2017年から2018年にかけて、新零售(ニューリテール、新小売)という言葉が中国のテック業界でトレンドワードとなった。そして2019年となった今も、かつてほどではないものの、しばしば小売り絡みのニュースで登場する。


 ニューリテールは阿里巴巴(アリババ)が提唱したもので、既存の「小売」「ネット」「物流」の3つのリソースを融合したものとしている。融合した結果、コンビニやスーパーの実際の店舗とオンラインショップをより便利に、店舗では新しい体験を楽しめるように、店からの配送はより快速に、となる。大都市在住で、所得は高めで、子供がいる若い世代を中心に普及が進んでいる。


 ニューリテールの定義については、2017年4月には同社会長のジャック・マー氏は「オフラインとオンラインを深く結合し、さらにスマート物流を組み合わせ、ビッグデータやクラウドをなどの最新テクノロジーを活用した新しい販売」と語り、同年9月には中国政府商務部が新零售について「Androidなどを内蔵したタッチパネル内蔵のスマートミラーなどの端末やビッグデータを活用し、人と設備が店でやりとりすることを想定し、さらにその先の未来に、IoTを活用してユーザーの行動を把握し、よりスマートな小売りを実現すること」と紹介している。


 アリババがニューリテールを具体化したスーパー「盒馬鮮生」は、「配達エリアに30分以内で配達(公称数値であり、実際には30分以内の実現はしていないもよう)」「いけすの魚や魚介類を買い、その場で調理してもらい、食べられる」「アプリで精算情報を確認し、支付宝(Alipay)で支払う」といった仕掛けがある。


 この盒馬鮮生は、既に中国全土に展開されている。ベトナムやミャンマーに接する雲南省の省都昆明市にも最近、同市では初めての店舗が開いた。中国全土に展開する大型ショッピングモール「大悦城(JoyCity)」が昆明にでき、その地下階に誕生した。確かに昆明の人々にとっては今までにないインパクトあるスーパーだろう。


 とはいえ食料品や日用品を買う店であることには変わりなく、大悦城に足を運ぶついでに行くのでもなければ訪れることはないし、その盒馬鮮生の近所の配送エリア内に住まない限りは爆速配達の恩恵を受けることはない。上海の中心部では盒馬鮮生が多数あり、注文を受けたら市内の配送センターではなく、各店舗から配送するため、配送地域をくまなくカバーできている。これに対して他の都市は、上海ほど数多くのモールがあるわけではない。地方都市(とはいっても福岡や札幌を超える都市規模だが)においては、盒馬鮮生による新しいライフスタイルを市民が享受できるかというと、当面は難しそうだ。


 騰訊(テンセント)はアリババに負けじと、資本提携する大手小売企業「永輝超市」によるニューリテールのスーパー「超級物種」を展開している。「超級物種」も「盒馬鮮生」と同様に、「その場で調理」「爆速配達」「キャッシュレス」がコンセプトのスーパーである。超級物種は盒馬鮮生を超える出店スピードで中国全土に展開している。とはいえ大型スーパーである以上、新規出店は限界がある。


 大手家電量販店の蘇寧電器(スーニン)は健闘している。以前と比べ客が減った家電売場の一部を自社コンビニ「蘇寧小店」にして、店舗にすると同時に配送拠点にした。スーニン自体は中国の省都クラスであれば既に何店舗も市内に展開しているので、市内の広いエリアを配達エリアとしてカバーし、コンビニ「蘇寧小店」で販売される日用品や食料品を爆速で配達できる。ただし蘇寧が食料品や日用品を販売するブランドとしてそれほど有名でないのか、あまり利用しているという話を聞かない。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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