がいりませんし、温度計の表面についた汚れが食品に混入する恐れもなく衛生的です。チョコレートなどのお菓子作りや揚げ物のほか、赤ちゃんのミルク作りなどにも用いられます。

 使い方もそれほど難しくなく、センサー部分を食品に向け、スイッチを押すだけ。私が使っているのは業務用タイプなのでちょっとごついのですが、日用品や調理機器を製造している貝印やドリテックから2000〜3000円程度で手軽・コンパクトな製品も出ているので、普段使いにはこちらの方が便利だと思います。
CUSTOMの放射温度計(CT-2000D)

ワイン用のスマート温度計

 赤外線温度計とは少し違うのですが、食品に直接触れずにはかる温度計に、Kelvinというワイン用の温度計があります。これはワインの飲み頃温度をワインボトルの外側から推定し、スマートフォンに送信するというものです。ワインは温度によって味の感じ方、香りの広がり方が異なります。せっかくいいワインを用意しても、冷たすぎたりぬるすぎたりしては台無しですし、安価なワインでも適切な温度条件で飲めばより美味しく飲むことができます。ワインボトルに巻きつけて使う温度計は以前からありましたが、Kelvinはスマホと接続して使える点がこれまでのものと異なります。

 まず、スマホ上で現在の温度を確認したりアラームを設定したりできるので、小まめに冷蔵庫を開けて確認する必要がなく、冷やしすぎの心配もありません。

 また、スマホアプリからワインの産地や品種を検索すれば、そのワインにあった設定温度がわかるので、ワインについての知識がなくてもおいしく飲むことができます。

 ボトルの外側から、本当に中身の温度がわかるものなのだろうかと思い、スティック温度計で確かめてみたところ、1〜2℃の誤差はありましたが、そもそも飲み頃の温度自体が「ミディアムボディの白ワイン:8〜11℃」というように幅のあるものなので、そこまで厳密である必要はなさそうです。

 ちょっとお高いワインを開けるときや、来客にワインを振る舞うときなど、より美味しくワインを飲みたいシーンに便利な温度計です。
ワイン用スマート温度計Kelvin
著者:平松 紘実
科学する料理研究家。食・科学ライター。科学をわかりやすく楽しく伝えたいと考え、大学在学中に、料理のコツを科学で解説するブログを始める。2011年よりライター、科学する料理研究家として本格的に活動を開始。2013年には初のレシピ本『「おいしい」を科学して、レシピにしました。」を刊行。
オフィシャルWebサイト「Official web site


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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