日本での少子高齢化の影響は、「キツい」「汚い」「安定収入が得にくい」産業の典型とみなされてきた農業を直撃している。


日本の地方の市区町村では、農業従事者数が激減している。ただ、耕地面積で見ると、必ずしも農業事業者の減少と同じペースで減少しているわけではない。農地から宅地などに転用された耕地もあるものの、小さな農家がそれぞれに所有していた耕地が、地域の大規模農家に譲渡され、大きな耕地へとまとまるケースも多くあるからだ。


 農林水産省による「農林業センサス2015」によると、1995年時点では5ヘクタール以上のまとまった耕地の割合は34.2%だけだったが、2015年には57.9%と過半を占めるまでになった。この点をとらえて、農業の大規模経営がしやすい環境が出来上がりつつあると見ることもできる。しかし見方を変えると、数少ない従事者がより広大な耕地を扱わなければならない状況が生まれているとも言える。


日本では耕地の統合が進み、農業事業者1軒当たりの耕地面積は広くなっている(出典:農林業センサス2015)

 日本には、国際的競争力の高い農業を営む可能性を秘めた高度な技術を保有している。日本の篤農家は、長年蓄積してきた知恵と技によって、狭い耕地から質の高い作物を作り出してきた。ただし、少子高齢化の進展によって、こうした貴重な技術を引き継ぐ後継者がいないまま失われつつある。

篤農家の知恵と技をロボット農機が引き継ぐ

 作物を作る耕地もある、質の高い作物を作る農業技術もある。しかし、人手が決定的に足りない。これが日本の農業の現場の現状だ。


 IoTや人工知能(AI)など最先端のテクノロジーを活用することによって、篤農家が持つ“暗黙知”としての知恵と技を“形式知”に変えて営むスマート農業の実践に向けて技術開発が進められていることは前編で紹介した。ただし、農業でデータ活用がいくら進んでも、自然と対峙しながら生き物である作物を扱う産業であることに変わりはない。現場での農作業を行う労働力は必要だ。


 内閣府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」では、こうした労働力不足を解消するための策として、ロボット農機の活用による農作業の自動化を目指している。


 テレビドラマ化された池井戸 潤氏の小説「下町ロケット ヤタガラス」では、日本の農業を窮状から救うため、準天頂衛星「ヤタガラス」に導かれて動く自動運転トラクターを開発する様子が描かれた。農作業を自動化する新しい農機は、新しい時代の到来を予感させるものだ。


 同小説で自動運転トラクター開発のキーマンとして登場した「野木教授」のモデルとなったSIPのプログラムディレクターを務める北海道大学 大学院農学研究院 副研究院長・教授の野口 伸氏は「農機の自動化技術は急激に進歩しています。人手不足の解消に役立つだけでなく、賢く精密な農作業による、高品質な作物の栽培を後押しする力も持ち始めています」という。現実の技術開発は小説で描かれたものよりもはるかに高度なレベルに達している。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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