「RaaS」モデルで導入しやすく

 inahoはロボットの売り切りではなく、導入後の収穫高の15%を課金する、いわばRaaS(ロボット・アズ・ア・サービス)形式を検討している。RaaS形式を採用することで、農家にとっては初期導入費用が抑えられるので導入のハードルが低くなる。またロボットの所有権はinaho側にあるため、リリース後の機能拡張がinaho側の主導で実施しやすくなっている。「機能拡張により性能向上が見込める。その結果農家としても当社としても収益アップが見込める」(菱木氏)。


 菱木氏はもともと人工知能の勉強をしており、海外の農業用ロボット、そして農家の友人などの話に着想を得ながら、収穫ロボットの開発に行き着いたという。


 農業従事者の数は減少する一方だが、農業施設自体は減っていない。そのため地方では有休状態にあるビニールハウスなどの施設園芸設備を年間20万円などの低額で貸し出すケースもあるという。規模や中身にもよるが、ビニールハウスを用意する場合、2000万円から3000万円はかかるとされている。


 「農業従事者は減っても、食料に対する市場のニーズが減るわけではない。この状況を逆に活用することで、新規就農者でも年間700万~800万円、さらには1000万円の利益が確保できる世界に突入している。しかし問題は労働集約的であること。人手で進めている限り限界がある。ここにロボットを適用すれば、農業はもっと『儲かる産業』になる」(菱木氏)。

ロボットが生む新職種、「アグリコミュニケーター」を240人採用・育成

 inahoはベンチャーキャピタルやメーカーなどが主催するスタートアップ企業支援プログラムで受賞を重ねている。その理由について菱木氏は「もちろん収穫ロボットを本気で開発しているというのもあるだろうが、農業という人間の生命維持にかかわる分野をどうにかしなければという、産業界全体における意識の高まりがあるのではないか」と振り返る。


 今後も同社は改良を進め、果樹やフルーツなどの収穫もできるようにする計画。また現状ではハウス内での利用を想定しているが、屋外向けに汚泥対策なども進めていく。枝や余計な葉を切るといった農家の管理作業に対するニーズも強く、この機能の実現も検討中だ。


白線を認識しながら指定のルートを自動巡回する(写真提供:inaho)

 5月からの市場への本格投入を踏まえて、inahoでは人材の採用と育成を進める。特に強化するのは、同社が「アグリコミュニケーター」と呼ぶ役割の人材である。農業の現場において、収穫ロボットの導入と運用を支援する人材である。菱木氏は「2022年までに240人を採用し育成したい」と語る。


 コミュニケーターと名付けている理由は、農家、ロボットをはじめとした設備、畑や作物、inaho本社の開発陣といった各要素の間でコミュニケーションを取りながら進める役割になるため。菱木氏は「ロボットを現場でうまく活用してもらうためには必須の役割。農家とコミュニケーションするのは必須だし、作物や畑のことも知る必要がある。inahoの開発チームも現場の声をもっと聞きたい。そのためコミュニケーターという名称をつけた」と説明する。


 菱木氏によれば、人数で言えばエンジニアよりも必要という。「ロボットは新しい価値を創造し、そこから新たな雇用を生む。収穫ロボットを通じて新しい農業の未来をつくりたい」(菱木氏)。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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