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Business 公開日: 2020.11.30

ボルボ・カーズが安全技術開発の裏側を公開 鍵は「究極のドライビングシミュレーター」

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ボルボ・カーズが、安全技術の開発のために採用するシミュレーション技術をオンラインでの中継形式で公開した。さまざまなカスタマイズが可能で、その可能性は無限大だと担当者は話す。

 「最新のゲーム技術で安全なクルマを開発」と謳うのが、スウェーデンのボルボ・カーズだ。2020年11月18日に、同社が本社を置くヨーテボリの特設会場からのオンラインでの中継形式で行われたプレゼンテーションでのこと。

 テーマは、最新の安全技術の開発にまつわる、ボルボの取り組みだ。同社では、さまざまなテクノロジーを使い、安全技術の開発に取り組んでいる。

 1970年から、路上の衝突事故に、独自の事故調査隊を派遣してきたボルボ。そこで集めたデータを車両開発に役立ててきた。衝突事故のタイプと、そこに巻き込まれた車体の変形具合をチェックすることが、安全性にとって重要だというのだ。

 昨今のボルボは、実地の事故調査を進める傍ら、事故を起こさない技術の開発にも注力してきた。そのための方法が、今回、ジャーナリストに公開されたシミュレーション技術だ。

 ボルボのシミュレーションの注目点は、MRを活用しているということ。MRとは(周知のとおり)Mixed Realityだ。複合現実とも訳され、現実のモノと仮想のモノをリアルタイムのデジタル映像として重ね合わせる技術。

 専用ゴーグルをかけたテスターが、実車を操縦して、ボルボがスウェーデンに持つテストコース内を走る。テスターのMRゴーグルには、実際の景色とともに、仮想の現実が映し出される。

 例えばテストコースの路上を走っていると、脇からトナカイが飛び出してくる。それを交わして進んでいくと、正面から対向車が、自車の前に飛び出してくる。
MRにはこのようにVRを混ぜることも可能
 もちろん、上記のトナカイと対向車は仮想現実による映像。スウェーデンでは高速道路でも一般道でも結構頻繁に起こるという、巨大なトナカイやヘラジカとの衝突や、片側一車線の道で追い抜きをかけたクルマとの正面衝突をシミュレーション。そのとき、ドライバーがどのような振る舞いをするかを記録する。

 使われているのは上記MRゴーグルに加え、専用ソフトウエアと、それにデータ取りをするためにテスターが着用する専用スーツ。

 「昨年(2019年)、ボルボ・カーズはVarjo(バリョ)社と共同で、複合現実ヘッドセットを装着したまま実車の運転を可能にした最初の自動車メーカーとなりました。現在、このコラボレーションは Unityと全身触覚スーツのTESLASUIT (テスラスーツ)にも拡大されています」(プレスリリース)

 リアルタイム 3D 開発プラットフォームであるユニティ・テクノロジーズ社による高精度3Dグラフィックス、フィンランドのバーチャルおよびミックスリアリティの専門家であるバリョのシミュレーターと拡張現実感を生み出すヘッドセット、それに仮想世界からの触覚フィードバックを提供するVRエレクトロニクス社の全身スーツ型デバイス、テスラスーツ。
テスラスーツはからだの反応をモニターできる
 これらを組み合わせて、ボルボは従来難しかった安全評価のシミュレーションを作り上げている。同社では、上記三つからなるシステムをして、「究極のドライビングシミュレーター」と呼ぶ。

 ドライバーが危機回避しようというとき、既存の安全技術はうまく機能するのか。マンマシンインターフェイスは設計通り機能するのか。実物に酷似した高精細3Dグラフィックスを使い、それらのシミュレーションも行われる。

 ボルボがオンラインで見せてくれたテスト。テスラスーツに身を包んだテスターがMRゴーグルをかけてボルボ車を運転する風景が映し出された。

 「テスターは、想像されるアクティブ・セーフティ、運転支援機能、今後の自動運転ユーザーインターフェース、将来の新車、その他多くを対象としたシチュエーションを試せます。実際のテストコースの道路やテストラボで使用することができ、全てのシナリオは完全にカスタマイズ可能で、可能性は無限大です」

 ボルボがオープンイノベーションアリーナで行った今回のデモストレーションに参加した、ユーザーエクスペリエンス担当シニアリーダー、キャスパー・ウィックマン氏は、上記のように述べる。

 ウィックマン氏が挙げるメリットは、もう一つある。ドライビングシミュレーターを使うこともあるため、コストがかかる実車でのクラッシュテストの一部が省略できることだ。
ドライビングシミュレーターを使うこともある
 ボルボでは、このシミュレーションシステムについて「どんな本格的なゲーマーも嫉妬するでしょう」とする。もちろん、楽しみの要素はほとんどないけれど、新型コロナによる感染症が広まり、共同作業がやりにくくなっている中、オンライン化によって開発チーム内で情報が共有されるのも、大きなメリットにあげられている。


小川 フミオ

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