建設業界は今、さまざまな課題に直面している。とりわけ、労働力不足は深刻で、日本建設業連合会(日建連)は、2025年には60歳以上の熟練技能者の大量離職が想定され、業界全体で約35万人もの労働力が不足するとしている。


 労働力不足、熟練技能者の高齢化と大量離職、さらには作業現場での生産性向上、人件費を含むコスト削減など、いわば「建設業界共通の課題」をどう解消するか。期待されているのが、建設分野におけるデジタル技術の活用だ。最近では新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、人と人とが直接触れ合わない「非接触」な働き方の実現も求められ、建設分野においてもデジタル技術の活用が本格化してきた。


 その中でも注目度が高いのがロボット技術だ。ロボット施工やロボットによる資材の運搬など、建設業界ではゼネコン各社を中心に「RX:ロボティクス トランスフォーメーション:ロボット変革(Robotics Transformation)」実現への取り組みが加速している。


ここ数年で本格的に取り組み始めたゼネコン各社

清水建設が自律的に稼働する建設ロボットを導入

 若年労働力の不足や熟練技能者の大量離職が懸念される中、ロボット技術の活用に比較的早い時期から取り組んできたのは、清水建設だ。同社が目指したのは生産性向上だけではなく、賃金改善や休日増加など、ロボットを活用することで働く人の待遇改善を図ること。2016年に、ロボットと現場で働く人がコラボレーションしながら工事を進める新システム「Shimz Smart Site(シミズ・スマート・サイト)」を構築。自律的に稼働する建築ロボットを開発し、現場における生産性向上と効率化を実現した。


 例えば、資材の水平搬送ロボット「Robo-Carrier」は、搬送する資材の選択と搬送先をタブレットで入力すると、資材を指定された場所に運搬する。レーザーセンサーがリアルタイムに空間形状を認識し、障害物などを回避できる。通常、建物内部の工事では、資材などは現場の作業員が設置箇所まで運んで取り付けることが多く、「作業時間の半分は物を運んでいる時間」と言われるほど効率化が課題だった。ロボットが自律して資材運を運びことで、現場の作業員をサポートする取り組みだ。


Robo-Carrier(出典:清水建設)
Robo-Carrier(出典:清水建設)

積水ハウスが「会話する施工ロボット」を導入

 建設現場での身体的負担の大きな作業をロボットが代替することで、現場で働く人とロボットがコラボレーションする取り組みも進んでいる。積水ハウスは、テムザックと共同で天井の石膏ボード貼り用ロボット「Carry」と「Shot」を開発。2体のロボットがAIで互いにコミュニケーションを取りながら、連携して作業を進めるのが特徴だ。「Carry」は天井石膏ボードの位置決定と運搬を担い、「Shot」はビス打ちを担う。


 ただし、作業の全工程がロボットで完全自動化されるのではない。まずCarryが施工箇所の正確な位置を採寸し、作業員に必要な石膏ボードのサイズを伝え、Shotには施工位置やビス打ち位置を伝達する。作業員が石膏ボードをCarryへ積載し、Carryが運搬して天井へ位置合わせして、Shotがビスで固定する。あくまでも作業員と2体のロボットとが協業することで、作業員の身体的負担を軽減し、精度の高い作業を実現しているのだ。


Carry・Shot|建築施工ロボット 天井石膏ボード貼りデモンストレーション(出典:テムザック)

大成建設が鉄筋結束ロボットを導入

 建設現場での足場の組み立てなど、鉄筋工事における作業員の支援にもロボットの活躍が期待されている。鉄筋工事は、技能者の高齢化や労働力不足などの課題があり、以前から作業の効率化や生産性の向上が求められていた。


 大成建設は千葉工業大学と共同で、交差する鉄筋を針金などで留める鉄筋結束作業を繰り返し実行できるロボット「T-iROBO® Rebar」を開発した。これにより、鉄筋工事のうち2割を占めるとされる鉄筋結束作業を自動化できるという。しかも、ロボットが結束作業を行っている間に現場の作業員は他の作業ができるので、生産性の向上も期待できる。


自律型鉄筋結束ロボット「T-iROBO® Rebar」を開発(出典:大成建設)

大林組がひび割れ自動検出ロボットを導入

 建設現場での労働力不足への対応や作業効率の向上といった目的でのロボット活用も、ますます進展している。大林組は、建造物のひび割れの検出にロボット技術を活用している。以前から建造物のひび割れを自動検出する技術はあったが、ロボットを活用した技術ではなく、目視による点検と比較してひび割れの検出率とひび割れ幅の計測精度が低い傾向にあった。また、ひび割れ検出には接近した画像が必要なため、大規模な構造物では撮影枚数が非常に多くなるほか、高所にある構造物では撮影に高所作業車やドローンが必要になるなど、作業時間とコストがかかっていた。


 そこで大林組では、より短時間で経済的に実施できるひび割れ点検として、AIによるひび割れ自動検出ロボットを開発。富士フイルムが提供するAIによる画像解析技術を活用した「社会インフラ画像診断サービス」と、特殊な高性能カメラの画像を組み合わせ、コンクリート表面のひび割れの幅と長さを高精度に、短時間で自動検出することが可能となった。


 遠距離からの画像を用いてひび割れを自動検出し、最大で50メートル離れた場所から0.1ミリのひび割れを検出できるという。この技術が、作業時間とコストの大幅な削減に寄与した。


広範囲(幅約8m)を撮影した場合のひび割れ検出の例(出典:大林組)
広範囲(幅約8m)を撮影した場合のひび割れ検出の例(出典:大林組)