鹿内:自分で電車に乗って出かけるということで主体性が生まれるんですよね。会社に来てもらうのとはぜんぜん違う。


 10回に1回でも、という話がありましたが、確率低いのは研究開発も事業開発も同じ。数を増やしていくかないというのは私も納得です。今なら開発のサイクルを高速に回転させられる環境があるので利用したらいいです。


牛尾:特に大企業では、既存事業と新規事業を分けて考えないといけません。メーカーの主流の考え方は、「できるだけ失敗しないように」です。既存事業では、歩留まり100%、不良ゼロを目指すのが当たり前ですが、イノベーションはそうではない。「どうやったら確率上がる?」という議論になりがちですが、確率はそう上がらない。そうなると数をあたるしかないので、「両者を分けて考えましょう」と社内で話しています。成功体験があって外に出る人が増え始めているので、いい循環になっています。


鹿内:変化が激しく不確実な環境では、取り組む数を増やすことがリスクを抑えられるやり方だと思います。新しいことに取り組むことを「チャレンジ」という言い方をしますが、実は妥当なやり方です。


「既存事業と新規事業は分けて考えないといけない」と語る牛尾氏(左)

事業化に必要な「意図」と「能力」

現在注目している動きはありますか。


牛尾:最近はアートシンキングとも言われる、アートとテックの交わりに興味を持っています。アーティストとエンジニアの交流の動きです。自分で出かけていったり、エンジニアを送り込んだりしています。実際のところ、その成果はよく分かりませんが、面白いことは間違いありません。「価値はなくていい」「社会に貢献しなくていい」と、メーカーの価値観とはまったく違いますね。


鹿内:カンブリアナイトのような発表と交流の場のほかに、ハッカソンでチームを組むような体験も重視しています。 短期間のイベントだとしても、一緒に「仕事」をすると技術スキルなど「能力」が分かります。これから本当に仕事を一緒にするなら、「能力」という信頼感の理解は欠かせません。社会心理学者の山岸俊男さんは信頼を「意図」と「能力」の2つに分けています。いくら「やろう」と意気投合しても、「できる」二人が集まらないと新しいものは生まれません。


 同じ会社の人と仕事をすれば、確かに安心して取り引きできます。契約書を作成したり、取引先の信頼調査をしたりする取引費用や時間がかからなくて済むからです。


 一方で、閉じた社会、例えば、自分の会社の中だけで活動していると、外部の方と取り引きしたら得られたであろう大きな成果を逃す可能性も大きいのです。外部に支払うコストを惜しむことが、今の時代では大きな損失になります。


 企業などの集団や制度が守ってくれる「安心」の中では、実は「信頼」の必要性は多くありません。そういう中にいては育たない信頼関係を素早く構築するソーシャルスキルが、今後、ますます重要になるでしょう。カンブリアナイトには、信頼を作るスキルの高い方が多くいらっしゃいますし、仕掛けもたくさんあります。


カンブリアナイトでは、冒頭から飲食しながら、交流しながら3~4人のプレゼンを聞く