Lifestyle
公開日: 2019.01.08
アウディが「e-tron」で見せる“デジタルとモビリティの合体”
アウディ渾身のEVがついに登場。大型バッテリーが生み出す圧巻の性能。
独アウディが長い間噂されていた電気自動車(EV)の「e-tron(イートロン)」を発売した。試乗会もさっそく2018年12月にアブダビの「マスダールシティ」をベースに開催された。
アウディでは2009年から「イートロン」の名称をいくつものコンセプトモデルに使用してきた。スタイルやコンセプトはその時によって異なるが、共通していたのは“未来的”ともいえるイメージだ。
パワートレインはハイブリッドもしくは電気と、代替燃料を使う提案だった。それが今回ついに現実化したのだ。このあとは早くも「e-tronスポーツバック」などモデル展開が早そうだ。
アウディでは2009年から「イートロン」の名称をいくつものコンセプトモデルに使用してきた。スタイルやコンセプトはその時によって異なるが、共通していたのは“未来的”ともいえるイメージだ。
パワートレインはハイブリッドもしくは電気と、代替燃料を使う提案だった。それが今回ついに現実化したのだ。このあとは早くも「e-tronスポーツバック」などモデル展開が早そうだ。
市場会場のマスダールシティと好相性
アウディがどこから「トロン」の名称をピックアップしたかはさだかではないが、日本にいる私たちには、コンピュータ科学者の坂村 健氏が1980年代に発表したオープンアーキテクチャーの「TRONプロジェクト」を連想する。
その命名のもとはディズニー映画「トロン」(1982年)だという。映画では電動バイクが印象的だった。いずれにしても、アウディe-tronの名は、デジタルとモビリティの合体をイメージしてのことととらえていいかもしれない。
今回の試乗会で着目してほしいのは試乗会場だとアウディは言っていた。アブダビ空港そばのマスダールシティである。UAE(アラブ首長国連邦)の肝煎りで2006年に開発されたゼロエミッションのための実験都市である。
実際に私がそこで見たのは、英のフォスター・アンド・パートナーズが設計した街区の外側に広がる太陽光発電パネルだ。最初は大きな湖かと思ったほどの広大さである。そこで自然エネルギーをつくり、EVの充電にも役立てている。
サステナブルな社会を(中東に)どう作っていくか。未来への道筋を見つける努力がかたちとなったのがマスダールシティだ。そこと、従来から都市とモビリティというテーマに注目して、さまざまなイニシアティブ(発議)を行ってきたアウディとは、相性がよいということである。
その命名のもとはディズニー映画「トロン」(1982年)だという。映画では電動バイクが印象的だった。いずれにしても、アウディe-tronの名は、デジタルとモビリティの合体をイメージしてのことととらえていいかもしれない。
今回の試乗会で着目してほしいのは試乗会場だとアウディは言っていた。アブダビ空港そばのマスダールシティである。UAE(アラブ首長国連邦)の肝煎りで2006年に開発されたゼロエミッションのための実験都市である。
実際に私がそこで見たのは、英のフォスター・アンド・パートナーズが設計した街区の外側に広がる太陽光発電パネルだ。最初は大きな湖かと思ったほどの広大さである。そこで自然エネルギーをつくり、EVの充電にも役立てている。
サステナブルな社会を(中東に)どう作っていくか。未来への道筋を見つける努力がかたちとなったのがマスダールシティだ。そこと、従来から都市とモビリティというテーマに注目して、さまざまなイニシアティブ(発議)を行ってきたアウディとは、相性がよいということである。
e-tronは2基の電動モーターに、電動式の全輪駆動システムを組み合わせたドライブトレインを持つ。車体はSUVとハッチバックの中間的ないわゆるクロスオーバー型で、斬新さというより、路上で見かけてもまったく違和感がないのが特徴と言えば特徴だ。
95キロワット時の出力を持つ大型のリチウムイオンバッテリーをアルミニウム製の堅牢なケースに入れて、それを前輪と後輪の間の床下に収めてある。電気モーターの出力はブースト時は300キロワットにまで達する。同様にトルクも664Nmまでいくという。アウディでいえば4リッターV8の大型セダン「A8 60」と同等の数値だ。
95キロワット時の出力を持つ大型のリチウムイオンバッテリーをアルミニウム製の堅牢なケースに入れて、それを前輪と後輪の間の床下に収めてある。電気モーターの出力はブースト時は300キロワットにまで達する。同様にトルクも664Nmまでいくという。アウディでいえば4リッターV8の大型セダン「A8 60」と同等の数値だ。
前後の電気モーターで前後輪を駆動するシステム搭載
エンジンがないので前にも60リッターの荷室がある
フル充電で約400キロの航続距離を持つという
車体は全長が4.9メートルもあり、写真での印象より実物はもっとずっと大きかった。しかしパワフルなパワートレインのおかげで、走りはすばらしく力強い。コクピットは化石燃料を使う車両と同じコンセプトで設計されているので違和感はまったくなし。しかしアクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、驚くほどの加速力を見せるのはフツウではない。
全長4.9メートルと大きいがスタイリッシュ
加速とともに静粛性も高く、室内の作りを含めて質感が高いのは、アウディ車への期待を裏切らない。車重(バネ上荷重ともいう)が重い分、乗り心地はよく、へたな高級大型セダンよりずっと快適な走りを体験できる。
スピードが出るうえ乗り心地は快適
普通タイヤで砂漠も見事に走破
デジタル技術は、あらゆるところで活用される。乗り心地のよさは、瞬時に路面の状況に反応する電子制御ダンパーの働きも大きいはずだ。「e-quattro(イークワトロ)」という電子制御の完全電気式の4輪駆動システムも特徴的だ。
ブレーキについても電子制御され、回生といってブレーキング時にバッテリーに電気を回収するモードが重視されており、強く踏んだときに初めて物理的なブレーキが作動するようになっている。
同時にアクセルペダルの踏み込み加減によるエネルギー回生についても、ユニークなシステムが採用されている。ステアリングホイールのコラムのレバーで回生の強さを段階的に調節できるようになっているのだ。
回生を強くするとアクセルペダルに載せた足の力を弱めたときに、いわゆるエンジンブレーキのような制動が強めにかかる。BMW(i3)などはこれを逆に利用して、アクセルペダルだけで加速と減速を行えることを「ワンペダルポリシー」などと言っているが、都市内ではたしかに便利である。
バッテリーが大きいということは充電にもそれなりに時間がかかることを意味する。テスラはそのため「スーパチャージャー」という独自の充電施設を設けている。アウディの場合、欧州では急速充電ネットワーク「アイオニティIonity」に対応する。日本ではもちろん「CHAdeMO」も使えるそうだ。
アブダビでの試乗は、市街地、山岳路、それに砂漠!と多様だった。山岳路の下りはさきに触れた回生装置を作動させると速度がコントロールできて、クルマが操りやすいときもあった。砂漠ではクワトロシステムのおかげで、普通のタイヤでも予想以上の走破性を見せたのにも感心させられた。
ここまで完成度が高く、かつオールマイティに使えるEVが登場したことで、2019年は自動車界には大きなターニングポイントになるかもしれない。これをデジタル技術の恩恵という側面からみれば、自動車を大きく変えたのに驚かされた。
Text/小川 フミオ
ブレーキについても電子制御され、回生といってブレーキング時にバッテリーに電気を回収するモードが重視されており、強く踏んだときに初めて物理的なブレーキが作動するようになっている。
同時にアクセルペダルの踏み込み加減によるエネルギー回生についても、ユニークなシステムが採用されている。ステアリングホイールのコラムのレバーで回生の強さを段階的に調節できるようになっているのだ。
回生を強くするとアクセルペダルに載せた足の力を弱めたときに、いわゆるエンジンブレーキのような制動が強めにかかる。BMW(i3)などはこれを逆に利用して、アクセルペダルだけで加速と減速を行えることを「ワンペダルポリシー」などと言っているが、都市内ではたしかに便利である。
バッテリーが大きいということは充電にもそれなりに時間がかかることを意味する。テスラはそのため「スーパチャージャー」という独自の充電施設を設けている。アウディの場合、欧州では急速充電ネットワーク「アイオニティIonity」に対応する。日本ではもちろん「CHAdeMO」も使えるそうだ。
アブダビでの試乗は、市街地、山岳路、それに砂漠!と多様だった。山岳路の下りはさきに触れた回生装置を作動させると速度がコントロールできて、クルマが操りやすいときもあった。砂漠ではクワトロシステムのおかげで、普通のタイヤでも予想以上の走破性を見せたのにも感心させられた。
ここまで完成度が高く、かつオールマイティに使えるEVが登場したことで、2019年は自動車界には大きなターニングポイントになるかもしれない。これをデジタル技術の恩恵という側面からみれば、自動車を大きく変えたのに驚かされた。
Text/小川 フミオ
本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.
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