ニューヨーク株式市場で8月2日(米国時間)、Apple株が207ドルを突破。米国初の時価総額1兆ドル企業となった。これまで、Amazon.com(8925億ドル)、Alphabet(Googleの親会社、8521億ドル)、Microsoft(8262億ドル)との間で競われてきたテック企業の1Tレース(One Trillion Race)は、Appleが最も早く達成したことになる。同日の米国市場は小幅安の地合いだったが、テック企業各社はAppleに釣られるかたちで株価を伸ばした。


 もしスティーブ・ジョブズが生きていたら「この上ない痛快な瞬間」と大笑いしていたに違いない。


 そんなジョブズとともにAppleを創業したスティーブ・ウォズニアックは、1985年にAppleを離れているものの、書類上は従業員のまま。わずかな給料ももらっているそうだ。そのウォズがYahoo! Financeのメールインタビューに答えている。


 「もちろん、Appleを誇りに思う。……(中略)……非常にたくさんの、小さく気にもとめない歩みが、個人的には大きな意味を持っていた。しかし、スティーブ・ジョブズが戻ってきたことが重要だったことは、おそらく多くの人が同意するだろう。もしiPodで企業価値が上昇しなかったとしても」

淘汰される対象からの脱却

 Appleは2018年にApp Storeの開設10周年を迎えた。ちょうど10年前の2008年8月4日、当時の株価は現在の単位では24ドルしかなかった。その1カ月後の9月15日、リーマン・ブラザーズの破綻による世界同時株安が発生し、Apple株も現在の単位で12ドルまで下落した。


「最も革新的な製品」という価値を価格に反映させた「iPhone X」

 以降の10年は、iPhoneの時代だった。販売台数は過去最高を更新し続け、iPadやサービス部門の台頭によって株価の上昇は続いた。実際、Appleの売上高の伸びに反してiPhoneのシェアは下がり続け、現在は世界で15%に満たない。しかしスマートフォンビジネスの大半の利益を占める、ほぼ唯一の成功しているスマートフォンメーカーとして君臨している。


 往時のAppleは、淘汰される側のコンピューターメーカーだった。iPodに始まった、よりパーソナルな製品を開発できなければ、メーカーとして韓国や中国の企業に淘汰される存在だったに違いない。PCブランドを有するHPやDellが1Tレースに参戦しているという話は聞いたことがないし、IBMはLenovoにパソコン事業を売却してもいるのだから。


 しかし、AppleはiPhoneを生み出すことができた。iPhoneという小さなコンピューターを世界中の人々に1人1台持たせるため、携帯電話会社に端末の割引やシンプルな料金プランまで押しつけ、無理矢理にでもその状況を作り出した。


 さらにApp Storeを作り、世界の人々が1人1台持つデバイスを対象とした新しい経済圏を生み出した。その結果はどうだったか。欧州やアジアと比較して都市や生活インフラが古く脆弱な米国で、スマートフォンを前提とした様々なサービスが誕生したのだ。


 コミュニケーションだけでなく、エンターテインメントや交通、決済、健康など、あらゆる分野でアプリ化が進行した。アプリの進化を通じて米国は今、機械学習や人工知能などの最新技術のメリットをいち早く得られる国になった。


 これこそ米国にスマートフォンを普及させたAppleの功績だ。そうしてモバイルビジネスを垂直統合し、その元締めになったことがAppleのこの10年のハイライトであり、その結果が1兆ドルという時価総額として表現されたといっていいだろう。


本記事は、日経BP総研とSansan株式会社が共同で企画・制作した記事です。
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