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Lifestyle 公開日: 2018.12.19

音声だけで操作できるクルマへ、BMWが実装する

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23言語を理解する「万能な助手」、スケジュールに合わせた行動アドバイスも。

新型3シリーズ(写真は「330i」)。動力性能があがった点が特徴。(写真提供:BMW)
 昨今の自動車業界の話題は、デジタルアシスタントだ。インフォテイメント(カーナビとか音楽)の操作を、まるでスマートフォンのように画面でのスワイプやピンチアウトで行える新車が増えている。

 一方で、それはもう既に古い、とばかりに、音声によるコマンドも登場した。BMWは実はこの分野の先駆者で、2018年10月に発表された新型「3シリーズ」で「BMWインテリジェントパーソナルアシスト」なるシステムを導入した。

 実際は、BMWから研究者が移籍したメルセデス・ベンツが、新型Aクラスの「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザーエクスペリエンス)」で先んじてしまった。ようやくBMWは追いついたことになる。

 私は2018年11月の終わりに、この新型3シリーズの試乗のためにポルトガルは最南端のリゾート、ファロに出かけた。そこで「BMWインテリジェントパーソナルアシスト」を体験できたのだった。
BMWインテリジェントパーソナルアシスタントは、「 BMWオペレーティングシステム7.0 」の一部として搭載される(写真提供:BMW)
 こういうことを書くとBMWには悪いけれど、基本的にはメルセデス・ベンツのシステムと同じだ。「ヘイ、ビーエムダブリュー」と呼びかけると、システムが「何かご用ですか?」と応える。
「へイ、ビーエムダブリュー」と呼びかけると、AIがこのように応えてくれる(写真提供:BMW)
 試乗会では英語でのやり取りだったが、既に日本語版もテストが終わっていて、新型3シリーズ発売の折には、このシステムも導入されるのではないかと予想できる。

「基本仕様として23の言語および市場の音声入力機能が導入されます。さらに米国、ドイツ、英国、イタリア、フランス、スペイン、スイス、オーストリア、 ブラジル、日本の各国(2019年5月以降は中国も含む)では、より自然な言葉使いでBMWインテリジェント・パーソナルアシスタントの多くのインテリジェントな機能を利用できます」

BMWは上記のようにしている。「(ドライバーの)万能な助手」というのが、このシステムの定義である。

「(BMWインテリジェント・パーソナルアシスタントは)ドライバーの予定を把握しているので、約束に間に合うように目的地まで案内します。その際、このアシスタントは目的地付近の駐車場を探し、目的地までのルートの交通状況などを知らせたり、遅れないように出発の合図を送ったりしてくれます。また、頻繁に通う目的地も覚えます」

BMWではこのシステムの特徴を説明する。

「自分のBMWを移動するオフィスに仕立て、マイクロソフトのオフィス365の利用やスカイプ接続もできるので、必要に応じて電話会議をつないだり、電子メールを読み上げたりもします。エンターテイメント・プログラムの専門家にもなります。ラジオで流れている曲の名前を教えてくれ、(「クラシック音楽が聴きたいな」などのコマンドに対応して)好みの音楽を聴ける放送局を見つけてくれます」
「暑い」と告げたあと具体的な温度設定も可能(写真提供:BMW)
 BMWの開発担当者によると、このシステムの利点は、自分の好きな名前を与えて、より「親密な」関係を築けるところにある。「ビーエムダブリュー」の代わりに、「タロー」でもいいし、配偶者の名前でもいい。

 実際にこのシステムに慣れると楽チンだし、前方から目を離さなくて済むので安全にも寄与するというBMWの説明にも納得できる。「ちょっと暑いんだけれど」といえば「室温の設定を1度C下げます」と言うし、目的地を告げればその候補を表示して読み上げてくれ、カーナビの目的地設定まで、音声で行えるから便利だ。

 BMWの開発者にインタビューしたところ、このシステムの最大の利点は「シングルポイントコンタクト(接点が一つだけ)」にあるという。つまり音声のみで多くの操作を行える。エアコン、音楽、カーナビなど、どんどん増えていくシステムの煩雑な操作を覚える必要がなくなるのだ。
個人のスケジュール管理もモニターでできる(写真提供:BMW)
音声コマンドを用いながら電話をかけて会議に参加することもできる(写真提供:BMW)
 ここが示唆的だと私は感じた。現在のところ音声で操作できるのは、安全上の理由で、インフォテイメントやエアコンなどの快適装備に限られているが、音声識別機能が高くなれば、ドライバー席の人のコマンドと、ほかの席の人のコマンドを区別して認識してくれるようになるだろう。

 今はウィンドウの開閉や、ワイパー操作や、ドライブモード(BMWでは「ドライビングパフォーマンス・コントロール」と呼ぶ)の切り替えなどは音声では行えない。

 突然、ウィンドウが上がってきて身体をはさむなど乗員のケガを誘発したり、コーナリング中にエンジントルクが変動することで走行安定性に影響を与えかねないという理由からだ。

 ドライバーの意思にのみ反応するなら、物理的なスイッチを操作しているのと同じだから、そういう心配も不要になる。安全運転支援システムの作動についても、「シングルポイントコンタクト」になっていくのではないだろうか。

 実際にBMWの技術者は「これでシステムが完成したとは思っていません」とする。

 「いま私たちはスタートラインに立ったようなものです。さまざまな可能性を秘めた技術ですから。ドライバーとのコミュニケーションツールという側面からすると、Siriやアレクサのようにするのが当面の目標です」

 試乗のとき、「現段階ではまだテスト中だから、難しいことは(クルマに)聞かないで」と言われたのには苦笑してしまったが、2019年春に発売になったあかつきには、「ヘイ、ビーエムダブリュー、人生の意味って何だろう」という質問にも「上手な答えを返せるように”成長”させておきたいと思っています」とのことだった。


Text/小川 フミオ


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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