「伴走」という話がありましたが、鹿内さんはデータサイエンティストという役割だけでなく、ビジネス化の支援もされているんですね。


鹿内:私はデータビジネスをやりたいと思っているのですが、自分自身には分析の技術しかありません。センサー技術を使って、データをどうやって集めるのかというところでは他者との協力が欠かせないところです。そうした中で感じるのは、技術的に優れている組織の多くが、サービスまで視野に入れていないことです。


 私自身は、もともと基礎科学をやっていたところから一気にサービス側にやってきた人間です。データサイエンスというのは名前のとおりサイエンスなのですが、産業とは「背中合わせ」であることが、ほかの科学と比べても特殊ではないかと思っています。サービス側にいることで、初めてデータ分析ができたりするからです。


技術開発とサービス開発は異なる

技術とサービスの話は興味深いですね。両者を混同しているケースも多いように思います。


鹿内:例えば私も参画しているミイダスでは、社内の音声データを分析したことがありました。電話営業の社内側の音声、つまり営業担当者の声を拾ってどのような会話をしたのか、そのときの感情の起伏はどうだったのかを調べてみます。その分析は技術開発です。その先にある成約に至るまでのパターンはあるのか、そもそも成約するか否かは、音声分析で見極められるのかということはサービス開発です。


 サービス開発において大事なのは、開発パートナーだけでなく、顧客パートナーを見つけることです。実証実験に付き合ってくれるパートナーで、将来サービスを買ってくれる潜在顧客でもあります。カンブリアナイトには、開発関係者だけでなく、こうした潜在的な顧客になり得る人たちも来ているので、そうした人たちとの交流も有効です。


 新サービス開発においては、開発側だけでなくユーザーも大事。こう思うようになったのは、米国のベンチャー企業と付き合ってからでした。正直なところ、彼らは製品のクオリティもオペレーションも今ひとつです。しかし、米国では一定程度は売れているんです。それを聞いて思ったのは、米国には新しいものに付き合ってくれる顧客がいるのだろうということです。新しいサービスを育てるために、使うという貢献があるんですね。顧客もイノベーターなんです。


「顧客パートナーを見つけることも大事」と語る鹿内氏(右)

 その点で中国も興味深いです。2016年に公表されたデータですが、アリババのEC流通総額は楽天の20倍、アマゾンの2倍と言われています。日本と中国の人口差は約10倍しかないのに対して、ECの流通総額が20倍あります。おそらく、EC化率が違うからです。確実なことは言えませんが、実際、2014年時点でEC化率は、日本が4.9%なのに対して、中国10.1%と2倍以上です。ECの流通差は、保有するデータ量に違いが出てきます。データ量が多いほど分析が進むでしょうから、今後「使う貢献」が多大に影響してくるのではないでしょうか。


牛尾さんが最初におっしゃった「技術者が自分で見つけてもらう」という話が印象に残っています。これまでの取り組みについて手応えはいかがですか。


牛尾:自ら動く人が生まれないと、新しい事業は生まれないと思っています。技術や企画がすごくても、それはきっと、世界中どこかで誰かが考えていることです。それをいち早く形にして世に出すには、誰かに言われてやる人ではなく自ら動く人が必要です。この話を社外の似たような立場の人にすると共感されるので、きっと間違っていないでしょう。


 2018年春にカンブリアナイトを関西で初めて開催してもらった時に、「ネタがない」という部長を集めて連れ出しました。「こんな世界があったのか」「こうした話を聞きたいと思っていた」と言ってくれました。ただ、全部が全部うまくいくわけではないので、回数をやるしかないなと思っています。最低月1回でも出ていってもらって、10回に1回でも本気で「見つけた!」というビジネスリーダーを増やしたいです。