※ 上の写真はMWCで展示されていた遠隔運転のデモの様子(撮影:筆者)。

 自動運転、特に、インフラ側を変更することなく走行する種類の自動運転は、実現までに、まだ多くの技術開発が必要とみられている。ただ、遠隔地から人間がクルマを操作する遠隔運転は、もっと実用化への道は近そうで、5Gの実用化とともに脚光を浴びつつある。これに自動隊列走行を組み合わせることで、物流を革新できると期待されている。

開発に時間を要する自動運転

 自動運転に元気がない。昨年までの高揚感は消え去り、落ち着いた取り組みになっている。1月に開催された民生技術の総合展示会CES2019(ラスベガス)でも、自動運転は以前よりグッと小さな扱いになっていた。


 自動運転車は、昼夜を問わず、あらかじめ指示された場所までは走れるようになった。20年前から見れば大きな進歩である。


 期待も大きい。自動運転車を持ってくれば、道路があればどこにでも連れて行ってくれる、と期待が生まれる。また「死亡事故の90%以上が人間によるミスが原因」との統計に基づいて、「事故ゼロ、死者ゼロ」を標榜する自動車メーカーもある。


 とはいえ、現在の自動運転技術は、まだ人間が行って来た運転レベルには達していない。例えば初めて訪れた、何も情報がない場所は走れない。走行する場所の詳細な「地図」を事前に用意する必要がある。ここでいう地図は、道路のつながりだけではなく、道幅、車線の数、標識の位置など、多くの情報を統合した、自動運転車用の地図で、事前に用意して地図として与えておかなければならない。海外で、自動運転車両によるタクシーサービスが行われている事例もあるが、ほんの十数km四方の範囲内である。これは、自動運転可能な地図を作れたのが、それだけの範囲に過ぎないからだ。


 ラスベガスでは現在も、配車サービス事業者Lyftと自動車部品大手のAptivが共同で自動運転の実証を続けている。Aptivに限らず、ティア1(Tier1)と呼ばれる大手部品メーカーは、中小の自動車メーカー向けに「自動運転パッケージ」を販売すべく以前から開発を行っており、ハイレベルの技術を持つ。


ラスベガス・コンベンションセンターに設けられた自動運転専用レーンにやってきたLyft/Aptivの自動運転車。自動運転を示すナンバープレートがつけられている

 このような、そのようなハイレベルの企業が開発中の車両であっても、車両にはドライバーとコンピュータ担当者が座り、あらゆる事態に備えている。もちろん、ラスベガス市があるネバダ州の交通法規では、私有地内での自動走行ができないため、ホテルなどに出向いたときには敷地内で手動運転しなければならないことも理由になってはいる。加えて、コンピュータ担当者まで必要というのは、まだまだ大変な状況であることを示している。


 実際、2019年4月に入って、米フォード・モーターのジェームス・ハケットCEOも「完全自律運転の実現は思ったより早くない」との意味の発言をしている。

5Gの実用化でにわかに脚光浴びる「遠隔運転」

 自動運転が、その難しさに苦しんでいる一方、急速に脚光を浴びてきたのが遠隔運転である。ラジコンよろしく、運転者は車両に搭乗せず、離れた場所から運転する。ただし、外から機体を見ながら操縦するラジコンとは違う。遠隔運転の場合、運転者は対象車両の疑似運転席に座り、そこで眼前のスクリーンに映し出される景色を見ながら操作する。


 これまで、遠隔操縦は専用の無線周波数を確保し、車両と操縦者を直接結ぶしか方法がないと思われてきた。そのためには周波数確保が必要で、電波資源が逼迫する中では事実上実現は難しい。


 国から専用の周波数の割り当てを受けられない状況で、一般の利用者が通信を行うとすると無線LANか携帯電話網を使うことになる。ただ、これまではいずれの方式も遅延が大きく、運転といった俊敏性が求められる用途には向かなかった。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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