ドイツ主導で展開されている「Industry 4.0」、米国で進展する「インダストリーインターネット」、そして「デジタルものづくり大国」を目指す中国では「中国製造2025」の取り組みが着々と進められている。日本でも経済産業省が「Connected Industries」を提唱。人とシステムが協働する新しいデジタル社会の実現に向けた取り組みが進められている。


 今後、国内の製造業ではDXがどのように進展していくのか。鍵を握るは、5つのテクノロジーだ。


デジタルツインやローカル5G。製造業のDXを加速するテクノロジー

1.「デジタルツイン」

「デジタルの双子」という意味で、IoTやセンサー技術を活用してフィジカル空間(現実の物理的な世界)の情報を収集し、リアルタイムでサイバー空間(仮想世界)に送って、サイバー空間上にフィジカル空間と全く同じ仮想モデルを構築するという概念だ。


 そのメリットはさまざま。例えば新製品開発・製造に応用すれば、現実の世界ではモノを作らず、サイバー空間で設計・製造し、どんな製造ラインがあれば効率的に量産できるかまでをシミュレーションできる。また、実在の製造ラインに不具合が発生した場合、サイバー空間に構築した製造ラインを解析することで原因究明と対策が打てる。さらに、今後、起きそうな故障を予測することも可能になる。


 こうしたデジタルツインの技術を、設計中の製品に適用した事例がある。ドイツのスタートアップ企業「e.Go Mobile」は、4人乗り電気自動車の開発にデジタルツインを活用した。IoTで収集した製品のデータをサイバー空間上の製品に適用し、問題を抽出して対策を検討。サイバー空間上で試行錯誤することで試作にかかるコストを抑え、18カ月で電気自動車の開発を実現した。また、海外の工業製品メーカーでは、エレベーターを実際に設置する建物を測量して、サイバー空間に再現した仮想の建物を基にエレベーターの設計を行い、施工期間の60%短縮に成功した事例もある。


ドイツのハノーファーで開催されたイベントにてロボットによる自動車製造のシミュレーションの様子
写真提供:Alexander Tolstykh / Shutterstock.com

2.「ローカル5G」

 日本でも、2020年から5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まる。高速、大容量、低遅延、多接続とそのメリットは多い。この5G環境を、自治体や企業が主体となって、施設や工場や生産現場、医療現場、プラントなど特定エリアに独自に構築し、活用するのがローカル5Gだ。


 総務省はローカル5Gのメリットとして、地域や企業などの個別のニーズに応じて柔軟に5Gシステムを構築できることを挙げている。その中でも工場や生産ラインなど、ものづくりの現場における活用に大きな期待がかかっている。工場をオートメーション化したい場合においてデバイスをネットワークに接続するために、従来はWi-Fiなどを使っていたが、それを安定かつ高速な5G通信で構築できるようになる。


 例えば、工場設備の稼働状況を遠隔監視する場合に高精細な映像を高速、低遅延で送るには、5Gの通信環境が必須となる。また、各種製造設備にセンサーを取り付け、データを収集して、AIによる異常検知に活用するといったスマート工場の実現にも、その技術基盤としてローカル5Gが不可欠となるだろう。