もちろん、実現に向けての課題はある。まずはインフラだ。


 陸上のライドシェアでは、自家用車と運転免許を持っている人、車で移動をしている人を集めてマッチングするだけだった。そのためのインフラはマッチングのための仕組みだけで、Uberはそのプラットフォームを構築すればよかった。しかしUber Airは、そうはいかない。顧客を管理してシェアリング(マッチング)を実現するUberのプラットフォームに加え、eVTOL(電動垂直離着陸機)、eVTOLが離着陸するSkyportなどが必要になる。


Bellが披露したVTOL

 Uberは2018年6月に、「Uber Elevate Summit」というイベントを開催したが、そこではUber Air実現に向けてこれらパートナーと協業していることをアピールした。eVTOLではAurora Flight Sciences(Boeing Next)、Bell、EmbraerX、Karem Aircraft 、Pipistrel Vertical Solutionsと協業しており、そして2019年のSummitではJauntを加えたことを発表した。展示会場では、eVTOLメーカーが展示スペースにeVTOLのモックを展示した。Bellは、eVTOLの実サイズのモックアップを披露した(初披露は「CES 2019」)ほか、内装ではSafranがUber Air向けの内装を、実サイズのモックアップで見せた。Skyportの建築を進める不動産ディベロッパーもそれぞれのデザインを披露した。

Uber Airのパートナー企業が披露したUber Air向けのeVTOLイメージ

コストはUber Xレベルまで下がる

 これらと並行してUberが進めようとしているのが、都市や規制との協業である。2023年のUber Airローンチ都市として3都市(ロサンジェルス、ダラス、オーストラリア・メルボルン)を発表しているが、オーストラリア以外にも日本(東京)、インド(ムンバイなど)、ブラジル(リオデジャネイロ)、フランス(パリ)を検討してきた。経済、気候、規制、Uberの普及、既存のインフラなどを考慮して、オーストラリア・メルボルンに白羽の矢が立ったという。


 規制側では、2019年のSummitの開催地に首都ワシントンD.C.を選んだことが象徴するように、Uberは規制と足並みを揃える姿勢だ。米航空宇宙局(NASA)、アメリカ陸軍研究所など多数の機関と提携しており、Summit会場には政治家、政府関係者も多く参加した。初日午前には米運輸長官のElaine Chao氏がスピーチし、「輸送にイノベーションが起こっている」として自動運転車、ドローンなど新しい乗り物の動向に触れた。「空のタクシーもイノベーションの一部だ。だが、速度、距離、遠隔操作、パイロット、機内の設備、ガバナンスなどたくさんの不明確な要素もある」とChao氏。規制について具体的な話は少なかったものの、リモートIDについては「2019年後半に法案を提出したい」とした。リモートIDは「車のナンバープレートの電子版のようなもの」で、誰がどこに向かっているのかなど、空のタクシーの安全性で重要な役割を果たすという。


米運輸長官のElaine Chao氏

 日本からも経済産業省 産業技術環境局 基準認証政策課の伊藤貴紀氏がパネルに登場。東京の渋滞緩和策としての空の移動に可能性を感じていることなどを語った。


 最後の課題が、需要である。Chao氏は「市民の受け入れなしには進まない」としたが、この点でUberは料金と環境をキーワードにするようだ。


 料金については、十分訴求できるレベルになるとUberはみている。Uber AirのeVTOLは4〜5人乗りを想定しており、Skyportも1時間1000回程度の離着陸を処理できるようにするとしている。同社の試算によると、Uber Airが自動運転に入り(開始当初はパイロットが操縦する)、eVTOLの数と利用者が増えてスケールが出てきた時には、現在のUber X(通常のライドシェア。Uberにはこの他、見知らぬ人と乗り合う「Uber Pool」、ハイヤーの「Uber Black」などがある)と同レベルのコストになるという。


 環境についての主張もある。CEOのKhosrowshahi氏は「交通が3D化することで都市が交通渋滞から解放され、緑が戻り、人間のための場所になる」とした。もちろんeVTOLは電気なので静音で環境に優しい。Summitではバッテリー技術に特化したセッションもあった。


 空飛ぶタクシーのサービス化に取り組んでいるのはUberだけではない。ドバイ、シンガポールなどが政府主導で進めるほか、中国のEHang、ドイツVolocopterなど、この分野で新しい企業も生まれている。Uberが描くマルチモードトランスポーテーションは野心的ではあるが、実現に向けて着実にステップを進めていることは間違いない。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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