日本の代表的な食である「Sushi(寿司)」。世界的に広がっている日本文化の一つである。その寿司を支えるのは言わずもがなの漁業だ。ただ、他の第一次産業と同様に、日本の漁業は高齢化と後継者不足により、深刻な事業継承の危機に瀕している。


 その漁業にスポットを当て、デジタル技術で効率化を図ろうとするベンチャー企業がある。長崎県佐世保市に本拠地を置くオーシャンソリューションテクノロジーだ。同社は船舶に搭載させる計器の販売や保守整備を手がける佐世保航海測器社の子会社。2017年12月に、デジタル技術を活用した漁業支援サービスを事業化するために設立された。


 オーシャンソリューションテクノロジーが開発に取り組んでいるのは、漁師向けのソフトウエアサービス「トリトンの矛(ほこ)」。ベテラン漁師のノウハウを学習した人工知能(AI)を使ったサービスで、海洋の天候情報や月齢などを加味したうえで、その日の「漁のおすすめポイント」を提案する。高齢化と熟練者の引退、ハードな職場ゆえの後継者不足が続く中、業務の効率化を狙えるツールとして注目が集まっている。


 オーシャンソリューションテクノロジーが目指すのは、業務の効率化だけではない。漁業ノウハウの継承、海洋資源の持続的な開発、そして漁業を「儲かる商売」へと脱皮させることをもくろんでいる。設立の中心人物である水上陽介専務取締役に、サービスの狙いとビジョンを聞いた。

漁労長のノウハウを数値化しAIが学習

「トリトンの矛」はベテラン漁師のノウハウを学び、最適な漁場を提案してくれるソフトサービスだと聞いています。


水上氏 はい。AIが過去の操業日誌の情報をベースに、タブレット機の画面上にその日最適であろう漁場のポイントを示します。投入したデータに依存しますが、サバ、アジ、ヒラメといった魚種ごとに絞り込んで確認することも可能です。AIに学習させているのは主に「漁労長」と呼ばれるベテラン漁師による過去の操業日誌、それから海洋における気象情報、月齢などのデータです。


トリトンの矛の利用画面イメージ。AIが割り出したその日最適であろう漁場のポイントを示す(画像提供:オーシャンソリューションテクノロジー)

 2019年2月に実証実験を始めました。現状、トリトンの矛のターゲットユーザーは「大中巻き網漁」の船団に設定しています。宮崎県で3つの船団からなるチームがあって、そこで1カ月間試験運用していただいています。その結果、トリトンの矛を使っている若手漁師による船団が、ベテラン漁師で構成するナンバーツーの船団と同じレベルの漁獲量を達成しました。今後は地元・長崎でも実証実験を行う予定です。


(編集部注:大中巻き網漁とは、船団を組み、海面付近の回遊魚を大きな網で囲いこんで魚を獲る漁のこと)

のっけから大きな成果が出たといえそうですね。


水上氏 はい。一般的には、ベテラン漁師から若手漁師に引き継いだ場合、その船団の成績は半減すると言われています。トリトンの矛を使うと、ベテラン漁師を超えはしないものの、8割くらいの成績はキープできているという感触です。まずは良いスタートが切れたと思っています。2019年中はこうした検証を進めていき、ブラッシュアップの作業を続けます。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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