sansansansan
  • DIGITALIST
  • Articles
  • 最先端技術を投入 CES2022で公開された「ソニーが本気で作るクルマ」とは
Pocket HatenaBlog facebook Twitter Close
Lifestyle 公開日: 2022.02.07

最先端技術を投入 CES2022で公開された「ソニーが本気で作るクルマ」とは

お気に入り

 ソニーが、米ラスベガスで2022年1月に開催された「CES2022」において、ピュアEVのプロトタイプを公開して話題を呼んでいる。

VISION-S 01のスタイリングはソニー社内のクリエイティブセンターが担当したという
 「ソニーの最先端技術を継続的に投入し、EV化が進むモビリティ環境における新たなモビリティ体験の提供に向けて」の開発と、プレスリリースにも記された。

 どこが興味深いか。もちろん一番は、ソニーが(ついに?)本格的に自動車ビジネスに乗り出すのではないかと期待させるところだ。これまでにもソニーは、2001年にトヨタ自動車と共同で「pod」と名付けたコンセプトカーを発表したことがある。
ソニーとトヨタが共同開発したコンセプトモデル「pod」
 podは、「ミニpod」と呼ばれる携帯型端末にドライバーのプロファイルが登録されていて、これを持ってクルマに近づくと、まるでイヌ(aibo)が喜ぶかのごとく、車体のランプなどを使って、まるで感情があるような表現がなされる。昨今の量産車に採り入れたスマート端末を使ってのスマートキーのアイデアも、このとき発表された。
「pod」のインテリア(右の座席の奥に備わっているのが操舵もアクセルもブレーキも操作するドライブコントローラー)
 しかし、「pod」はあいにく、2001年の東京モーターショー出展で終わってしまった。今回、「VISION-S」と名付けられたピュアEVは、podとは関係なく、新しい体制が組まれ、2018年に計画がスタートしたという。当時ほどの斬新な驚きを与えてくれる技術は少ないものの、その分、製品化に向けての本気が感じられる。

 「ソニーは、2020年のCESで、過去10年のメガトレンドは、モバイル(スマートフォン)で、今後のメガトレンドはモビリティーになる、として、『モビリティの進化に貢献していくことを目指して、VISION-Sというプロジェクトを立ち上げた』と発表し、プロトタイプ車両を公開。その後、欧州で走行試験を繰り返してきました」
VISION-S 01は4ドアファストバック
 ソニーの広報担当者は上記のように説明してくれる。実際、同社は、2022年春に事業会社「ソニーモビリティ株式会社」を設立。「EVの市場投入を本格的に検討していきます」と発表しているのだ。

 この事業会社は、「AI・ロボティクス技術を最大限に活用し、誰もが日常的にロボットと共生する世界を実現し、人を感動で満たし、社会へ貢献することを目指します」という。エンターテインメントロボットのaibo、ドローンのAirpeak、その先にあるのが、モビリティーとしてのVISION-Sだそうだ。

 VISION-Sは、2020年12月には欧州で公道走行テストが始まっている。車内外に搭載されたイメージング・センシング技術や、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)システムなどの安全性や、ユーザーエクスペリエンスの検証のため、と説明された。さらに2021年4月には5G走行試験が開始された。
テールライトのLEDが中央でSの字を作るなど、芸が細かい
 今は、鋭意開発中と報道されるApple Carが話題になったり、EV時代を目前に控えて、自動車産業の在り方が大きな変革を迎えようとしている。
 これまで、自動車産業は経験主義だった。データの蓄積こそが優れた製品開発に結びつくとされている。例えば、メルセデス・ベンツのクルマ作り。「零下40度Cのロシア戦線で、わが社のディーゼルエンジンが停止したのはいかなる理由によってか」など、厳寒や酷暑の戦場からのレポートがきちんと保管整理されていて、その分析をずっと開発に役立てている、などと言われたりしてきた。

 昨今でいうと、年を追うごとに厳しさを増す衝突安全基準への対応も、専門家でないと難しいこと、と自動車メーカーではしている。ところが、EVのオーナーが重視しそうな、新しい視野に立った通信技術の展開となると、逆に、IT企業が強みを発揮できる分野なのだ。

 そこで、これからのクルマ作りは”分業”によって行われる、といわれるようになってきた。大きくいえば、EV用のプラットフォーム(車台)の開発製造と、ソフトウエアの開発だ。それを”ガッチャンコ”することで、未来のクルマが生まれる。

 ソニーのVISION-Sも、同社の技術がふんだんに盛り込まれるようだ。「スマートフォンの開発を通じて培ってきた通信技術や通信セキュリティーなどの社内技術や知見を生かしたリモート運転を自動運転時代の到来を見据えた重要技術と位置付けています」と、車両の紹介に記される。

 さらに、高感度、高精細、広ダイナミックレンジのCMOSイメージセンサーや立体空間を3Dで把握するLiDAR(ライダー)により、周辺環境を認識・把握する。緊急車両の走行などの周辺環境の状況は、音響システムやHMI(ヒューマンマシンインターフェース)システムと連携してドライバーに伝えるという。

 ToF方式距離画像センサーは、ドライバー認証やパッセンジャーのモニタリング、手の動きで操作ができるジェスチャーコマンドや音声コマンドに対応。ユーザーの好みに合わせて、新たに車両のディスプレイテーマや加減速音を設定できる機能も盛り込むとか。

 5G通信を含めたモバイル通信を用いて、車両とクラウドシステムを連携させることで、車両設定やキーの施錠、ユーザーの設定が同期。システムのアップデートはインターネット経由の”オーバー・ジ・エア(Over the air)”で行われるそうだ。

 ソニーなので、インフォテインメント技術も重要視されている。オーディオは、立体的な音場を実現するためのシートスピーカーと「360 Reality Audio」に対応したストリーミングサービスで構成される。
さまざまなインフォテインメントが楽しめるというダッシュボードの巨大モニター
 映像面では、車室内の前方にパノラミックスクリーンを、リアシートの各席にディスプレイが設置される。「臨場感のある映像視聴体験が提供される」とはソニーの説明。加えて、映像配信サービス「BRAVIA CORE for VISION-S」を搭載するという。やはり重視される車内でのゲームでは、ソニーの強みを生かして、PlayStationにリモート接続させるという。

 車両開発を担当するのは、オーストリアのマグナシュタイヤー。内燃機関を持つ自動車からハイブリッド車、電気自動車までを受託生産するのが同社のビジネスモデルで、自動車業界では、よく知られた企業だ。例えばメルセデス・ベンツの4MATICなる全輪駆動システムも同社が開発した。

 このように開発体制も整っているようだ。マーケティングについては、まだ発表は控えたいと、ソニーの広報担当者は前置きしつつ、日米欧での販売を目指すと教えてくれた。
VISION-S 02はSUVの提案
画像提供/Sony Group Corporation
Text/小川フミオ

関連記事

DIGITALIST会員が
できること

  • 会員限定記事が全て読める
  • 厳選情報をメルマガで確認
  • 同業他社のニュースを閲覧
    ※本機能は、一部ご利用いただけない会員様がいます。

公開終了のお知らせ

2024年1月24日以降に
ウェブサイトの公開を終了いたします