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Lifestyle 公開日: 2019.04.24

広がりをみせるフードシェア、さらなる普及のカギを握るのは?

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本格的な普及の兆しを見せてきたフードシェアサービス。その一方で、さらなる進展のための課題も浮き彫りになってきた。

 食品ロスを削減する取り組みは、レストランやコンビニエンスストア、スーパーなどの事業者と消費者を結びつけるマッチングサービスをはじめ、様々な広がりを見せている。例えば、従来、廃棄されていたはずの食品を割引価格で販売するECサイトも登場している。

 SynaBizが運営する「Otameshi」は、食品や日用品を割引価格で買いながら、同時に社会貢献できるサービスだ。賞味期限切れが迫っている商品や、商品パッケージが変更前の古い商品、パッケージに傷がある商品など、品質には問題がないにもかかわらず廃棄される商品をお得なお試し価格で購入できる。売り上げの一部は社会活動団体へ寄付される。商品の代金には寄付金額が含まれているため、どの商品を購入しても必ず寄付につながる仕組みだ。寄付先は、複数の団体の中から購入者が選ぶことができる。

 販売商品は幅広く、レトルト食品から缶詰、お菓子、調味料、飲料など品数も豊富。しかも、ただ安価になっているだけでは、賞味期限や消費期限が近い=鮮度の落ちた食材のイメージが先行してしまうだろう。そこで、各商品には、「なぜ安く提供されているのか」の理由も記載されているので、安心して購入できる。食品だけでなく、日用品や化粧品、ペット用品なども扱っているので、上手に利用すれば日常的にかなりの節約になるというメリットがある。

 一方、事業者と消費者という「BtoC」向けではなく、BtoBのサービスも注目されている。バリュードライバーズは、BtoB向けのフードシェアリングプラットフォーム「tabeloop」を提供している。賞味期限が近いため店頭に並ばない食品、味や品質に問題はないが形が不揃いだったり、傷がついていたりという理由で、市場に流通しない食品や包装が汚れている食品などを割安価格で販売する。

 各地域の生産者や食品メーカー、食品卸売業、小売業などの売り手と、外食店やお惣菜店、学生寮などの食堂、その他食品の使用量が多い企業や団体などの買い手を結びつけるBtoBのサービスで食品ロスの削減に取り組む。tabeloopもOtameshiと同様、売り上げの一部を、日本を含めた世界の飢餓や貧困に苦しむ人々のために寄付できる仕組みだ。

 いずれのサービスもメーカーや卸売は本来廃棄するはずだった商品、流通から弾かれた商品を販売でき、消費者はお得な価格で購入でき、しかも、社会的には食品ロスの削減に結びつき、さらには、社会支援団体がその活動資金を得ることもできる。食料の視点から、循環型社会を実現するための第一歩として有効な取り組みといえる。

LINEやドコモも食品ロス削減に動き出す

 このようにさまざまな新規サービスが登場しているフードシェアリングサービスだが、ベンチャー企業やスタートアップだけではなく、大手企業が主体となった取り組みや実証実験も進められている。

 NTTドコモは2018年1月に、スマートフォンアプリを使って食品ロスを削減する仕組み「EcoBuy」の実証実験に参加した。東京都環境局のモデル事業で、1月下旬から2月28日までの約1カ月間、東京都中央区のスーパーマーケット「miniピアゴ入船1丁目店」で実施。消費者は、賞味期限や消費期限が近くなったEcoBuy対象商品を購入し、アプリを通じてレシートや対象商品を撮影し、システムへ申請すると、インセンティブとして定価の20%相当のポイントが付与されるという仕組みをとった。

 またLINE Payも、2019年2月12日から2月28日まで実施された食品ロスなどの課題解決を目指す経済産業省の次世代店舗実証実験に参加した。これは、店舗の在庫状況と消費者ニーズのマッチングにより食品ロスを削減するというもの。実験店舗の対象商品に電子タグを貼付し、電子タグと連携した消費期限や賞味期限の情報を、コミュニケーションアプリ「LINE」を通じて配信。期限が迫ってお買い得になった商品の購入を促進する。

 いずれの実証実験も、NTTドコモやLINEなど、社会的に知られた企業が取り組んだことで、食品ロス問題について消費者の意識も高まったといえる。賞味期限や消費期限が近い食品の積極的な購入を促すことで、食品廃棄量を削減して食品ロス問題の継続的な解決を支援するものとなった。

フードシェアの普及のカギは大手外食チェーンに

 国内でフードシェアリングへの機運が高まった2018年は、「フードシェアリングサービス元年」と言われ、多彩なサービスやプラットフォームが登場した。それから約1年が経過し、さらに多彩なサービスが登場するにつれ、課題も浮き彫りになってきた。

 まず、フードシェアを実現するには、余剰食材を提供してくれる店舗など事業者をある程度確保しなくてはならないということ。特にフードシェアサービスの利用者が毎月一定額を支払えば、複数の店舗・事業者などからお得な商品を手に入れられる定額制サービスでは、利用者の近隣に登録店舗が少ないと、欲しい時に欲しい食品を手に入れられずメリットが薄れてしまう。また現在、サービスの提供地域が首都圏や都市圏に限定されているため、全国的に広がるにはまだ時間がかかる。

 フードシェアリングサービスが全国的に広がりにくい背景には、大手外食チェーンが消極的なことも挙げられる。食品なので安全性の保証が難しく、消費者へのリスクとなる可能性があることや、「調理したての料理を提供する」を提供するというブランドイメージに影響するなどの理由から、フードシェアリングサービスの導入に否定的な企業が見受けられる。こうした課題をクリアすると共に、消費者側も食品ロス問題に対する意識を高めることが、フードシェアリングサービスの普及をさらに推し進める上で不可欠となるだろう。


林 渉和子=タンクフル


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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