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Lifestyle 公開日: 2019.03.19

電動化は見た目も変える、新型EVから始まるアウディのデザイン新時代

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新世代EV「e-tron」をずらりと並べ、アウディが見せた新たなデザインの方向性。そこには電動化やコネクティビティが大きく影響している。

e-tron GT concept(左)とe-tronスポーツバック(出所:Audi)
 いま、自動車のデザインを語るとき、電動化と自動運転とコネクティビティは欠かせない要素になっている。それがよくわかったのが、アウディのデザインを統括するマルク・リヒテ氏にインタビューしたときのことだった。
マルク・リヒテ氏(出所:Audi)
「アウディ・デザインの新時代がここからスタートする」。リヒテ氏はそう語った。舞台は2019年のジュネーブ国際自動車ショー。アウディは新世代EV「e-tron(イートロン)」ファミリーを4台も並べたのである。
他のe-tronモデルとはプラットフォームが異なるスポーティなe-tron GT concept(出所:Audi)
「アウディにおける1970年代から80年代のデザインは角張った(エッジーな)ものでした。90年代になり、それがソフトでクールなデザインに変わり、2000年頃まで成功をもたらしました」

 1969年生まれのドイツ人リヒテ氏は、フォルクスワーゲン(VW)でデザイナーとしてのキャリアをスタートさせた。VWではゴルフ第5世代(2003年)、第6世代(2008年)、第7世代(2012年発表の現行モデル)、パサート、トゥアレグ、それにアルテオンのエクステリアを手がけてきた。

 リヒテ氏は2014年2月から同グループのアウディに移籍し、いますべてのデザインを統括する立場にある。

 国際自動車ショーのプレスデイ初日、自動車メーカーとして最初の記者会見を開いたのはアウディだった。そのとき、これから発表する「e-tron」シリーズをずらりとお披露目し、会場を沸かせた。

「力強さ」のプロローグから「セクシーさ」のe-tronへ

 その興奮が冷めやらぬままにインタビューに臨んだところ、リヒテ氏は上記のようにこれまでの流れを整理してくれ、最後に「しかし」とつけ加えた。

「しかし、その後10年ぐらいそのままの流れできました。私が(2014年2月1日に)アウディに来て最初に着手したのが、新しいデザインの開発でした。具体的には、quattroを視覚化した精緻なデザインです」

 quattro(クワトロ)とは1980年いらいアウディが看板にしているフルタイム4WD技術であり、その技術を搭載したモデルのことを指す。リヒテ氏が言うquattroは、おそらく今のA6、A7、A8といった一連のモデルになるだろう。

 「精緻化」とはデザインの方向性を意味する。4つのタイヤを駆動し、エレガントでありながら、同時にスポーティであることを重要な要素とするのがアウディ車のスタイリングだ。そこに、ディレクターである氏の審美観に合った“quattroかくあるべし”という考えを明確に打ち出していくことを「精緻化」という言葉で表現したのだろう。

 リヒテ氏のテイストが明確にわかるのは、氏がアウディのデザイナーに着任した年の11月に開催されたロサンジェルス・オートショーで発表された「プロローグ」だ。
コンセプトモデル、アウディ・プロローグ(2014年)(出所:Audi)
 プロローグは、600馬力超を謳った高性能クロスオーバーのコンセプトモデルである。表面は滑らかに見える一方で、かつてリヒテ氏が使った表現によれば「筋肉」の存在を感じさせる力強さを持つ。今回改めてデザインのサイクルの話を聞くと、序章を意味する「プロローグ」がいかに象徴的な車名だったかに思い至る。

「その次の段階が、今回のe-tron GT conceptや、Q4 e-tron conceptです。言葉にすれば、よりソフトでセクシーなサーフィス(ボディ面)を持つデザインといえます。一方で、これまでの精緻さやシャープさは、いくぶん弱められています」

 とりわけ驚かされたのが、新しいフロントグリルだ。かつてのような輪郭のはっきりしたシングルフレームでなく、基本的には車体と同色である。Q4 e-tron conceptはグレーの差し色も入って、グリルが持つ役割が従来と明らかに異なっていることがわかる。

いずれディスプレイはなくなり音声操作が台頭

 EVの時代になれば当然、エンジン冷却水のためのラジエーターはなくなるので、フロントグリルの役割が変わる。

「アウディは、テスラや中国のバイトンとは違い、内燃機関のクルマもラインナップに持つので、それを含めたブランドデザインの統一性が必要です」

 リヒテ氏は上記のように言う。アウディが属するフォルクスワーゲン・グループを統括するヘルベルト・ディース氏によると、「2025年の時点でEVの販売比率は35パーセント程度と見ている」となる。つまり内燃機関のクルマを買う人はまだまだ多くいる、ということだ。ラインナップ全体の統一性をアウディの経営陣が重視するなら、ラジエーターグリルはe-tronシリーズにも残るかもしれない。

 インテリアについては、「AR HUD」が主流になるのでは、とリヒテ氏は言う。直訳すると拡張現実・ヘッドアップディスプレイとなり、新世代のグラフィカルなインタフェースということだ。
液晶ディスプレイが多用されているe-tron GT concept(出所:Audi)
Q4 e-tron concept(撮影:小川フミオ)
Q4 e-tron conceptのダッシュボードは液晶モニターの存在感が大きい(出所:Audi)
「Q4 e-tron conceptでは従来の3倍ちかい面積のヘッドアップディスプレイを提案しています。ナビゲーションを使用した際は、走るべき道路のレーンなども表示されるでしょう。ただしこれは過渡的段階です。いずれディスプレイはなくなるでしょう」

 インテリアデザインも自分の担当範囲であるリヒテ氏はそのように未来像を描いてみせる。

「代わりに出てくる技術は音声操作でしょう。 ただし、タッチディスプレイをダッシュボードなどに一体化すれば、クルマが古くなってタッチディスプレイを使わなくなっても、ユーザーにはそれほど気にならないはずです」

 まさにデジタライゼーションが自動車を変える。その一端がわかる2019年春のインタビューだった。


小川 フミオ


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
© 2019 Nikkei Business Publications, Inc. / Sansan, Inc.

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