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Lifestyle 公開日: 2019.05.14

2018年流行語大賞はコネクテッド?クルマへの実装進む通信モジュール

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ニューモデルの多くに実装される通信モジュール。フォルクスワーゲンは2008年以降のクルマ向けに「DataPlug」を提供

従来のポロをベースにしたコンパクトSUV「T-CROSS」(写真提供:Volkswagen)
 2018年の自動車業界の流行語大賞といったら、何を思い浮かべるだろうか。有力候補は「コネクテッド」だろう。ニューモデルの多くは通信モジュールを備えて登場した。万が一の際のコールセンターへの緊急通報から、Apple CarPlayやGoogle Play、さらにはスマートデバイスによるエアコンやドアロックの操作まで、通信を使った技術が広まった。

 そのなかで特におもしろかったのが、新車の取材中に、半ば偶然出会ったフォルクスワーゲン(VW)の「VW Connect DataPlug」という技術だ。2008年以降のVW車なら後付けで装着できる通信用モジュールである。
新型車「VW T-CROSS」の試乗会時にお披露目されたDataPlug(筆者撮影)
DataPlugは2008年以降の車両なら使えるというのが画期的(出所:Volkswagen)
 私が見せてもらったDataPlugは、意外なほどコンパクトな品だ。フォルクスワーゲンのディーラーで購入できるので、オーナーはステアリングホイールのコラムのスロットに差し込めばよい(とのこと)。
DataPlugはステアリングホイールのコラムの下に差し込む(出所:Volkswagen)
 そのスロットは、サービス工場で車両ダイアグノーシスのためにコンピューターを接続するためのものである。そこに差し込まれたDataPlugはさまざまな情報を提供してくれる。一つは「トラベルログ」なるもので、任意のドライブ旅行を選んで使ったルート、燃費、所要時間などをPDFのかたちで、スマートデバイスやコンピューターで取り出せる。
スマートフォンのアプリとDataPlugは連動している(出所:Volkswagen)
 「ドライビングスタイル」は自分の運転診断のためのアプリだ。加速、ブレーキング、速度、常用したエンジン回転域などの情報がまとめられる。それをチェックしているだけでもおもしろいかもしれないが、VWでは「エコ運転のために活用できる」としている。

 「パーキングスペース」は、どこに車両を駐めたか。場所や駐車時間を管理でき、さらに、駐めた場所まで道案内をしてくれる。同時に任意の人に、自車の位置を教えることもできるそうだ。
 「12週に一度、DataPlugのソフトウエアをアップデートしていくので、使い勝手はかなりいいはずです」。VWの担当者はそう説明しくれた。最近ではサードパーティ製のDataPlugも市販されているようだが、「互換性は保証できないしトラブルの責任もとれないので、お勧めできません」とのことである。
アップデートはまずスマートデバイス、つぎにDataPlugの順で自動的に行われるそうだ(出所:Volkswagen)
 コネクティビティの短期的目標が、先に挙げたようにインフォテイメント系の充実であるのに対して、中期目標はEV(電気自動車)の充電を含めた遠隔管理ともいわれる。さらに長期目標は(完全)自動運転車両の管理だろう。

 喫緊の課題はもう一つある。大衆車と言われる車両への普及だ。これまでコネクティビティは、どちらかというと、アッパークラスのクルマのためのものだった。販売戦略もあったはずだが、コネクティビティとは車両同士もネットワーク化されて“つながる”ことを意味している。

 渋滞情報などクラウドによる情報管理が必然的な流れと言われるなかで、情報を提供してくれる車両の数は多ければ多いほど、データの正確性が増す。1000万円を超えるクルマより、200万円程度のクルマのほうが路上を走る数は多いわけで、データ端末としての存在感は大きい。

 この分野で先駆けているのは、このサイトでも取り上げてきたメルセデス・ベンツだ。日本だと328万円からという価格の「Aクラス」でもコネクティビティを充実させるなど、目先のマーケティングより、もうすこし先を見据えたデジタル戦略を採用しているのは明らかだ。

 VWは大きなメーカーであり、アッパーミドルクラスの車両も手がけているが、これまで、コネクティビティの分野では、メルセデス・ベンツやBMWの後塵を拝してきた感がなきにしもあらずだ。

 しかし、冒頭のように、EU圏だけで2018年は175万台超を販売という大きなパイを持つVWが、後付けの通信モジュールを販売し、一気に車両の情報端末化を推進しようとしているのは大きなニュースといえる。

 日本でも2019年9月をめどにVW Connect DataPlugの導入を検討中と、日本現地法人のフォルクスワーゲングループジャパン広報担当者は述べている。


小川 フミオ


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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