5Gの商用サービス開始と高速・同時多点接続・低遅延といった特徴から、産業分野でも5Gを新たなインフラとする動きが本格化し始めている。5Gは、4Gと比べると通信速度は20倍、同時接続数は10倍で、データを送信したタイミングと相手が受信した時間のズレ(通信遅延)についてもわずか1ms(1000分の1秒)と4Gの10分の1という低遅延性を実現している。


 調査会社のIDC Japanによれば、4Kや8Kなどの高精細画像・映像の伝送が、産業分野における5Gの大きなユースケースの一つになるという。5Gによって、4Kや8Kという高画質の動画広告が技術的に配信可能になることはもちろん、低遅延と同時多接続という特徴によって実現する、新たな広告配信手法の確立も期待されている。

5Gで広がる動画広告の可能性

 サッポロ不動産開発とNTTコミュニケーションズ、NTTドコモは2020年1月、5Gを活用した「動くサイネージ」の実証実験を行った。


 札幌市の商業施設「サッポロファクトリー」内を走行する小型カートにデジタルサイネージを取り付け、テナント店舗の広告映像などを配信する実験だ。単純に高精細な広告映像を配信しただけではなく、低遅延、同時多点接続という5Gの強みを生かし、小型カートを東京のイベント会場から5Gを用いて遠隔操作した。


 施設内の人の流れやイベントなど、その場の状況に応じてデジタルサイネージをタイムラグなしで自在にコントロールし、「動くデジタルサイネージ」として動画広告を配信。より高い訴求効果が期待できる、新たな広告配信の可能性を示した。


小型カートでの動画広告配信イメージ
小型カートでの動画広告配信イメージ

 この実証実験では、施設内に配置されたビーコンから来場者の匿名位置情報を取得し、人の流れを解析して広告の効果も測定。その結果をテナント店舗にフィードバックするという仕組みも取り入れられた。今後は、この実験の成果を生かし、全国の商業施設やテーマパークなどで、新しい広告配信サービスの創出を目指すという。


 また、5Gによって、新たなインタラクティブ動画広告の可能性も広がり始めた。広告制作会社のタッチスポットは、インタラクティブ動画とSNSマーケティングのパッケージサービスを提供している。SNSに表示される広告からインタラクティブ動画のランディングページに誘導し、視聴者参加型の広告を展開する。すでに、サッカーJ1の横浜FCが、このサービスを活用した広告プロモーションを展開している。


 バーを立てたゴールに向かって選手がボールを蹴り、バーに当てることができるかというクイズをスマートフォン上で出題するというもの。視聴者がその場で回答することで、インタラクティブなコミュニケーションが成立する。正解者の中から抽選で無料チケットがもらえる仕組みだ。


 タッチスポットによれば、インタラクティブ動画広告は通常の動画広告と比較して、ウェブサイトにおける成果を表すコンバージョン率が94.5倍、キャンペーン参加率が2.8倍、直帰率が50%減少したという。また、インタラクティブ動画は、視聴者の反応についてデータを収集することができるため、通常の動画広告よりも有用な効果測定ができるメリットもある。


インタラクティブ動画×SNSマーケティングのユーザーフロー
インタラクティブ動画×SNSマーケティングのユーザーフロー
「TouchSpot for SNS」プレスリリースより