ブリヂストンの中核事業であるタイヤ部門の売り上げは、事業売り上げ全体の83%を占める。生産技術は世界トップレベルで、市場シェアも世界トップのままである。そのブリヂストンが、ビジネス変革に向け、デジタル化の取り組みを加速させている。「デジタル化の目的はモノ売りからソリューションプロバイダーへ事業転換させること」。ブリヂストンのデジタルソリューションセンター長の増永明氏はこう話す。

変化しつつあるビジネス環境

 同社はデジタル化に取り組む背景にあるのは、タイヤビジネスを取り巻く環境が変わりつつあることだ。一つは、危機感の根本原因であるタイヤのコモディティー化。タイヤの市場シェア上位3社は、ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤーで、これは10年来変わっていない。ただ、2005年に3社で53%だった市場シェアは、2015年には38%にまで縮小した(図1)。安価な製品を売る新興国の企業の存在感が増し、大手による寡占化が崩れているのである。


(図1)タイヤ産業の拡大と多様化(出所:ブリヂストン、タイヤビジネス誌Global Tire Company Ranking)

 もう一つ、内燃エンジン車の時代から、電気自動車(EV)や自動運転車の時代に変わろうとしていることも大きな要因である。タイヤに対する要求が変わってくるわけだ。


 具体的には、EVやPHVはエンジン音が小さい。そうなると、タイヤから生じるノイズもなくしたくなる。大きなバッテリーを搭載しなければならないEVは、スペアタイヤを設置できるスペースもなくなる可能性が高い。このためパンクせず、ノイズの少ないタイヤが求められる。一方で、自動運転が浸透すると、利用者がクルマをメンテナンスすることはなくなる。当然、タイヤにもメンテナンスフリーという条件が課されることになる。


 こうしたことからブリヂストンが描いたシナリオが、製品を製造・販売する会社から、「タイヤを軸に顧客の困りごとに応える」ソリューションプロバイダーへの転換だった(図2)。

(図2)ソリューションプロバイダーへ転換(出所:ブリヂストン)

 代表例が運送会社向けのソリューション。運送会社にとっては、タイヤを含め、メンテナンスに手を煩わされることなく、走ることに集中できることが望ましい。そこで、タイヤを“売る”のではなく“貸す”モデルとし、利用中のタイヤのメンテナンスサービスや、タイヤの摩耗状態に合わせて適切なタイミングでリトレッドするなどをトータルで提供する。

バリューチェーンをつないで新しい価値を

 デジタル化の威力は、メンテナンスサービスを実現できることにとどまらない。サービスを通じてクルマの種類や走行環境・条件とタイヤの状態の変化をデータとして取り続ければ、例えば用途別に、今までよりも適したタイヤを製品化できるかもしれない。あるいは、別のサービスを生み出すきっかけをつかめる可能性もある。


 商品戦略から開発、調達、供給、販売、サービスまでのバリューチェーンを結びつけ、データ分析に基づいて連携させ、さらなる商品戦略につなげる。これが、同社が描いているデジタル戦略である(図3)。

(図3)モノづくりのバリューチェーン(出所:ブリヂストン)

 ただ、これまでは部分最適はできていたものの、各工程はサイロ化していた。例えば、トラック用のタイヤなら、生産のトレーサビリティはできているが、顧客に渡してしまうと、今どのタイヤがどのように稼働しているかといった状況までは把握できない、といった具合だ。


 こうした環境で、組織に横串を刺して、データ共有化などデジタル変革を推進していくべく設けられたのが、増永氏が率いるデジタルソリューションセンターである。顧客の要望をしっかりと受け止めるという考えから、センターはCMO(最高マーケティング責任者)の下に置かれている。