sansansansan
  • DIGITALIST
  • Articles
  • 【デジタルな生活はいかが?】飲食業界はこう変わる!食に関わるデジタル技術がずらり──HCJ2019
Pocket HatenaBlog facebook Twitter Close
Lifestyle 公開日: 2019.03.06

【デジタルな生活はいかが?】飲食業界はこう変わる!食に関わるデジタル技術がずらり──HCJ2019

お気に入り

自動レジ、自動レストラン、食の安全の見える化…。飲食業界でも様々な場面にデジタル技術が入り込む。

 2月19日〜22日、東京ビッグサイトで開催された「HCJ2019」に行ってきました。これは国際ホテル・レストラン・ショーとフード・ケータリングショー、厨房設備機器展の3つの展示会で構成される催しで、ホテル・旅館や飲食業界に関する新商品やサービスが展示されました。最新の厨房設備や店舗運営を円滑にするサービスが多数並ぶ中、外食産業をサポートするデジタル技術をいくつか見かけたのでご紹介します。

画像認識による自動レジ

 多くの社員食堂や学生食堂では、好きな料理を選んでトレイにのせ、ご飯やおかずを好きな組み合わせで食べられるカフェテリア方式が採用されています。精算の際には、店員が料理名を選んでレジに入力する必要がありますが、これを画像認識によって自動化したのが、ソフトムの「画像AIレジシステム」です。

 料理を載せたトレイを台に置くと、トレイ上に設置されたカメラが料理を自動撮影。登録されている料理のどれに該当するかをAIが判断し、レジ画面上に料理名、値段、カロリーなどを表示するというシステムで、ICカードの読み取り機や自動釣銭機を組み合わせれば、店員を置かずに自動精算が可能です。

 これまでにもRFID(タグとリーダーの間で電波を交信し情報を読み取るシステム)のタグをお皿に取り付け、タグの情報を読み取ることで自動精算を行うシステムが実用化されていますが、お皿の数だけタグが必要になる、お皿ごとに決まった料理しか載せられないので通常の何倍もお皿を用意しなければならない、お皿を新調する際にはタグを付け替える作業が必要になるなど、手間やコスト面での課題が多くありました。

 一方、画像認識を用いた自動レジでは、お皿の種類に関係なく料理を認識できるので、料理ごとにお皿を使い分ける必要も、タグを大量に用意する必要もありません。角度や盛り方を少しずらした写真を1メニューにつき4枚ほど撮影し、登録するだけなので、メニューの変更にも柔軟に対応できます。

 展示ブースでは、料理の模型を使って実際に画像認識から精算までの流れを体験させてもらいましたが、画面の指示に従ってトレイを置き、あとはスーパーの無人レジのようにカードなり現金なりで精算を行えば良いので非常に簡単でした。付け合わせの位置を変えたり、フライを並べ替えたりという意地悪をしてみましたが、ちゃんと認識してくれました。

 画像認識による自動レジは、NECの展示ブースでも紹介されていました。仕組みや方法は先ほどのソフトムと同様で、あらかじめ登録しておいた写真を元にAIがトレイ上の料理を判別し、レジに表示するというシステムです。

 盛り付け方が違ったりお皿の種類が変わったりしても、概ね問題なく認識できるそうですが、あまりにも違っていると認識できないこともあるそう。ただ、その場合も「多分これは生姜焼きか、ポークソテーのどちらかだろう」というように候補を複数提示し、店員が選択するという形で解決できるため、複数のレジに1人店員がつくという形で運用すれば問題なさそうです。また、AIが提示した候補から店員が正解を提示することで「この画像も生姜焼きである」ことがフィードバックされるので、使えば使うほど、より正確に認識できるようになるのだそうです。

未来の自動レストラン

 NECのブースでは、画像認識レジの他にも、ICTを活用した外食店舗の自動化について、いくつかのソリューションを紹介していました。今回の展示会では、様々なブースで「人手不足への対策」というフレーズを聞きましたが、NECでは人手不足の問題に対し、「ICTで解決できる部分はICTに任せ、人にしかできない部分に人材を集中させる」というあり方を提案していました。

 まず、予約の受付にはネット予約システムを活用。これは既に一般的になっていますね。来店した客をロボットが出迎えます。あらかじめスマートフォンのカメラから顔登録を済ませておけば、店に入った瞬間にロボットが予約と照合し、席へ案内することも可能です。

 注文はセルフオーダー端末や卓上ロボットから受け付けます。セルフオーダー端末は、メニュー兼注文用のタブレットで、既に居酒屋や回転寿司店などでよく見かけるようになりました。セルフオーダー端末では、メニュー名を選択して注文を行う必要がありますが、ロボットによる注文対応では「オススメの肉料理」などの曖昧な注文もできるそう。一昔前にはかなりSFっぽいイメージでしたが、Pepperによる接客はもはや物珍しくもなくなってきましたし、最近ではスマートスピーカーのユーザーも増えつつあり、あまり抵抗なく受け入れられそうな気がします。顔認証と組み合わせれば、これまでの注文履歴を参照して「いつものワイン」といった注文にも応えることができます。

 顔認証機能はクレジットカード情報とひも付けておけば、財布を出すことなく会計を済ませられます。顔認証での決済は現在、三田国際ビルにあるNEC社員専用のコンビニで試験運用中。近い将来、顔パスで会計を済む時代が来るかもしれません。

HACCP対応や勤怠管理もデジタルで効率化

 ICTによる自動化で効率化できるのは接客だけではありません。2018年、食品衛生法が一部改正され、2020年にはHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が制度化されることになりました。これにより、冷蔵庫や冷凍庫の温度を定期的に確認する、機材洗浄や清掃などの作業をいつ誰が行ったかを記録するなど、定期的なチェックや記録といった業務が増加・複雑化することが予想されます。

 パナソニックが提供する遠隔データサービスS-cuboでは、こういった設備の管理や、従業員の作業記録を自動で行い、管理の手間を削減するサポートを提案しています。

 例えば冷蔵庫の温度を管理し、記録するという作業は、無線温度計測機を冷蔵庫に設置し、自動でクラウド上に記録・共有されるようにすることで、人手をかけることなく行えます。

 機材洗浄や清掃などの作業を、いつ、誰が行ったのかということを紙で記録するのも、記入の手間もかかりますしとりまとめも面倒です。そこで、作業場に設置した機器にRFIDタグやQRコードをかざす、顔認証を行うなどの方法で、簡便に記録できるようにすれば、取りまとめも簡単で、間違いも少ないというわけです。

VRで安全教育

 安全教育にVRを活用する取り組みも見かけました。東京ガスが製作したもので、業務用厨房の事故をVR上で体験し、正しい操作方法を学ぶことができます。

 ガスオーブンなどの厨房機器は使用手順や方法を誤ると、怪我や機器の破損を引き起こすことがあります。このプログラムは、(1)誤った使用方法の体験、(2)正しい使用方法の解説、(3)正しい使用方法の体験という構成になっていて、まずは誤った使い方とそれによって発生する事故をVR上で体験し、何がいけなかったのか、安全に使うにはどういう手順でやれば良いのかを学習、最後に正しい手順での使用をVR上で体験します。

 会場で体験させていただいたのは、業務用オーブンの異常着火事故。ゴーグルをかぶると厨房の中にいるような映像が見え、リモコン操作でオーブンを開けたり、ガス栓や点火棒を動かしたりしてオーブンへの点火を体験します。漏れたガスに火がついて、目の前に炎が上がる映像はなかなかリアルで、思わず「うわっ」と声が出てしまいました。座学や映像を使ったものに比べると、手や体を動かすので、ぼーっとしたり眠くなったりしませんし、実際にその手順を体験しているような感覚になるので、身につきやすいように感じました。

誰でもおいしく正確に

 調理機器で面白かったのは、2019年8月に発売予定のIHヒーター「Repro」です。一般的なコンロやIHヒーターの火力調節は、強火〜弱火(とろ火)を何段階かに分けた出力(鍋にどれくらいのエネルギーを加えるか)でのコントロールになっています。一方、このヒーターは本体天面についた温度センサーと、煮汁に差し込んで使える棒状の温度センサーによって鍋底や鍋内の温度を測定し、設定した温度を維持した加熱を行うことができます。

 例えば昆布だしは、60℃の湯に昆布を1時間浸しておくと、雑味がなくうま味の強い出汁を引くことができますが、常に60℃を保つよう火加減を調節し続けるのはなかなか骨が折れます。このヒーターは、棒状のセンサーを水に挿し込み、60℃・60分と設定するだけで、一定の温度を保つよう火加減を自動で調節してくれます。

 肉を焼いたり、卵料理を作ったりする際にも、温度が非常に重要となります。普通、これらの作り方について説明する際には「フライパンが十分に温まったら」など曖昧な表現しかできず、適温での調理には経験や勘が必要でした。しかし、このヒーターでは、フライパン底面の温度をもとに、フライパン表面の温度を推測し、最適な温度になったところで食材を入れて適温を保ったまま調理を行うことができます。いったん、最適な温度設定や時間、レシピが確定すれば、そのプログラムを使って誰でもそれなりにおいしく肉や卵を調理できるというわけです。

 専用アプリでレシピと設定を保存・公開することもでき、他の人が考案した温度設定で調理をしたり、公開範囲をグループ内に設定して店舗内でレシピを共有したりといった使い方もできます。

 温度とタイマー設定を活用すれば、長時間の火加減調節を行う料理に人がかかりきりになる必要がありませんし、経験の少ないスタッフにも任せられる仕事の幅が広がるので、人手の足りない飲食店向けにも使えそうですし、業務用だけでなく一般向けにも販売される予定なので、凝り性で料理が趣味という方にとっても面白いツールなのではないかと思います。

これからの飲食業界とデジタル

 今回の展示会では、画像認識による自動レジや、ロボットによる接客・注文受付など、これまで人間がやっていた業務を機械が代行するという製品やサービスがいくつも提案されていました。これは単に人手を補うというだけでなく、「冷蔵庫の温度や作業の実施を忘れずに記録する」「鍋内の温度が一定になるよう火加減を随時調節する」といった、人間よりも機械の方が得意な作業を機械に任せられるという利点があるでしょう。一方で、接客などはロボットではなく人間にやってもらいたいという人が多いでしょうし、イレギュラーな出来事への対応にはまだまだ人間の方が向いているでしょう。これからは、人間が得意なことは人間に、機械が得意なことは機械に、うまく分業することで、人手不足を解消し、さらにはサービスの質を向上していけるのではないでしょうか。
著者:平松 紘実
科学する料理研究家。食・科学ライター。科学をわかりやすく楽しく伝えたいと考え、大学在学中に、料理のコツを科学で解説するブログを始める。2011年よりライター、科学する料理研究家として本格的に活動を開始。2013年には初のレシピ本『「おいしい」を科学して、レシピにしました。」を刊行。
オフィシャルWebサイト「Official web site


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

関連記事

DIGITALIST会員が
できること

  • 会員限定記事が全て読める
  • 厳選情報をメルマガで確認
  • 同業他社のニュースを閲覧
    ※本機能は、一部ご利用いただけない会員様がいます。

公開終了のお知らせ

2024年1月24日以降に
ウェブサイトの公開を終了いたします