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Lifestyle 公開日: 2019.03.11

ダイムラーとBMWが共同出資、モビリティ事業新時代へ

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ベンツ✕BMWで目指す「モビリティサービスプロバイダー」。目指すのは、クオリティの高い都市生活への貢献。

 自動車メーカーにとって開発のための投資とは、かつてはシャシー、サスペンション、エンジンを含むパワートレインなどに集中していた。今は、何より重要なのはデジタル技術だ。

 2019年2月に、ドイツのダイムラー(メルセデス・ベンツの親会社)とBMWが共同出資により、モビリティサービスプロバイダーを設立することを発表し、業界を驚かせている。

 2社はさらに3月に、技術提携を行いながら次世代の自動運転技術を開発していくとニュースをリリースした。一連の報道により、自動車産業のありかたが従来と変わってきたことを印象づけたのだった。

 モビリティサービスプロバイダーとは、「REACH NOW」「CHARGE NOW」「FREE NOW」「PARK NOW」それに「SHARE NOW」という5つの事業体を統合することを指す。すべてスマートデバイスを活用した都市生活者のためのアプリケーションであることが共通している。
ダイムラーとBMWが出資するモビリティサービスは数多い(写真提供:Daimler/BMW)
 「REACH NOW」は、いわばマルチモーダルプラットフォームだ。スマートデバイスを通じて、A地点からB地点までの移動のためのさまざまな交通手段を提案する。地下鉄もバスもあれば、当然、カーシェアリングも含まれるという。加えて、一括した支払いが可能というのも特徴だ。

 「CHARGE NOW」は電気自動車の充電のためのアプリケーションを提供する。25カ国にまたがるサービスで、ユーザーはスマートデバイスで充電設備の地図が手に入るし、支払いもできる。

 充電のインフラストラクチャーとユーザーをつなぐことで、電気自動車などの事業に新規参入するスタートアップへの手助けになると、「CHARGE NOW」を展開してきたDigital Charging Solutions GmbHではうたう。
ベルリンでの発表会に集まったスタートアップの人々(写真提供:Daimler/BMW)
 「FREE NOW」は配車サービスおよびアプリケーションだ。自動車、運転手付き自動車、さらに電動スクーターまで豊富な移動手段をスマートデバイスで選べる。欧州とラテンアメリカですでにサービスが始まっており、2100万人の顧客を抱え、25万人の超えるドライバーが登録しているのだそうだ。
スマートフォンが都市内での移動に最適な移動を提案する時代(写真提供:Daimler/BMW)
 「PARK NOW」は駐車場を探すときに役立つアプリケーションだ。スマートデバイスのワンタップで空き状況がわかり、そこまで案内してもらえ、登録された公共駐車場なら支払いもキャッシュレスで行われる。欧州と北米の1100の都市で3000万人のユーザーを抱えているという。

 「SHARE NOW」はスマートフォンを使ったカーシェアリングのサービスで、特長は車両のバラエティの多さと謳う。世界各地の31の都市で2万台が登録され、会員は400万人を超える。

 「CHARGE NOW」「PARK NOW」そして「SHARE NOW」は、共通して、都市部の移動を快適にするとともに、渋滞の原因になる乗用車の数を減らすのに貢献していることをメリットにあげる。
「CHARGE NOW」は24カ国でサービスを展開中という(写真提供:Daimler/BMW)
「DRIVE NOW」に提供されるMINI(左)と、電気自動車もあるコンパクトなメルセデス・ベンツのスマート(写真提供:Daimler/BMW)
 個人所有の車両を減らすことで、都市内の渋滞緩和への貢献という。また「PARK NOW」によると、都市内の3割の車両は駐車場を探してうろうろしているそうで、その流れを整理できれば渋滞が大きく解消されるとしている。

 従来の自動車メーカーが、都市内の自動車を減らすことをうたう事業に参入するのが、今回のニュースの興味深い点だ。ダイムラーとBMWは、今回の事業のために10億ドルを拠出する予定だ。BMWの取締役会会長ハラルド・クリューガー氏は以下のように述べる。
ダイムラー取締役会会長のディーター・ツェッツェ氏(右)とBMW取締役会会長のハラルド・クルーガー氏(写真提供:Daimler/BMW)
「私たちはこの共同事業に投資を続け、成長に向かって進んでいきます。そしてより多くの人が、今まで以上にクオリティの高い都市生活を送れるようにしていきたいと考えています」

 両社はこれにより、世界中で1000に及ぶ新しいジョブが創出されるとする。事業の主体はベルリンという。だが、地域にこだわっていると、有能な人材の発掘に手間取ることもあり得る。

 メルセデス・ベンツは2018年秋に電気自動車「EQC」を発表した際、お披露目の場所としてスウェーデンのストックホルムを選んだ。理由として、人口あたりのプログラマーの数の多さを挙げた。

 ストックホルムのように、ソフトウエア開発を得意とする都市こそ、新しい時代のモビリティ(もはや自動車とは呼ばれない)にとって重要だという示唆である。

 実際のストックホルムとメルセデス・ベンツの関係は定かではないが、クルマ産業のあり方が変わってきていることは間違いない。かつて”モータウンMotor+Town”と呼ばれるような地域は、工場にとって有利な条件が揃う場所だった。

 労働力を確保できたり、資源の搬入が容易だったり、もちろん地域が税制優遇措置を与えてくれたり……。開発拠点としては、有能な人材を惹きつける魅力を持つロサンゼルスやバルセロナ、それにニースなどの立地が重要だった。今は、むしろ、どこでもよい。

 スタートアップ企業とうまく付き合い、消費者が求める形でモビリティサービスを提供することを、スポーツカー開発に熱心なBMWや、F1に力を入れるダイムラーが積極的に考えているのだ。
BMW( Vision Next 100)とメルセデス・ベンツ( F015)はともに将来に向けてのコンセプト(写真提供:Daimler/BMW)


小川 フミオ


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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